「毎年、事業実績報告書を国に届出しなければいけないが、どのように作成したらいいのかわからない。」
「様式はどこで手に入れたらいいのか教えてほしい。」
このような疑問を解消するために、今回、貨物自動車運送事業実績報告書の書き方をまとめましたので、これから作成される方はサンプルなどを参考にしてくださいね。
記事の内容
・じつは作成はそこまで難しくない
・事業実績報告書の書き方(上段)
・事業実績報告書の書き方(中段)
・事業実績報告書の書き方(下段)
・提出方法
・ダウンロード方法
・提出しないデメリット
1.じつは作成はそこまで難しくない
【事業実績報告書】は、1年間に1回、かならず運輸支局に提出しなければいけない書類のひとつですが、はじめて作成される方はどのようにすればいいのか戸惑いを感じていることでしょう。
ただ、未届出のままにしておくと巡回指導で指摘されたり、 行政監査があれば、報告義務違反として扱われてしまいます。
そのため、運送会社はかならず事業実績報告書の作成をしなければいけないのですが、正直、あまり難しく考える必要はありません。なにしろ事業実績報告書は、A4用紙・1枚のみです。
書かなければいけない項目自体はそこまで多くないので、一度、覚えれば、次回はさほど作成に時間がかからないことでしょう。
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事業実績報告書は、いちどコツをつかむと作成はさほど難しくありません。
自社で作成できる
事業実績報告書の作成は、自作するか、外部にお願いするか、どちらでも構いません。ちなみに事業実績報告書作成の相場は、行政書士の先生だと2~3万円前後で作成してくれます。
ただ、なかには自社で作成している運送会社もあります。
そもそも事業実績報告書の作成そのものは難しくありません。…とはいうものの「運転日報や伝票から正確な数字を抜き出さなければいけない」ため、労力がかかると思っている人もいますが、記入例を見るとわかるとおり、そこまで正確な数字を求められているわけではありません。
もちろん、デタラメに記入するのはダメです。
しかし、神経質になりすぎる必要もないのです。
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事業実績報告書の数字に神経質になりすぎなくてもOK。提出することのほうが大事。
2.事業実績報告書の書き方(上段)
いちどに説明するとわかりにくいので、1枚の様式を上段・中談・下段に分け、それぞれについて、説明していきます。
まずは、↑のように事業実績報告書の上段の部分についての書き方からいきます。
「① 事業者番号」
様式の右上を見てください。
「事業者番号」を記入する欄があります。
この事業者番号は、国土交通省が管理している番号で「09」から始まる12桁の番号を書くことになります。
私の地域では記載しなくてもいいのですが、インターネットを見ると地域によっては、書かなければいけない地域もあるようです。
「当社の事業者番号がわからない。」というときでも大丈夫。
運輸支局や適正化事業実施機関に電話すればすぐに教えてくれますよ^^
「② 事業区分」
続いて、様式の左上を見てみましょう。
事業区分を選択する項目があります。↓の項目の中であなたの会社が該当するものを〇で囲みましょう。
・一般貨物自動車運送事業
・特別積合せ事業
・利用運送事業
・霊柩事業
・特定貨物自動車運送事業
運送会社によっては、複数、該当項目があると思いますが、その場合は複数に〇をつけてOKです^^
「③ 届出事業者の名称等」
「貨物自動車運送事業実績報告書」のタイトルのすぐ下に、あなたの運送会社の名称や代表者名など、必要な情報を書く欄があるかと思います。
上から順に…
「会社の住所」
「事業者名」
「代表者名」
「電話番号」
となっていますので、横版の印鑑を押印するか、手書きで書いていきましょう。
3.事業実績報告書の書き方(中段)
続いて、様式の中段あたりを見てください。
↓の図のように、車両数や運んでいるお荷物の詳細を書く欄があるはずです。
ここでは、事業概況や事業内容の記載方法について紹介していきます。
「④ 時期」
まず「事業概況」ですが、事業概況のタイトルの横に日付を書く欄があります。
前年度の実績を報告するので、もしも、2020年7月までに提出する事業実績報告書であれば…
