トラック運転手に運行の途中で休日を与えることは違法じゃないの?
「長距離輸送をしていると休日を与えることは難しいのでは?」
「運行途中で休日を与えることができたら問題が解決するけど…。」
といった質問をいただきました。
”出庫してから帰庫するまでの間”…つまり、1運行の途中で、車中もしくは宿泊施設で32時間以上の休息を与えた場合、休日として認められるのでしょうか?
とくに長距離輸送をしていると、この点については、管理者だけでなく、現場の運転者も気になっている人もいると思います。
そこで、今回は、1運行の間に休日を与えることは法律上問題ないのか…について解説していきます。
自宅ではなく運行の途中で休日を与えても問題ない?
長距離輸送などで遠方に行った場合、仕事の都合で現地に留まらなければいけないケースがあります。
たとえば、九州⇒関東の場合、帰り荷を得るためにすぐに帰れない…などのパターンですね。
帰り荷が決まるまで拘束させていないのであれば、運送会社としては、その間、現地で休日を取らせることができれば、時間を有効活用できるわけです。
ですが、疑問点もあります。
たとえ、休息時間の条件である32時間以上(特例を活用した場合は、30時間以上)を与えたとしても、彼らは自宅に戻っていないわけです。
それは、本当に仕事から解放されたと言えるのでしょうか?
なにしろ、休日というのは【本人の意思で自由に行動できる時間】のことを指します。
そのため…「自宅に戻っていない運行途中の状態は、まだ会社の命令下にあり、自由とは言えないのではないか?」と、多くの管理者や運転者は、運行の途中での休日は、心の中では「たぶん違法だろう」と感じている人がほとんどです。
私に質問してきた方も「運行途中の32時間以上の休息は、休日として認められないと思うが念のため確認したい」といったニュアンスでした。
遠方の地で休日を与えても問題なし
回答から先にいいます。
”1運行の途中で休息を与えることは問題ありません。”
え…?
そうなの?
とビックリした人も多いのではないでしょうか?
じつは、改善基準告示では、休日について8時間+24時間=32時間というように、時間について決められていますが場所まで定められていません。
そのため、遠方での宿泊施設や車内宿泊で32時間以上の休息を与えた場合、休日と認められます。
この件については、念のため、行政にも確認しました。
各回答は次のとおりです。
運輸支局 … 事業法上問題ない。
労働基準監督署 … 問題ない。
念のため、巡回指導において適性化指導員に質問したところ、やはり1運行の途中で休日を与えることは「法的に問題ない。」との回答でした。
ただし、釘を刺されたのは、たとえば、「車両に荷物があって盗まれないように、車両内にて監視せざるを得ない状況にある場合、休息とみなされない」ーだとか。
あくまで休憩や休息は、自由な行動をできる時間。…なので、拘束されるような時間は、あくまでも労働時間として扱われるようです。
運行途中で休日を与えた場合、144時間の時間制限はどうなるの?
1運行・144時間以内のルールがありますよね。
そのため、長距離輸送をした場合、144時間以内に認可車庫まで戻る必要があります。
では、運行途中で休日を与えた場合、その休日の時間も144時間の制限の中に含まれるのでしょうか?
答えは、含まれます。
つまり、運行途中で取った休日を与えたいのであれば、休日を与えた時間も含めて、144時間以内に認可車庫まで戻らなければいけないというわけなんですね。
自宅以外で休息を与えるのは好ましくない
法律上、自宅以外にて休息を与えることに何か制約があるわけではありません。
だからといって何でもOKというわけではありません。
考えてみましょう。
自分の意思で旅行し、遠方で休日を過ごすのはいいかもしれません。ですが、荷主や運送会社の都合で、自宅とは違う、見知らぬ土地で強制的に過ごせと言われたら、本当に心身共に回復するでしょうか?
回復しませんよね?
むしろ、疲弊してしまい、大きな事故に繋がってしまうと思います。
熟睡できなければ、疲れや睡眠不足などが蓄積してしまいます。そうすると、モノをとらえる力や集中力が希薄になり、事故に繋がりやすいことは適性診断のカウンセラーの先生も言っていました。
その意味でも「車中泊」を続けることは危険です。
国土交通省も、疲労回復を妨げ、過労運転の要因になると指摘しています。
つまり、禁止ではないけれども、好ましくない。
これが答えのようです。
事故を避けたいのであれば、1運行を終えたのち、帰宅できる状態で休日を与えることがベストと言えるでしょう。
まとめ
一の運行(144時間以内)の途中に休日を与えることは可能かどうかについては、改善基準告示に準じ30時間以上の拘束から開放された時間であればその時間を休日とみなして構わないということになります。
ただし、その休日の時間は運行期間の制限144時間の中に含むものとし、144時間を超えて帰着することはできないので気を付ける必要があります。
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コメント
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いつも楽しく拝見しています。
一つ教示して頂きたい事があります。
例えば長距離運行にて月曜日に宵積み出発、火曜日の朝に荷降ろしを完了し、翌日の水曜日の朝、同地での積込みを終えて木曜日に帰庫したとして火曜日から水曜日の間に休息期間を設けた場合、日報とタコのチャート紙は往路と復路2運行として分けておかなければならないのか、一運行として一つの日報とタコチャート紙でまとめておいて途中に休息期間が有った旨を日報とチャート紙に記入して処理していいのか判断がつきません。
宜しくお願い致します。
たかすなさん、
質問ありがとうございます。
日々の運転日報とタコチャート紙であれば
保存方法はとくに問われません。
ただ、一運行で一つの日報の場合、
様式によっては違反になります。
出庫・帰庫、主な経過地点、走行距離など、
日報に必要な項目をタコチャートに記載していれば
違反にはならないでしょう。
しかし、日報と日常点検が一体となった様式では、
日々の日常点検が確認されず、指導される場合があります。
まとめると…
1.タコチャートは1日1枚
2.日報に必要な項目は、タコチャートに記載すれば代用できる。
3.日常点検を日々行った記録が必要である
4.項目を満たせば保存方法(まとめ方など)は問われない
以上になります。
いつもお世話になっております。
休日に関する考え方なのですが、休日労働は二週間に一度と決まりがあるかと思います。
現在、長距離運行の関係で6日に一度帰庫はなんとかクリアするように乗務員には負担ですが運行の途中帰庫を呼び掛けています。
が、積時間の関係などもあり休日として36時間がクリアできません。
14日に一度36時間を守れたらもんだいないのでしょうか?
また、乗務員がみな自宅が営業所のある県には住んでいないので、運行途中自宅にて32時間休むのが好ましいかと思うのですがご教授ください。
サノ様、お世話になります。
1回の休息は、24時間+8時間=32時間(2023年6月2日現在)
あれば問題ありません。
休日労働として、2週間に1回以内、かつ1か月の拘束時間及び
最大拘束時間の範囲内で行っても問題ないのですが、併せて、
4週4日の休日も意識しなければいけません。
何度も申し訳ありません。
休息は8時間、休日は8時間+24時間で32時間を最悪2週間に一度あたえ、かつ4週間で休日が4日あればよろしいということでしょうか?