(参照:自動車安全センター)
トラック運送会社に乗務員として就職しようとすると、担当者から「運転記録証明書」を提出するよう求められることがあります。
いままで転職経験のある運転手の中には「なぜ運転記録証明書を会社に提出しなければいけなくなったの?」と疑問に思うことでしょう。
とくに信号無視や座席ベルト装着義務違反などの違反経験がある人は、書面にズラッと掲載されるので、採用にどのように影響があるか戦々恐々なのではないでしょうか。
そこで運送会社の求人に応募したときに、なぜ運転記録証明書を求められるのか?採用時にどのような影響があるのか?について今回は紹介していきたいと思います。
1.運転記録証明書を求められる理由
平成21年10月1日に法律が変わりました。
運送会社は新たに乗務員を雇い入れるときに、無事故・無違反証明書又は運転記録証明書等を取得するべし…という通達(※)があったんですね。
そのため、あなたが運送会社に就職しようとしたとき、会社側から過去3年以上の事故歴がわかる書面を提出するよう求めれられることになったというわけです。
※通達
国土交通省告示第1366号 平成13年8月20日 平成21年10月1日改定
5.新たに雇い入れた者の事故歴の把握
(1) 一般貨物自動車運送事業者等は、安全規則第3条第1項に基づき運転者を常時選任するために新たに雇い入れた場合には、当該運転者について、自動車安全運転センター法(昭和50年法律第57号)に規定する自動車安全運転センターが交付する無事故・無違反証明または運転記録証明書等により、雇い入れる前の事故歴を把握し、事故惹起運転者に該当するか否かを確認すること。
(2) (1)の確認の結果、当該運転者が事故惹起運転者に該当した場合であって、2(1)の特別な指導を受けていない場合には、特別な指導を行なうこと。
(3) (1)の確認の結果、当該運転者が事故惹起運転者に該当した場合であって、4(1)の適性診断を受診していない場合には、適性診断を受けさせること。貨物自動車運送事業輸送安全規則の一部を改正する省令等の公布 (平成21年10月1日から施行)
貨物自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針
貨物自動車運送事業者は、新たに雇い入れた運転者について、事故歴を把握した上で、特別な指導及び適性診断を確実に実施することとします。
面接のときに求められなくても、入社後、会社が事故歴を把握するため、①運転記録証明書の発行手続きを行うか、②取得して提出を求めてくるのか、いずれかの方法で書面を求めてくるはずです。
では、運送会社は、乗務員の運転記録証明書を取得して、何を確認しているのでしょうか?
答えを先に書くと、それは―
「事故惹起運転者に該当するか否か」
の確認をしているのです。
事故惹起運転者に該当するかどうか確認が必要なの?
事故惹起運転者か否か確認するのは、重大事故等を起こした運転者に対して「特定診断」という義務の適性診断を受診する必要があります。(「事故惹起者が受ける特定診断Ⅰと特定診断Ⅱとは?」)
…というのも、重大事故を起こしてしまった運転者の多くは、重大事故を起こした後、所属していた運送会社にそのまま所属することを避け、退職することが多く、特定診断を受診しないまま転職してしまうことが多いんですよね。
そうすると、教育や心のケア等をしていないから、新たな勤務先で同じ過ちをおかしてしまう可能性がある。
そのようなことにならないように、新たに雇う側で特定診断の受診義務に該当する運転者か否か確認してくださいね…ということなんです。
2.新規採用時には運転記録証明書のどこを見られるのか?
新規採用時においては、雇い入れる前の事故歴(少なくとも過去3年間の事故歴)を事業者は把握しておかなれればいけません。さきほども紹介したように「特定診断」の受診者に該当した場合、事業者は受診させる義務が生じるからです。
だから、運転記録証明書の提出を求められたり、取得するように言われるのですが、主にどこをチェックするのでしょうか?
基本的に全体を見ると言えばそれまでなんですが、法律上では、事業者は「死亡事故」「重傷事故」「軽傷事故」と表記されていないかチェックしなさい・・・ということになってます。
運転記録証明書の内容欄を見ると、仮に軽傷事故を起こした場合、「安全運転義務違反(軽傷事故)」と記載されるシステムになっています。
つまり、過去3年間以上の事故歴一覧表に「死亡事故」「重傷事故」「軽傷事故」が2回以上掲載されていると、まちがいなく「特定診断」該当してしまうため、事業者から以前の運送会社で「特定診断Ⅰ」もしくは「特定診断Ⅱ」を受診したかどうか聞かれることは間違いありません。
3.運転記録証明書の提出は採用に影響はないのか?
「運転記録証明書の内容が重大事故や軽傷者を生じた事故を引き起こしていない結果であれば、特定診断に該当することもないため、安心だよね!」とホッと胸をなでおろしたいところですが、現実は甘くありません。
とある大手運送会社(1部上場)になると、採用の基準として、過去に無事故・無違反であることを条件にしているところもあるくらいです。
実際は、運転記録証明書の取得義務は、あくまで特定診断の該当者がいるかどうかを確認するために使うもので、採用・不採用を決める材料にすることは望ましくありません。
ですが、運送会社のなかには、建前上は「特定診断に該当する事故惹起者であるか否かを確認するため」を口実にして、面接時に持参することを求め、裏では、運転記録証明書を「採用・不採用」の材料のひとつにしているところもあります。
たとえ、「おかしいのでは?」と会社に問いただしても「面接の結果、採用・不採用を判断した。」と、別の理由を持ちだして回答されるのがオチです。
ただ、中小企業はいま人材不足に陥っているので、重大事故でない限り、運転記録証明書に多少の傷があったとしても、採用を見送るところはほとんどありません。それくらい、いま、どの運送会社も乗務員がのどから手が出るほど欲しいのが現状なんですね。(大型免許所持の運転手はかなり貴重)
4.自家用自動車の違反は対象になるのか?
運転記録証明書に記載される内容は、営業ナンバーのトラックに乗務した違反だけ記載されるわけではありません。通勤中やプライベートで使用した自家用自動車等の事故も含めて記載されるので気をつけたほうがいいですよ。
5.運転記録証明書の入手方法は?
運転記録証明書の入手方法をまとめたページを作成しましたので、そちらを参考にしてください。