「2020年3月31日現在」(2019年4月1日~2020年3月31日の実績)と記入することになります。
ちなみにトラック協会が配布している様式は、たいてい「年」のところだけ、空欄になっているので、今年の元号もしくは西暦を記載すれば大丈夫です。
「⑤ 事業概況」
次に事業概況です。
事業概況には「事業用自動車」「従業員数」「運転者数」欄があるので、↑の例のように自社の数字を書いていくことになります。ただ複数営業所がある運送会社は、本社だけでなく他の営業所も含めた全体の合計数を記載することになるので注意しましょう。
なお、営業所が本社のみで運営している場合は、なにも考えずに本社の数字を記載すればOKです。
【事業用自動車(車両数)】
3月31日現在の営業用車両数(全車両)を書きます。
被牽引車も含めた数字を記載してください。
【従業員数】
従業員数を書くのですが、次のことに注意する必要があります。
① 役員は含まない
② 兼業している場合は「運送事業に従事している人数」を書く
(例:倉庫のみの従業員は外す)
従業員数の中に、社長を含めた人数を書く人がいますが、あくまで労働者の数です。役員の方は数に含めず除きましょう。また、営業所が複数ある場合は、全従業員数を書くことになります。
例)
A営業所…12名
B営業所…5名
事業実績報告書の従業員数…17名
【運転者数】
全運転者数を書きます。
ここでも、複数営業所がある場合は、全運転者数を書きます。
例)
A営業所…7名
B営業所…3名
事業実績報告書の従業員数…10名
「⑥ 事業内容」
「事業内容」は、あなたの運送会社が輸送している内容を記載することになります。該当する項目があれば、〇で囲むだけで終了です。
もしも、該当する輸送内容がなければ、↑の記入例のように「その他」に〇を付けて、自社が運搬している輸送品目、輸送形態の詳細を書くことになります。
なお、複数の輸送形態に該当する場合は、最大3つまで〇をつけましょう。
4.事業実績報告書の書き方(下段)
事業実績報告書でいちばん大変なのが、この下段になります。
「⑦ 輸送実績」
事業実績報告書の記載でいちばん頭を悩ますのが「輸送実績」になると思います。
この項目では「北海道・東北・北陸信越・関東・中部・近畿・中国・四国・九州・沖縄」のように地域別になっています。つまり、管轄している運輸支局ごとに数字を集計する必要があるのです。
たとえば、
四国地方 … 「A営業所」「B営業所」
関東地方 … 「C営業所」
管轄が異なる運輸支局にそれぞれ営業所A・B・Cがあったとします。
この場合、四国地方の欄にはAとBの2営業所の実績を。関東地方の欄には「C営業所」の実績を記入することになります。
7-1.【延実在車両数(日車)】
「延実在車両数」の計算方法はすごく簡単です。
車両数×365日
(うるう年は×366日。年途中の増減車両は、その在籍日数を計上する。)
つまり、1年間の車両数に変動がなければ、単純に「車両数×日数」の計算をするだけなので簡単に計算できます。
ただし、途中で車両を増減した場合は、少し計算がややこしくなります。そこで、車両の増減をしたときの計算例を↓に用意しましたので、これを見ながら計算してみましょう。
例①:車両数が10両で1年間増減車がなかった場合…
10両×365日=3650(日車)⇒ 延実在車両数欄には「3650」と書く
例②:途中から1両増車した場合(6月1日1両増車した場合)
10両×61日+9両×304日=3346 ⇒ 延実在車両数欄には「3650」と書く
このように1年間に存在していた車両の数を書くことになるんですね。
なお、営業所が複数ある場合は、たとえば、四国(10両×365日)、関東(15両×365日)に営業所があれば、それぞれ記入し、その数の合計を全国計の欄に記載することになります。
7-2.【延実動車両数(日車)】
次に「延実働車両数」になります。
これは1年間に車両が稼働した日数を合計を記載することになります。↓がその例です。
延べ実働車両数から休車、休みを引いて実際に稼働した車両の総数(1年間に稼働した車両の延車両数)例:車両数10両。
365日のうち、休日100日。
9両稼働235日
10両稼働30日の場合
9両×235日+10両×30日=2415(日車)
⇒ 延実働車両数欄には「2415」と書く
