長時間労働している者について、労働安全衛生法(安衛法)では、過労死等の健康リスクを防止するために、事業者に対して、医師による「面接指導」が義務付けられています。
運送会社では、どうしても拘束時間が長時間になりやすいので、該当しているところが多いです。
そのため、もしも労働基準監督署の臨検が行われると、この「面接指導」について指摘されることが多いため、この「面接指導」について、トラック協会の会議などですでに耳にしたことがある運送会社も多いかもしれません。
働き方改革関連法により、長時間労働者に対する「面接指導」の実施枠が拡大されたので、今回のテーマとして紹介していきたいと思います。
1.改正前・月100時間⇒改正後・月80時間
次の通りになっています。
「休憩時間を除き、1週間あたり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が1か月あたり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められるもの」(新安衛法 第66条の8第1項、新安衛法第52条の2第1項)
つまり、改正前までは、労働者の時間外労働が「1か月あたり100時間」に該当していたときが対象だったのですが、法律が改正されたことにより「1か月あたり80時間」に引き上げられることになったんです。これにより、運送会社の多くが対象になってしまうのではないでしょうか。
ただ、改正前の安衛法にも「1か月あたり80時間」という要件はありました。
けれど、まだ努力義務だったので「医師による面接指導または面接指導に準ずる指導を実施する」というものに過ぎなかったんですよね。
それが、法的な義務になったというわけなんです。
…とはいえ、いままでどおり違反していたからといって罰則そのものはありません。
また、面接指導の実施が労働者の申し出を前提としているのは改正前と変わっていないんですね。
2.労働者の労働時間の把握
労働時間の把握の仕方については、タイムカードやパソコンなどの使用記録等による方法が挙げられていますが(新安衛則第52条の7の3第1項)、厚生労働省の施行通達(平成30年12月、基発1228第16号)では…
「原則として、タイムカード・パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間(ログインからログアウトまでの時間)の記録、事業者(事業者から労働時間の状況を管理する権限を委譲された者を含む)の現認等の客観的な記録により、労働者の労働日ごとの出退勤時刻や入退室時刻の記録等を把握しなければならない」
となっています。
3.法定休日の労働時間数も含まれる
これは、安衛法が労働者の健康管理を目的としていることによるもので、過労死等に関する労災認定基準においても同様になります。
このような考え方は、働き方改革関連法によ労基法関係の改正でも、時間外労働の上限規制のなかで一部取り入れられています。さらに同様の観点から労働時間を把握しなければならない労働者に、いわゆる管理監督者なども含まれていることに気を付けておく必要があります。
4.通知も忘れずに!
このほか、事業者に対して、面接指導について労働時間の算定を行ったとき、時間外労働が1か月あたり80時間を超えた労働者には、面接指導の申し出を促すために、すみやかにその旨を通知するように義務付けられています。(新安衛則第52条の2第3項)
まとめ!
日本の働き手が高齢者になっているいま、労働時間や健康診断などが以前と比べて、厳しい目が向けられています。