全日本トラック協会のホームページの「トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態」が更新されました。
日々の生活を支える物流業界。
その主役とも言えるトラック運送業界で働く人たちは、どれだけの給料をもらい、どんな働き方をしているのでしょうか?
そして、他の業界と比べて何が特徴なのでしょうか?
この記事では、2023年の最新調査データをもとにトラック運送業界の現状をわかりやすく解説し、他の業界との比較を通じて課題や改善策も考えてみます!
※給料や歩合の割合おかしいよね?という意見もあるかもしれませんが、あくまで全ト協のデータに基づき記載した内容です。
1. トラック運送業のお給料、他と比べてどう?
まずは、トラック運送業界の賃金データを見てみましょう。
【トラック運送業の平均賃金】
2023年調査によると、トラック運送業界の男性運転者の月平均賃金(賞与込み)は次の通りです。
- 特別積合せ事業:約37万7,000円
- 一般貨物事業:約38万円
一見すると安定しているように見えますが、実際には「変動給」が多くを占めています。運行手当や残業代など、毎月の仕事量に左右される部分が大きいのが特徴です。
【他の業界と比較してみると…】
では、この金額を他業界と比べるとどうでしょうか?
- 製造業(全体平均):約43万2,000円(厚生労働省調べ)
- 小売業:約29万1,000円
- IT業界(システムエンジニア平均):約47万円
こうして比べると、トラック運送業は製造業やIT業界より少し低めですが、小売業よりは高い水準です。
ただし、トラック運送業界に携わる人なら常識ですが、トラック運送業は長時間労働が多く、体力的な負担が大きいですよね。
つまり、正当な対価をいただけていません。
そのため、運送会社関係のニュースのコメントには…
「時給で考えると最低賃金以下だ!」
「もう少し待遇が改善されてもいいのでは?」
「これでは若い世代がこの業界に就職しようと思わない。」
という声が多いのが現状です。
実際に、私の知り合いのトラック運転手は、某台湾企業の半導体工場に転職しました。トラック運送会社を転々としていた方だったのですが、完全に運送業界には見切りをつけたようです。
2. 賃金の構造がちょっと違う? トラック運送業の「変動給」
トラック運送業界には、他業界にはあまり見られない特徴があります。
それが「変動給」の割合が高いという点です。
【例】大型トラック運転者の賃金構成
- 固定給:約51~54%
- 変動給(歩合給・残業代):約46~49%
つまり、月の仕事量や運行距離によって収入が大きく変わるのです。
他業界では、基本給や固定給が収入のほとんどを占めるケースが多いため、トラック運送業界のこの給料体制の特徴は非常に独特といっていいシステムになっています。
3. 地域による賃金の違いと背景
トラック運送業のお給料は、地域によっても大きな差があります。
【例】都市部と地方の比較
- 関東:39万6,500円
- 東北:31万2,100円
- 九州:36万9,000円
- 北海道:40万4,000円
- 近畿:41万1,000円
- 沖縄:29万2,000円
賃金は地域によって大きく異なります。例えば、関東圏の一般貨物運転者の月平均賃金は396,500円ですが、東北地方では312,100円。約8万円もの差が生じています。
地方では運賃が低く抑えられがちで、その影響が運転者の収入にも反映されています。
【他業界の例】地方と都市の違い
こうした地域差は、トラック運送業だけでなく製造業や小売業でも見られる現象です。
製造業や小売業でも、都市部では需要が高いため賃金が上がる傾向がありますが、トラック運送業では地方でも同等以上の物流ニーズがあるにもかかわらず、運賃が低く抑えられていることが一因となっています。
4. 他業界との働き方の違い
人付き合いの煩わしさから逃れるため、トラック運転手を選択した人もいますが、他の業界で人付き合いの少ない業界と比べ、どのような違いがあるか見てみましょう。
【IT業界との比較】
IT業界では、リモートワークの普及やフレックスタイム制の導入が進んでいます。
一方でトラック運送業は「荷物を運ぶ」という性質上、働き方を柔軟にするのが難しいのが現状です。
【製造業との比較】
製造業では、作業が一定のスケジュールで進むため、長時間労働や過労が比較的コントロールされています。
これに対してトラック運送業では、天候や交通状況による影響も大きく、予定外の残業が発生しやすいのが特徴です。
運送業界は他の業界で誇れる条件があまりない
悪天候(台風)でも荷主は荷物を運ぶことを強要され、労働時間も過酷で給料も低い。
実際に働いてみると「そこまでない。むしろ、トラック運転手は気楽だから(自分に)合っている」と反論するドライバーもいますが、現実的な問題として、どの運送会社も50歳以上のドライバーが半数以上、在籍していることが多いです。
1部上場している運送会社ですら、運転手確保に頭を悩ませ、紹介制度やトラガールの積極採用など、さまざまな対策を取っていますが、それでも運転手を確保することが難しく、仕方なく休車しているトラックが多数あるところもあります。
5. 業界の未来
トラック運送業界が他業界と肩を並べ、さらに魅力的な職場になるために、どんな改善が必要でしょうか?
- 賃金の安定化:
固定給の割合を増やし、変動給を抑えることで収入の安定を図る。他業界のように、基本給の透明性を高める仕組みが求められます。 - 労働環境の改善:
長時間労働を削減し、ワークライフバランスを重視した働き方を推進。他業界の成功事例を参考に、効率的な労働環境の構築を進めます。 - 業界の魅力向上:
若年層へのアピールが必要です。IT業界が「成長産業」として認知されているように、トラック運送業界も「社会を支える基幹産業」としての地位をアピールすべきです。 - 地域格差の是正:
地方の運賃適正化を図る政策を業界全体で推進し、地方でも働きやすい環境を作り出します。
おそらく、国は、これらの問題を把握し、標準運賃の作成や運送約款の改正、トラックGメンなど改善に向けて法改正しているのですが、荷主と運送会社の力関係、運賃等改善しなければ、これらすべての問題は解決しないのが現実です。
6. まとめ
トラック運送業界は、製造業やIT業界などと比べても、独自の課題と強みを持っています。
その中でも、収入の安定性や働き方改革が進めば、もっと多くの人が「この仕事に誇りを持てる」と感じられるようになるでしょう。
ただ、あまりに荷主の力が強く、また輸送秩序を乱す運送会社がある限り、トラック運送業界が向上することがなく、しばらくは、待遇等の改善は期待できないのが現実だと言えます。
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