トラック運送会社で乗務員をしている人は正社員だけではありません。
契約社員(アルバイト等)の方もいます。
たとえば、65歳以上になると、嘱託職員として短時間労働をしている乗務員もいますよね?あれも契約社員です。
では、契約社員のように「正社員以外の健康診断の受診について、どのように取り扱えばいいのか?」ー運送会社の管理者の中には、戸惑われている方もいるのではないでしょうか。
そこで、今回は、契約社員などの「短時間労働者の健康診断」の受診の有無について解説していきます。
1.短時間労働者の健康診断の条件
一般の健康診断については…
「事業者は、労働者に対し、……医師による健康診断(略)を行わなければならない」
(労働安全衛生法 第66条1項)
このように事業者に一般健康診断を義務付けています。
また、労働安全衛生法により、具体的な内容として、①雇い入れ時の健康診断(第43条)、②定期健康診断(第44条)等の検査項目、実施回数などを定めています。
トラック運送会社を運営していくうえで「乗務員に受診させなければいけない健康診断とはどのようなものか、よくわからない。」という担当者もいるのではない... 【永久保存版】トラック運送会社が意識すべき健康診断3つ - トラックの杜│一般貨物運送事業に役立つ情報をブログでお届け! |
ちなみに、対象となる労働者は、①雇い入れ時の健康診断、②定期健康診断ともに「常時使用する労働者」としているのですが、この「常時使用する労働者」がどのくらいの範囲適用するのか…で迷うと思います。
行政解釈では?
行政解釈では…
「日雇い労働者、パートタイマー等臨時的労働者」を含めて、”常態として使用する労働者”としています
(昭和47年9月基発第602号)
ただし、これだけで判断してはいけません。
”パートタイム・有期労働法”が別にあるのですが、そこでは、平成26年7月基発0724第2号等によると、その判断基準が示されています。
その条件について解説していきます。
2.短時間労働者の健康診断の条件
契約社員などの短時間労働者は、健康診断を受診しなくていいのではないかー?
このような問い合わせや勘違いで受診していない運送会社をチラホラ見かけます。ですが、一定の条件を満たした場合、健康診断を受診させなければいけないことになっています。
その条件とはー
①契約期間の定めのない者(a~cいずれか)
a.期間が1年以上である者
b.契約更新により1年以上使用される予定の者
C.契約更新により1年以上使用されている者
②1週間の労働時間が同職種労働者の1週間の所定労働時間の3/4以上
①・②両方とも該当した場合、たとえ、契約社員だとしても、定期健康診断を受診させなければいけないことになっているというわけです。
該当しなくても実施が望ましい条件
先ほど、紹介した①と②の両方の条件を満たした労働者については、健康診断の受診をしなければいけませんが、①に該当、②に該当していない場合、受診が望ましいというケースがあります。
それは…
1週間の労働時間数が当該事業場において、同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数のおおむね2分の1以上であるものに対しても一般健康診断を受診させることが望ましい。
このようになっています。
運転者台帳などから判断
運転者台帳などの書類を見ると「入社した年月日」など記載されていますよね?
たとえ、労働条件通知書で「契約期間が1年未満」であったとしても、1年以上雇用が続いていることが、運転者台帳などの帳票類を見ればすぐに判明されます。
運送会社の健康診断の受診状況については、労働基準監督署も運輸支局も厳しく見られますので、誤魔化しは効かないと思ったほうが良さそうです。
3.雇い入れ時の健康診断は?
では、雇い入れ時の健康診断は、どのように扱えばいいのかというと、じつは、条件は、先ほど紹介した、①・②に該当すれば「雇い入れ時の健康診断」も必要という解釈になります。
なお、正社員と同じく、前に所属していた会社で3か月以内に健康診断を受診していれば「医師により健康診断の証明書」を新たに雇い入れる運送会社に提出すれば、改めて健康診断を受診する必要はない―ということになります。
まとめ
正社員に対しては、健康診断を受診させているにもかかわらず、契約社員の乗務員には「健康診断を受診させていない…。」というケースを時々見かけます。
しかし、法律を見てみると、たとえ、契約社員や短時間労働者であったとしても、一定の条件を満たしている場合、健康診断を受診させなければいけません。気を付けておきましょう。