- 「フェリー利用を検討しているけれどよくわからない」
- 「運行管理者試験で出題されているけれど理解できない」
- 「ひょっとしたら、違反しているかもしれない」
拘束時間を少しでも軽減するためにフェリーを使用している・検討している運送会社はありますが、国土交通省が出しているマニュアルを見ても「意味がよくわからない…」と言う人も多いです。
また運行管理者試験でも、フェリーの拘束時間についてよく出題されていますが、苦手としている受験生は多いです。
そこで今回は「フェリー特例・休息と拘束時間の考え方」について解説していきたいと思います。
1.フェリーの特例についておさらい
フェリー特例とはどのようなものでしょうか?
まずは改善基準告示の概要に記載されている内容を確認してみましょう。
乗船時間は休息期間として勤務終了後の休息期間から減算可ただし、減算後の休息期間はフェリー下船から勤務終了時までの時間の1/2以上必要
さてみなさん、この記載だけで理解できたでしょうか?
残念ながら、当時の私はよく理解することができませんでした。
2.乗船時間が8時間以上か8時間未満かで大きく変わる
乗船時間は休息期間として勤務終了後の休息期間から減算可ただし、減算後の休息期間はフェリー下船から勤務終了時までの時間の1/2以上必要
「乗船時間は休息時間として勤務終了後の休息期間から減算可…」と「 ただし、減算後の休息期間はフェリー下船から勤務終了時までの時間の1/2以上必要 」を分けて解説していきます。
まずは 「乗船時間は休息時間として勤務終了後の休息期間から減算可…」 から見ていきましょう。
本来、勤務終了後の休息期間はどのくらい必要でしょうか?
…そう。
休息時間は、8時間以上必要ですよね。
ただ、フェリー乗船時間は”8時間未満”であることが多いです。
なので、たとえ乗船時間が8時間未満であったとしても【勤務終了後の休息時間と合わせて8時間以上あれば問題なし。】と言っているのです。
言い換えると…
「乗船時間は、ゆっくりできるから休息時間として扱っていいです。さらに、その乗船時間(休息時間)を勤務終了した後の休息期間から差し引いてもOKです」
というわけです。
念のため、8時間以上、乗船した場合と8時間未満、乗船した場合について解説していきますね。
①乗船時間が8時間以上ある場合
連続して8時間以上の乗船時間があったとします。
「乗船時間=休息期間」になるので、8時間以上の乗船時間があった場合、通常の運行と同じ「休息期間」扱いになります。
そのため、
乗船前・・・乗務後点呼(1日終了)
乗船後・・・乗務前点呼(1日開始)
になります。
つまり、フェリーを降りてから、新たな1日(勤務)がスタートすることになるので 「乗船時間は休息時間として勤務終了後の休息期間から減算可…」 を利用しなくてもいいケースになります。
②乗船時間が8時間未満である場合
「乗船時間は休息時間として勤務終了後の休息期間から減算可…」を意識しなければいけないのは、乗船時間が8時間未満である場合です。
乗船時間8時間未満=休息8時間未満
このままでは休息時間が足りず、改善基準告示違反になってしまいます。
そのため、乗船時間が8時間未満である場合は、改善基準告示の概要に書かれた「 乗船時間は休息時間として勤務終了後の休息期間から減算可。」を適用した休息期間の取得を考えなければいけません。
ここで例を見てみましょう。
12:00~14:00 拘束時間(2h)
14:00~19:00 フェリー乗船中(5h)
19:00~翌日1:00 拘束(6h)
1:00~4:00 休息(3h)
「乗船時間は休息時間」と書かれていますので、14:00~19:00のフェリー乗船時間(5時間)は、休息時間として扱われます。
ただ、これだけでは休息8時間以上になっていません。
そこで次に見るべきポイントは「勤務終了後の休息後の休息期間から減算可」の部分です。
本来、休息時間は、最低でも8時間以上必要なので、
必要な休息(8h)ー乗船中の休息(5h) ≦ 勤務終了した後に必要な休息時間(3h以上必要)
になります。
例に挙げた運行内容だと、下船後に休息時間【B】で3時間取得しています。
つまり、
【A】乗船時間(5h)+【B】下船後に勤務終了後に取得した休息時間(3h)=休息時間8h
なので、合計8時間以上の休息時間を確保でき「法令違反していない」という解釈になります。これを見ると、フェリー版の分割休息って感じですね。
3.計8時間以上の休息でも認められないケース
フェリー特例には「 減算後の休息期間はフェリー下船から勤務終了時までの時間の1/2以上必要 」も併せて記入されています。これを見落としているケースが多いので解説していきます。
↓の例を見て下さい。
先ほどと同じようにフェリーを活用した運行で、乗船時間は5時間。勤務終了後には、休息時間を3時間取得しているので、計8時間の休息時間を確保しています。
何も問題がないように見えますが、特例に記載されている 「減算後の休息期間はフェリー下船から勤務終了時までの時間の1/2以上必要 」 が問題になってくるのです。
例の運行内容では、下船後、19時から翌日2時(計7時間)拘束しています。
これが「フェリー下船から勤務終了時までの時間」に該当します。
その時間の1/2以上の休息期間が必要なので、
7×1/2=3.5h以上必要
となり、勤務終了後は、サンプルの運行内容では、最低でも3時間30分以上の休息が必要という計算になるのです。
今回の例では、下船後3時間しか休息時間を確保できていないので、たとえ、合計8時間以上の休息を取得したとしても「違反」扱いになってしまいます。
分割休息のように1回あたり4時間以上必要などの制限はないのか?
