トラックの杜│一般貨物運送事業に役立つ情報をブログでお届け!

試用期間中はパート・アルバイトで雇用し、問題なければ正社員として雇うことに問題はないの?

せっかく乗務員を雇ってもすぐ辞めてしまう人もいるし、きちんと仕事をしてくれる人かどうかわからない。

だから、採用してもすぐに正社員というわけではなく試用期間を設けておきたい。とりあえず、見極められるまで「パートタイマーかアルバイトとして働いて欲しい」というのが運送会社の本音でしょう。

けれど、いざ行うことを考えたとき、このやり方って「違法じゃないの?」と感じた人も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、試用期間中のみパートもしくはアルバイトで働かせるやり方は問題ないかについて紹介していきます。

1.試用期間中、パート・アルバイトとして使用しても問題ない

さて、今回のテーマで疑問に感じるところは、試用期間中は、パート・アルバイトとして時給制として勤務してもらい、「問題ない」と感じたら、本採用にし月給制にする。つまり、雇用体制と給与体制を変えていいのか…?といった点だと思います。

まず、事業用自動車に乗務させていいのか…ということですが、貨物自動車運送事業の法律において、2か月以上の雇用予定があり、試用期間14日を超えたら乗務させていいということになっているので、この条件を満たしていれば問題ありません。

さて、問題点である試用期間中と本採用後の労働条件が異なる設定になっていることについてですが、先に回答を書いておくと「とくに問題はありません。」

ただし、一定の条件がありますので、その点は気を付けておきたいところです。

では、どのような手続きをすれば問題ないのかについて書いていきますね。

2.労働条件をきちんと明示しないとダメ!

注意しておかなければいけないのは、たとえ法律上、問題なくても労働条件にかかわることなので【職業安定法第5条の3(労働条件等の明示)】により、従業員の募集や採用にあたって、そのことをきちんと労働者に明示する必要があります。

具体的な取り扱いについては、厚生労働省の「指針」(平成11年告示第141号、平成29年改正)で示されており、

「期間の定めのある労働契約を締結しようとする場合は、当該契約が試みの試用期間の性質を有するものであっても、当該試みの試用期間の終了後の従事すべき業務内容等ではなく、当該試みの試用期間に係わる従事すべき業務の内容等明示すること」

としています。

つまり、試用期間中の労働条件と本採用後の労働条件の両方を明示する必要があるというわけなんですね。

3.明示すべき労働条件とは?

明示すべき労働条件については、同法施行規則第4条の2で明示すべき事項とその方法等の詳細を明らかにしています。

その内容とは…

① 労働者が従事すべき業務の内容
② 労働契約の期間
③ 就業の場所
④ 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間及び休日
⑤ 賃金(臨時に支払われる賃金、賞与等を除く)の額
⑥ 健康保険、厚生年金、労災保険、雇用保険の適用

について、原則として書面の交付により明示してなければいけません。なお、書面については、求職者の希望により、電子メールでの明示も可となっています。

したがって、これらの事項については、試用期間中と本採用後でそれぞれ設定が異なることを具体的に明示することで、求職者側がその労働条件の違いを理解できるようにしておかなければいけないということなんですね。

時給制・月給制については就業規則に明記を忘れずに!

なお、時給制・月給制については、就業規則の絶対的必要記載事項(労働基準法第89条)である賃金の支払い方法や支払い時期にかかわることなので、とうぜんのことながら、事前に就業規則で定めておく必要があるので注意してくださいね。

4.雇用側の都合のいい解釈は難しい

試用期間中をパートやアルバイト扱いにするということは、業務遂行能力が明らかでない段階では、できるだけ有期雇用的なニュアンスを高めておき、一方で能力が低い人については、容易に雇止めをしたいのが経営者側の本音だと思います。

ただ、過去の最高裁判例では、当事者間で試用期間後の雇用契約の当然の終了について明確な合意が成立しているなどの特段の事情がない限り、そう簡単には有期雇用として認められないということになっています。

もちろん、きちんとそのことを踏まえたうえで契約すれば問題ないのですが、そのことを募集時に明示してしまうと、労働者側から敬遠されてしまい、誰も応募してこないということになってしまいます。雇用するのはなかなかむつかしいことですね。

まとめ

試用期間中と本採用後の労働条件が異なる設定をすることに問題はありませんが、雇用体制と給与体制を変えることをキチンと伝えることが必要です。

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