会社ぐるみの社会貢献(清掃など)は労働時間?ボランティア?

周辺の清掃活動をしている会社をよく見かけますよね。
- 清掃をすることで地域に貢献
- 元気で明るい雰囲気を作りたい
- 居心地の良い会社作りの一環
ホームページを見ると、従業員が一丸となって地域清掃していることをアピールしている会社もあります。
とても素晴らしい活動なのですが、一方で職員は「これって労働時間に含まれるハズでは?」と不満気味。
社長としては、会社にとっても地域にとっても良いことをしたつもりだったのに、新たな問題を引き起こしてしまったのです。
1.社長の方針による地域社会への貢献活動は労働なのか?
社長の方針で”地域社会への貢献”で月1回、始業前の1時間、3班のグループ分けをして交替で清掃活動をしています。
私も素晴らしい取り組みだとは思うのですが、会社は、「従業員全員でボランティア活動をしている」認識なんです。
当然、その清掃時間の給料は出ません。
これは違法ではないでしょうか?
職員も「素晴らしい取り組み」とは認識しているのですが、”自由な時間”を削って強制的に清掃させられているので、労働の対価は欲しいという意見でした。
労働基準法では、どのような解釈になっているのでしょうか?
◆労働の解釈は?
労働基準法(第32条)の「労働」の解釈は「労働者が使用者の”指揮命令”のもと、労働力を提供している」ことを指します。
指揮命令をしていなくても、使用者の明示・黙示の指示により、行っている場合は、”労働時間”に該当するとなっています。
また、客観的に見て、使用者の指揮命令のもと”働いている”と判断されるかどうかは、労働者の行っていることが、”使用者から義務付けられ、これを余儀なくされていた”状況で、それぞれ判断されます。
2.使用者の指揮命令下で行われていれば労働時間
地域社会への貢献として、”掃除”することは、社長が言うようにボランティアのようにも見えますが、労働基準法ではどのような解釈になるのでしょうか?
じつは…
質問のあった”地域社会のための清掃”の時間は、使用者である社長の指揮命令下で行っているものであれば【労働時間】という扱いになります。
一般的には、清掃はボランティア活動として、本来の業務に関係しないし、職務追行上、必要な作業でもないように思えます。
そのため、労働時間に該当しないと判断しがちですが、使用者である社長の指揮命令下で行われていれば、労働時間に該当するんですね。
3.自由参加であれば労働時間に該当しない
今回の清掃と似ている(?)ケースでよくいただく質問の中に「従業員の研修や社員教育」が労働時間に該当するのかどうか?…があります。
厚生労働省の「就業時間外の教育訓練」の解釈ではどのようになっているのでしょうか。
労働者が使用者の実施する教育に参加することについてですが、①就業規則上の制裁等の不利益取扱いによる出席の強制がない、②自由参加である、この2点に該当していれば、時間外労働には当たりません。
つまり「強制してなくて、自由参加であれば、労働時間として該当しない」ということなんですね。
4.結論
では、今回の質問に戻りましょう。
会社は”ボランティア活動”と言っていますが、実際には、月1回、始業前の1時間、3班のグループ分けをして交替で清掃に当たっています。
これを「強制ではない。自由参加である。」というのは難しいでしょう。
結果、今回の質問のようなケースでは「労働時間に該当する」判断になります。
逆に、地域社会への貢献のための清掃活動が「労働者個人」のボランティア活動として自発的に行われ、参加も強制でなく自由な場合…
「労働時間とはみなさない」となります。
◆自由参加でも不利益が生じる場合は労働時間扱い
形式上、自由参加にしていても、不参加だと不利益が生じる場合…
たとえば、直接、トラック運送会社であれば、点呼執行をするときに、参加・不参加を確認し、参加状況を賞与や昇格などの考調査定基準に加えている場合は、実質上参加を強制されていることになります。
つまり、「労働時間扱い」になる…ので注意が必要です。
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