ここで気を付けなければいけないのは、牽引車と被牽引車を1両と考えてしまいがちですが、牽引車と被牽引車(台車)は、それぞれ別の車両として計算しなければいけません。
7-3.【走行キロ】
空車、実車を含めた総走行キロ数を書くことになります。
例:運転日報から算出
前年4月1日の運転日報(出庫メーター)と3月31日の運転日報(出庫メーター)を見る
【サンプル・A車】
2019年4月1日・出庫メーター:120,000km
2020年3月31日・帰庫メーター:240,000km
A車の年間走行キロ:120,000km
7-4.【実車キロ】
実際に荷物を積載して走行した走行キロ数を書くことになります。
ただ、実際に荷物を積載して走行した距離なんてわかりません。自社が「走行キロの6割くらい荷物を積んで走行している」と思ったら、先ほど算出した走行キロに「×0.6」という計算している運送会社もありました。
※ただし、フェリー乗船中の移動は除きます。
7-5.【輸送トン数(実運送)】
自社が荷物を運んで走行した輸送トン数を書くことになります。
ほとんどの運送会社は正確な数字を書くことは難しいのですが、なるべくじっさいに運んでいる輸送トン数に近づけるよう計算していきましょう。
他社の例では、運転日報に書かれてある積載量(大型のみ義務)を参考にしたり、おおよその数字を記載していました。
【例】
A車両:8t×稼働日数
※ただし、霊柩の場合は(体数) 例:3体
7-6.【輸送トン数(利用運送)】
庸車(下請け)に出して他社に輸送させたトン数を書いてください。
7-7.【営業収入】
実運送と利用運送の合算による売上高を書いてください。
「⑧ 事故件数」
8-1.【交通事故件数】
車両等の交通による人の死傷または物の損壊があった事故件数を記入することになります。
※事故記録簿のファイルを見ればすぐに件数はわかると思います。
8-2.【重大事故件数】
重大事故は、転覆・転落・火災(積荷含む)、踏切事故、死者または重傷者(おおよそ14日以上入院治療を要する障害、全治30日以上の傷害)の発生事故等をいうので、その数を記入することになります。
※自動車事故報告書を提出するような大きな事故を起こしていたら、必ず記載する必要があります。
8-3.【死者数】
交通事故の発生から24時間以内に死亡した人数を書いてください。
8-4.【負傷者数】
交通事故によって負傷し、治療を要した人数を書いてください。
5.ダウンロード先
事業実績報告書の様式は、各県トラック協会のHPで公開されています。
所属しているトラック協会のHPからダウンロードできると思いますので、そこから入手することをおすすめします。
ちなみに事業実績報告書は、どこの県でダウンロードしても同じ様式です。なので、適当な協会から入手してもかまいません。
今回は、一例として新潟県トラック協会のリンクを掲載しておきます。
6.提出内容
事業実績報告書の提出内容は次のとおりになっていますので必ず期限までに届けましょう。
・提出期限:毎年7月10日
・提出部数:3部
・提出先:トラック協会・支局(県によって異なる場合があります。)
・提出方法:持参・郵送可。
※郵送の場合返信用封筒を同封すること。
(県によって異なる場合があります。)
7.提出しないデメリット
仮に提出しないとしたら、どのようなデメリットがあるのでしょうか?
① 行政処分の対象になる
② 事業拡大が認められないケースがある(令和元年11月~)
③ Gマークが認定されない
etc…
などですね。
特に②についてなんですが、
事業報告書・事業実績報告書及び運賃・料金の届出並びにその他の報告の徴収について、届出・報告義務違反がある。
このように、事業規模の拡大が制限されるケースに含まれています。事業規模の拡大となる認可申請とは、営業所の新設、車庫の拡張、一定規模以上の増車等のことを指しており、これらの手続きが制限されることになるので、とくに増車を予定している人は、すぐに作成して国に届出しておいたほうがよさそうです。
まとめ!
事業実績報告書は1枚だけ記載すればいいので、自社で作成しているところもありますが、はじめて作成しようとする人は、戸惑い、結局、外部にお願いすることが多いです。
ただ、アバウトでもいいので、ある程度、きちんと書いていれば、運輸支局は受け付けてくれますし、内容で何か問い合わせをしてくることはありません。届出しないほうがリスクが高すぎるので気を付けましょう。