休息時間は、本来、最低でも8時間以上、乗務員に与えなければいけないということになっていますが、なかには例外が存在します。そのひとつが「分割休息」という特例になります。
ただ、この分割休息。
言葉はよく耳にするけれど、利用していない運送会社が多く、いざ使用しようとしたとき「どのように活用すればいいのかわからない…。」と迷っている事業所も多いです。
そこで、今回は、分割休息をテーマに記事を書いていきたいと思います。
1.そもそも分割休息とは何?
乗務員には、8時間以上の休息を与えなければいけません。
しかし、業務の都合上、乗務員に8時間以上の休息を与えることが難しいことがあります。このようなとき、行政監査が行われると、拘束時間16時間超過、休息不足8時間未満として扱われてしまいます。
しかし、たとえ、休息8時間未満であったとしても、特例である「分割休息」を用いることができれば、改善基準告示違反を減らすことができる…というわけです。
ただし、条件があります。それは…
・一定期間(原則・2週間~4週間程度)における全勤務回数の2分の1の回数が限度 ・休息を ①拘束時間の途中、②拘束時間の経過直後に分割して与える ・1回の休息は4時間以上。計10時間以上の休息を与える |
※分割休息は、かならず2 回に分けなければいけないというわけではありません。休息時間4 時間を計3 回行って合計12 時間以上の3分割休息も認められます。
この3つすべて満たす必要があるのです。しかし、逆に言えば、それさえクリアすれば「分割休息」を利用できるというわけです。
<参考・休息時間とは?>
勤務と次の勤務の間の時間で、睡眠時間を含む労働者の生活時間として、労働者にとって全く自由な時間をいいます。
(出典元:厚生労働省・労働基準局 改善基準のポイント)
2.分割休息を見てみる(サンプル)
では、分割休息のサンプルを見て理解を深めてみましょう。
まず、サンプルを見ると、3月1日は、7:00に仕事を開始しています。
運送業の1日は改善基準告示では「始業時刻から起算して24時間」になっているので、今回のサンプルの1日は、3月1日7:00~翌3月2日7:00までということになります。(運送業の1日の考え方については「1日の拘束時間の計算方法は?」を参考にしてください。)
つまり、
●1回目の休息は、業務途中である14:00~19:00(5時間)
●2回目の休息は、業務終了後の1:00~6:00(5時間)
以上、計10時間以上休息を取得しており、先ほど紹介した条件を満たしています。
>失敗例
ここで注意しなければいけないのは、分割休息は1日24時間の中で計10時間取得する必要があることです。
失敗した↓のサンプルを見てみましょう。
この例をみると、
●1回目 14:00~19:00(5時間)
●2回目 3:00~8:00(5時間)
計10時間休息を取得しているように見えます。
ですが、始業時間は3月1日7:00でしたよね?
つまり、1日を【3月1日7:00~翌3月2日7:00まで】の24時間で見た場合、2回目の休息時間は4時間となってしまいます。
そうすると、1回目5時間、2回目4時間で10時間以上の休息を取得することができていないため、”分割休息未成立”=”拘束時間16時間超過、休息8時間未満”と判断されてしまいます。
分割された休息期間は、1日において1回当たり継続4時間以上、合計10時間以上でなければなりません。
(厚生労働省HPより)
※つまり、分割休息を使用した場合、1日24時間という枠の中で、分割休息10時間利用したとすると、1日の拘束時間は、最大14時間までということになります。
3.分割休息のときの点呼執行はどうしたらいいの?
今回は、サンプルでも使用した↓図の分割休息をもとに点呼記録簿の記入例を紹介していきたいと思います。
<運行内容>
<点呼記録簿(例)>
通常、1日の点呼は、乗務前点呼と乗務後点呼。
遠方であれば、乗務前点呼・中間点呼・乗務後点呼ですよね。
けれど、分割休息は少し特殊です。
「分割」なので、1日の中に休息が2つ存在しています。
点呼執行は、休息前後で執行するのが前提でしたよね。
なので、通常の点呼よりも点呼執行回数が多くなります。
ここで、サンプルをもう一度みてみましょう。
サンプルの3月1日の点呼を見ると、乗務前点呼で対面点呼をしているにもかかわらず、1日で合計5回点呼を執行しています。つまり、特例の「分割休息」を利用した場合、点呼執行も通常のやり方とは異なるというわけなんですね。
さらに、乗務前・乗務後点呼が電話点呼になる場合、中間点呼も必要になります。
そのため、あわせて「運行指示書」も作成しなければいけないことになるんですね。
4.分割休息を利用する前にするべきこと
分割休息を行う計画があることを乗務員に伝え、1泊2日以上の運行であれば「運行指示書」を乗務員に携帯させる必要があります。
「え…?運行指示書が必要なのは、2泊3日以上だったよね?」と思われるかもしれません。これは、分割休息ならでは…なのですが、分割休息では、1日に休息と扱われる時間帯が最低でも2つありますよね?
そのため、乗務前、乗務後点呼で、運行管理者と顔を合わさない状況が発生するので、中間点呼が必要ですし、運行指示書も必要になってくるというわけなんです。
つまり、行政監査が行われたとき、チャート紙を見られて「過労運転」と思われたくなくて、偶然、分割休息になっていた運行について「分割休息なんです。」と誤魔化しても、1泊2日以上なら、運行指示書と点呼記録簿の項目で処分を受けてしまうので、注意しなくてはいけません。
まとめ!
分割休息は、運行状況によっては大きなメリットになるのですが、中間点呼や運行指示書が必要になるケースもあるため、帳票類の管理においてはデメリットになることがあります。