すでに36協定を届出したけれど、業務の都合で協定に書いた内容を変更しなければいけなくなったとき、協定の対象期間の途中でも改めて締結していいのかどうか質問がありました。
36協定は最大1年間の締結期間なので、すぐに新たに出しなおす必要があるため、あまり同様のご質問をいただくことはないのですが、今回は「36協定の対象期間途中の締結し直しが可能か否か」について紹介していきたいと思います。
1.変更は望ましくない
先生!
36協定は、法定労働時間を超えて時間外の労働を行うための届出でしたよね。
おっ!
タロウくんよく覚えていたね。
36協定は、時間外労働を行うために必要な例外的措置。これを労働基準監督署長に届出しなければ休日出勤も時間外労働もさせることができないルールになっているんだ。
今回の相談内容を見ましたが、仕事をしていると想定外のことがたくさん起きると思います。
けど、36協定が労働者代表との大事な締結だとすると、業務の都合上とはいえ、36協定を簡単に変更できるシステムだと危うい点もあるし…。
そもそも、いちど締結して届出した36協定を途中で破棄して締結をし直すことはできるのかな?
う~ん…。
正直、変更は望ましくないね。
よし!
せっかくだから、いまから解説しよう。
タロウくん。まずは、この厚生労働省の行政通達(平成30年12月基発1228第15号)を見てごらん。
「時間外労働の上限規制の実効性を確保する観点から、法第36条4項の1年についての限度時間及び同条第5項の月数は厳格に適用すべきものであり…(中略)…対象期間の起算日を変更することは原則として認められない」
このように「変更することは原則として認められない」と書かれてあるんだ。
2.例外もある(労働者の過半数を代表するもの)
でも、先生!
今回のように仕事の都合上、仕方のないケースもあるかと思います。このようなときは、どうしたらいいのでしょうか?
タロウくん。
変更が全く認められないかというと、じつはそうではないんだ。具体的には他方で例外も認めている。もう一度、通達を見てごらん。具体的なケースが書かれているよ。
「複数の事業場を有する企業において、対象期間を全社的に統一する場合のように、やむを得ず対象期間の起算日を変更する場合…」
このようにやむを得ない場合には、変更も例外的に可能としているんだ。ただ、その場合は…
「時間外・休日労働協定を再締結した後の期間においても、再締結後の時間外・休日労働協定を遵守することに加えて、当初の時間外・休日労働協定の対象期間における1年の延長時間及び限度時間を超えて労働させることができる月数を引き続き遵守しなければならない」
結果的には、二重の規制を受けることになるので注意しなければいけないよ。
3.労働組合がある場合
労働組合がある会社も同じなんですか?
会社に過半数を超える労働者で組織する労働組合(過半数労働組合)がある場合は、若干、事情が異なってくるんだ。
労働者代表と労働組合で事情が異なる?
どういうことですか?
36協定が労働協約の場合は有効期間を定めなくてよいとされていて(改正労働基準法施行規則第17条第1項第1号)、行政解釈も次のようになっているんだ。
「時間外・休日労働の協定であっても労働組合との間に締結され、当事者の署名または記入押印があれば、その協定が施行規則第16条第2項【改正労基法施行規則第17条第1項第1号】の労働協約と解される。(昭和27年9月基発第675号)
4.労働組合法により別途有効期間を規制している
う~ん…
イマイチまだよくわかりません。
36協定が労働協約である場合になぜ有効期間を定めなくていいのでしょうか?
それは、労働組合法により別途有効期間を規制しているためなんだ。
つまり、同法では、労働協約の有効期間を最長3年とするとともに、有効期間を定めない協約を認めている。
ただし、その場合には、当事者の一方が署名または記名押印した文書で90日以上前に予告すればいつでも解約できることになっていて、36協定が労働協約の場合であれば同様の扱いとされるというわけだ。
まぁ、このような場合、会社の都合ということではなく、組合側の事情による36協定の対象期間途中の破棄・再締結という事態が想定されることになるんだけどね。
まとめ
細かいことをたくさん書きました^^;
ただ、現実的に言えば、労使間で協議した結果、お互いに納得できれば36協定の見直しをすることは可能です。労基署さんでも特別条項の定め等、法的要件がそなわってさえいればOKすることが多いです。