「2024年問題」の陰に隠れて見落としがちな「2023年問題」。
2023年4月1日から、中小企業にも月60時間超の時間外割増賃金率50%が適用されます。
2024年問題をクリアした労働時間・年960時間(月平均80時間)に設定したとしても、毎月20時間分の賃金は50%割増になる計算になります。
この運送業の2023年問題。
トラック運転手はどのように感じているのか、アンケートを取ってみました。
参考にしていただければと思います。
1.割増率の下限の方を引き上げて欲しい
【TSUTSUMIさん(40代後半・男性)】
個人的にはこの制度を適用するより、時間外労働の割増率の下限を引き上げる(25%→30%など)方が良いかと思います。
運輸・物流業界は「長時間労働・低賃金」が常態化しているので、今回の2024年問題を機に、企業は労働力確保のためにも、時間外労働の削減だけでなく、所定内賃金の底上げなどの改善努力をするべきだと思います。
中には、経営上、改善しない・できない企業もあるかと思いますが、そのような運送会社は淘汰されるべきです。そうでないと、負担を強いられるのは労働者だからです。
2.意味がない
【ヒロさん(年齢不詳・男性)】
時間外賃金については、昔からですが、今後も雇用者側の都合が悪くなることは見過ごされたり、不明瞭な理由で労働していたのにも関わらず休憩時間として見なされる傾向があります。
また、その点について、労働者側から指摘すると色々(目に見えない報復をされたり)あると思います。
結局、問題なのは、法律上では労働者側が有利になるように年々改正されてますが、雇用者側はそれを逆手にとり、無理矢理、大量の仕事を少ない労働時間で低賃金にしているのが現状なのではないでしょうか。
3. 働く現場の本当の声をしっかり吸い上げたうえで改革を!
【イナさん(年齢不詳・女性)】
1990年頃を境に稼げる職業ではなくなったトラックドライバー。2000年を過ぎるとトラックにはデジタコやGPSが装備(大企業を中心)されトラックドライバーにとって酷な状況が増えていきました。
労働時間の制限もあり実質賃金は下がる一方。
乗務員を希望する若手はいませんし、高年齢の幹線便ドライバーは能力の限界です。高々、150%割り増しが年240H(月20H)増えたところで月給としては微々たるものです。
働く現場の本当の声をしっかり吸い上げることができなければ、残業代がいくら出ようが運送業は衰退するばかりでしょう。構造改革は全ての荷主と荷受けも含めて進めるものです。
2023年問題・2024年問題といい、運送業者に対してだけのものですので意味のないものに終わるのではないでしょうか。
【元のヘタクソさん(年齢不詳・男性)】
ドライバー目線の意見です。
会社は法にのっとった違反防止に必死です。
そして形を作るだけで満足しています。
現場は明確な指示がなく「プロなんだから時間管理もドライバーの仕事」とドライバーにプレッシャーをかけてきます。
ドライバーは積み込み時間を「休息」として、デジタコを放置して何とか所定の時間内に終わらせるようとサービス業務で事務所から指示された時間管理を守った形を作っています。
結果、違反していないということで会社は満足しています。
…なので賃金割り増しは、更なるドライバーへの工夫(自主的な証拠を残さないサービス業務)を求め割り増し分支給の削減に躍起になるでしょう。
結果、現状の収入しか知らないキャリアの少ないドライバーが増え、結果として今以上に業界の人手不足に拍車がかかると思います。
法改正は改善となっていますが、それに応じるはずの会社の対応は、現場サイドから見ると改悪になります。
今のドライバーは身体的リスク(長時間労働等)、精神的リスク(会社からの法令順守を形作るためのサービス業務の口に出さない強要)、経済的リスク(事故時の自己負担)に見合った報酬はもらっていません。
法改正は頭のいい方が頭で考えるだけでなく、現場の生の声を吸い上げ、現場の現実に見合う報酬を手にできる環境を作らないと、本当に物中クライシスになるのではないでしょうか?
4.運賃上昇に繋げ、未来のある若い従業員の確保を!
【ユータさん(30代後半・男性)】
月60時間越の時間外割増賃金率を50%に引き上げる改正について、私は好印象を持ちました。
私の仕事は物凄く体力のいるので、割増率の増加くらいしてくれないと”労働の対価として割に合わない”と感じています。
高齢運転者の割合が極端に高いトラック業界を盛り上げるためにも、月60時間超の時間外割増賃金率50%を適用していただき、それに伴い、運賃交渉を行うことで、未来のある若い従業員を集めた方が良いと思いました。
5.運賃是正の好機
【アルファさん(40代・男性)】
これまで棚上げされてきた運賃是正を実施する好機と考えています。顧客に請求される運賃だけでなく、企業間の契約運賃の見直しも含めてです。
未だに1980年代の運賃が適用されている状況もあり、タブーとされてきた適正運賃是正について大企業から末端の子会社までが生き残れるよう真剣に向き合う時が来たのだとあらためて感じました。
経営者が潤うのではなく、労働者が働き甲斐を感じられる状況を創造するために必要不可欠です。
運行管理者の重責に対する評価、運転手をはじめとする現場作業者たちが安全に安心して働いていける環境の為に、荷主である顧客及び親会社への理解を強く求める絶好の機会と考え、各社協力していくべきだと思います。
まとめ!
否定的な意見もありましたが、自身のためだけでなく、業界全体の発展のために「若い労働者が働きやすい環境になれば…」と考えているトラック運転手も多数いました。
「トラック運送業界全体を盛り上げていきたい。」
そんな熱い想いが伝わったアンケート結果でした。
なお、まだ意見は収集中です。
俺の意見も聞いて欲しいという方は、コメント欄に書いていただければと思います。
なお、個人が特定できる・運送会社名が特定できる内容については、その箇所は削除致しますので、ご了承ください。