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知っておきたい!一般貨物運送事業の運転者台帳の書き方!

一般貨物自動車運送事業を運営する会社は、運転者を雇用した際に、必ず『運転者台帳』を作成しなければなりません。

ただ、いざ作成しようとすると、さまざまな疑問が出てくるかと思います。

実際に、過去、運送会社を立ち上げた事業者から「運転者台帳を作成するとき、わからないことがあるが…」と質問を何度か受けたことがあります。たとえば…

その他にもあるかと思います。

そこで、今回はこれらの疑問を解消するため、『一般貨物運送事業における運転者台帳の書き方』について詳しくご説明します。

1. 運転者台帳に必要な項目は?

(参照:福岡県トラック協会HPより)

↑は、トラック協会(福岡県トラック協会作成)で公開されている運転者台帳です。

まず、運転者台帳を作成するうえで、かならず押さえておかなければいけないのは、「法律で定められた9つの項目を必ず盛り込んでおく」ことです。

項目が不足していると、巡回指導や行政監査で指摘されます。

必ず盛り込まなければいけない9つの項目は、次のとおりになります。

(貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条の4 運転者台帳)

① 作成番号及び作成年月日
② 事業者の氏名又は名称
③ 運転者の氏名、生年月日及び住所
④ 雇入れの年月日及び運転者に選任された年月日
⑤ 運転免許に関する次の事項
Ⅰ.運転免許証の番号及び有効期限
Ⅱ.運転免許の年月日及び種類
Ⅲ.条件が付されている場合は、その条件
⑥ 事故を引き起こした場合又は道路交通法108条の34(使用者に対する通知)の規定による通知を受けた場合はその概要

⑦ 運転者の健康状態
⑧ 輸送安全規則第10条第2項(従業員に対する指導及び監督)の規定に基づく指導の実施及び適性診断の受診状況
⑨ 運転者台帳の作成前6月以内に撮影した単独、上3分身、無帽、正面、無背景の写真

運転者台帳の様式は、トラック協会で無料公開されていますので、自社で様式を作成する必要はありません。(会員・非会員関係なく、ダウンロードできる県もあります。)

トラック協会の様式であれば、法律上、必要な項目はすべてありますので安心・安全ですよね。

たまに行政書士が作成した運転者台帳を使用している運送会社を見かけますが、これは非常にもったいないのでやめておきましょう。

【Point】労働者台帳を兼ねた運転者台帳がお得!

会社を運営するのであれば「労働者名簿」を必ず作成する必要があります。

さらに、運送会社は「運転者台帳」も併せて作成しなければいけないのですが、「労働者名簿」「運転者台帳」の様式をよくみると重複している項目がたくさんあります。

「労働者名簿」「運転者台帳」を別々に作成すると労力が非常にかかります。

そのため、多くの運送会社は、トラック協会が公開している労働者台帳も兼ねた「運転者台帳兼労働者台帳」の様式(1枚)を使用することで管理しています。

個人的には、すごくオススメな方法です。

2. 運転者台帳(項目)の書き方を解説!

それでは、運転者台帳に必要な項目と書き方について解説していきます。

① 作成番号及び作成年月日

【作成番号】は、『社員番号』や『通し番号(1、2、3…)』を書くのが一般的です。(入社した順に1から順番に作成番号を割り当てることが多い)

重複を避けるために、退職者の番号を再利用しない方がいいですね。

【作成年月日】は、運転者台帳を作成した日付を記載しましょう。

運転者の運転免許証や健康診断の記載欄がいっぱいで新たに運転者台帳を作成することがあるかと思いますが、再作成した日付を『作成年月日』欄に記載することになります。

② 事業者の氏名又は名称

トラック運転手は、法人ごとではなく”営業所ごと”に配属されます。

運行管理者と整備管理者と同じですね。

そのため、運転者台帳には、運転者が所属している”事業者名””営業所名”を記入する必要があります。

営業所が”本社”しかない場合でも、営業所名には「本社」と記載しなければいけません。

③ 運転者の氏名、生年月日及び住所

運転者の氏名や生年月日、住所の記載をしましょう。

④ 雇入れの年月日及び運転者に選任された年月日

当ブログで質問が多かったのが、「雇用年月日」と「事業用自動車の運転者に選任された年月日」の違いについてでした。

「同じ年月日でも問題ないのでは?」

と疑問を持たれている人も多いと思いますが、次の例を見ると理解いただけるのではないでしょうか?

【例①】
倉庫作業員も軽自動車運転手からトラック運転手に配置転換になった。
※宅配業で多い

【例②】
雇い入れた後、すぐに運転させるのではなく、荷主のルールや仕事のやり方を覚えてもらうために横乗りをしたり、添乗教育、初任教育を行った後、正式に運転者に選任する。

例②のように、運送会社は、雇い入れた後、すぐに運転させるわけではありませんよね。荷主のルールや仕事のやり方を覚えてもらうために横乗りをしたり、添乗教育、初任教育を行った後、正式に運転者に選任するはずです。

教育期間中は、まだ運転者として選任されていないため、雇用年月日と運転者としての選任日との間に時間差が生じます。

もし、すでに入社している運転手がいて「運転者に選任された年月日」の記入を忘れていた場合、いまから運転者に選任された年月日を思い出せないことでしょう。

そのような場合、↓の例のように、入社日に教育期間を加えた日付を記入するといいですよ。

【例】
雇い入れた年月日(入社日)が「2000年11月6日」の運転手がいたとします。

通常、運転者が入社してきた際、1週間で教育を終えている場合は、「事業用自動車の運転者に選任された年月日」は、「雇用年月日」の1週間後である「2000年11月13日」と記入すれば問題ないでしょう。