分割休息の場合は、1回あたり4時間以上(合計10時間以上)の休息時間を取得しなければいけない制約がありました。
では、フェリーに乗船した場合の休息期間ではどうなのでしょうか?
フェリーの特例では”1回あたり〇時間以上”という制約はありません。
1時間でも2時間でも休息期間として認められますし、乗船中でも、下船後の休息期間でも4時間以上という制約はないのです。
つまり…
①合計8時間以上の休息
②下船後の休息がルールに反していない
この2つを守ればOKというわけなんですね。
4.【おまけ】当ブログに届いた質問
当ブログに次のような質問がありました。
まず、運行内容についてですが…
~ 0:00 休息
0:00 ~ 2:00 乗務時間(2)
2:00 ~ 8:00 休憩(休息?)(6)
8:00 ~14:00 乗務時間等業務(6)
14:00 ~20:00 乗船までの待機(6)
20:00 ~ 乗船(20以上)
図にすると、↓のような感じです。
質問者は、①2:00~8:00の休息と②14:00~22:00の乗船までの待機時間を分割休息(計12h)として管理しているそうです。
また、この運行は長距離輸送をしている途中であり、かつ分割休息の特例を利用しているため、次のとおり点呼を行っているそうです。
0:00 乗務前点呼(TEL)
途中…中間点呼(TEL)
2:00 乗務後点呼(TEL)
8:00 乗務前点呼(TEL)
途中…中間点呼(TEL)
14:00 乗務後点呼(TEL)
法律を守ってしっかり管理されていますよね^^
これだけでも、質問者はかなり勉強して、法令を遵守していることがわかります。
4.過去の質問内容
ここで2つの質問をいただきました。
質問①
“乗船までの待機時間”を休息時間とすることの是非について
質問②
乗船前の休息時間と乗船時間で”分割休息”扱いになるのか?
回答①乗船待機時間を「休息」にすることができるのか?
乗船する前の待機時間は、分割休息時間として認められるか?
…についてですが、これはケースバイケースです。
認められる場合もあれば、認められない場合もある…という回答になります。
なぜなら…
休息時に実際に業務をしていない時間であっても、労働から完全に離れることが保障されていない限り労基法上の労働時間にあたる
これが基本的な考え方になるからです。
たとえば、自由時間のように見えても、フェリーに乗るために順番待ち等でトラックを少しずつ動かさなければいけない…これでは、運転手は休めませんよね?
また、荷物によっては、運転手が管理・対応しなければいけない場合もあるかと思いますが、これも休める状態にありません。
このように、労働から完全に離れることができない(保障がない)場合は、たとえ、乗船前の待機時間とはいえ「休息時間とは認められない」と判断されます。
一方、待っている間、仮眠したり、コンビニに立ち寄るなど、自由な時間を過ごせるのであれば「分割休息として活用しても問題ない」という考え方になります。
自社の運行が、どちらに該当するか判断できない場合は、直接、労働基準監督署に電話して、詳細を話してみるといいですよ^^
回答②
「乗船前の休息時間と乗船時間で”分割休息”扱いになるのか?」ですが、回答を先にすると「できない」になります。
点呼記録簿上は、
①2:00~8:00(6時間休息)【乗船前】
②20:00~0:00(4時間休息)【乗船中】
…で合計10時間以上の分割休息を取得したことになり、何も問題ないように見えます。
しかしながら、フェリーの乗船時間は”休息時間”に該当するものの「乗船前の休息時間と組み合わせて、分割休息にすることはできない」というルールが存在します。(労働基準監督署確認済み)
まとめ
改善基準告示に書かれているフェリーの特例はわかりにくいです。
サンプルを見ながらイメージを固めていきましょう。