⑤ 運転免許に関する事項

Ⅰ.運転免許証の番号及び有効期限
Ⅱ.運転免許の年月日及び種類
Ⅲ.条件が付されている場合は、その条件

以上3点について記載する必要があります。

【免許証の添付だけでもOK】

免許証の内容を記載しなくても、免許証コピーを運転者台帳に貼るだけでも問題ありません。

ただし、運転免許証には有効期間がありますので免許を更新したら、貼りかえるか、直ちに新しい情報を記載する必要があります。

⑥ 事故を引き起こした場合又は道路交通法108条の34(使用者に対する通知)の規定による通知を受けた場合はその概要

(事故歴)

事故の記載は、第一当事者である場合に限られます。

運転者台帳には、事故の発生日時、場所、および事故の概要(損害の程度を含む)を記載する欄がありますので、これらの情報を記入してください。

事故には、次の2種類があります。まず、「道路交通法第67条第2項に規定する交通事故」は、車両等の交通による人の死傷または物の損壊(以下「交通事故」とします)が発生した場合に該当します。

次に、「自動車事故報告規則第2条に規定する事故」は、国に報告が必要な重大事故が発生した場合に記載されます。

これらのいずれかの事故が発生した場合は、運転者台帳にも記載する必要がありますので、ご注意ください。

(違反歴)
違反については、通知がなくても、事業用自動車の運行中に道路交通法違反があった場合、違反の種別、違反を起こした年月日及び場所を記載する必要があります。

⑦ 運転者の健康状態

健康診断個人票または第51条4に基づく健康診断結果の写しを添付することでOK。
※受診日を記載して「健康診断結果は別紙参照」と記載すれば、別に保存可。

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⑧ 輸送安全規則第10条第2項(従業員に対する指導及び監督)の規定に基づく指導の実施及び適性診断の受診状況

適性診断は義務診断である特定診断、適齢診断、初認診断を受診したときには、診断を受診した年月日所見を書く必要があります。

また、特別指導(個別の社内教育)については、初任運転者、適齢運転者、事故惹起者に対して義務になっていますので、実施した場合は、実施した年月日と内容を記載する必要があります。

 

⑨ 運転者台帳の作成前6月以内に撮影した単独、上3分身、無帽、正面、無背景の写真

運転免許証のコピーを運転者台帳で張り付けたものであれば、写真貼付とみなされます。

(ただし、最新の運転免許証のみ有効)光沢がなくてもいいので、スマホか何かで写真を撮り、運転者台帳(Excel)に貼り付けるといいですよ。

3.運転者台帳の対象は?

運転者台帳を書かなければいけない対象は、乗務員(正社員)だけではありません。

正社員以外…つまり、

① 短時間の運転者(パート・アルバイト)
② 出向運転者
③ 派遣運転者
④ 季節的に使用される運転者(季節等、一定期間雇用される運転者)

すべて該当してきます。

「短い期間だから、運転者台帳を作成しなくてもいいよね。」と油断していると、他の帳票類(賃金台帳や点呼記録簿、運転日報、運行記録計等)から簡単に足がついてしまいます。

いまは、行政監査が厳しくなっているので、運転者台帳のような簡易な帳票類で、処分を受けるのは勿体ないです。

3.運転者台帳は行政監査や巡回指導で指摘されやすい

以前、私が運行管理者の一般講習を受講したときのことです。

その際、講師である運輸支局監査部門の専門官から、「もし行政監査が行われたとき、事業所が指摘されやすい項目のひとつが『運転者台帳の記載不備』だ」という説明がありました。

以前とは異なり、現在では「運転者台帳をまったく作成していなかった」という運送会社はほとんど存在しません。

しかし、些細なことで指導されることがあります。

【一部未作成】
運転者を新たに雇い入れたにもかかわらず、運転者台帳を作成していなかった

【記入漏れや記入ミス】
運転者の名前など記載したが、適性診断や健康診断など記載すべき内容を記入するのを忘れてしまっていた。

…といった理由が多いですね。

4.保存方法は?

a.営業所毎の保存が必要

運転者台帳は、一般的な企業が作成している労働者名簿とは異なります。

トラック運送会社は、法律(貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条の4)に記載されている項目を満たした「運転者台帳」を労働者名簿とは別に作成する必要があります。

そして、運転者全員分の運転者台帳を完成させたら、営業所ごとに保管しておかなければなりません。

また、この運転者台帳は、運転者が在籍している期間だけ記録保存しておくだけでなく、運転者が退職した後も3年間、事務所に保存する必要があります。

b.PC保存も問題なし

運転者台帳は、トラック協会のHPからダウンロードした様式を使用して、全員分の運転者台帳を1つのファイルに綴じる会社が多いです。

一方、1名1名のファイルを作成し、運転者台帳や運転記録証明書、適性診断書などの書類をまとめている会社もありますが、そのようなケースは比較的少ないですね。

上場企業の一部会社で見かける程度です。

また、記録媒体としては、電子データとしてパソコン管理することも可能です。

電子データで管理する場合、書き換えも簡単。
おすすめです。

保存期間は、退職などで当該事業所の運転者でなくなった場合でも、3年間は必要ですので、その点も留意してください。

5.営業所を移動したときはどうするの?

複数の営業所がある場合、運転者台帳の記録保存について気になる方もいると思いますが、全日本トラック協会のHPで公開している「運行管理業務と安全」マニュアルのP90に「運転者台帳」のことが記載されています。

そのイラストにも書かれているように、たとえ「転任」であったとしても、退職者と同じく【運転者台帳については元々いた営業所に3年間、記録保存しておかなくてはいけない】となっています。

そのため、転任して新しい営業所に配属した場合、コピーして持っていくか、改めて運転者台帳を作成することをおすすめします。

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