巡回指導の総合評価の基準と決め方とは?
この前、巡回指導に立ち会った担当者とお話をしたのですが、そこである疑問を感じたそうです。それが…
「巡回指導が終了した後、総合評価(A~Eのいずれか)の通知があった。この総合評価はどのような基準で決まるのでしょうか?」
このような内容でした。
たしかに、アルファベットA~Eのいずれかの総合評価の通知が手元に届きます。そこで、今回、「総合評価」についてまとめてみました!
1.総合評価を伝えることになったキッカケ
総合評価を意識せざるを得なくなったのは、
・Gマーク認定事業所が営業所と車庫間のIT点呼を行おうとした場合、申請書に総合評価の記載が必要になった。
・総合評価Eの事業所には、増車届が認可申請になったり、事業拡大に制限がかかるようになった。
などの改正が行われたことがキッカケでした。
その改正の影響で、適性化事業実施機関は巡回指導を終えた事業所に対し、総合評価A~E、どの結果なのか伝えるようになったんですね。
ちなみに、通知される以前の巡回指導でも総合評価の存在そのものはありました。しかし、事業所に伝わることはなかったんですよね。
しかし、先ほど説明したように、巡回指導での評価が国への申請に影響してくるようになってきたため、巡回指導が終了した後、総合評価を公開することが義務付けられたというわけなんです。
2.総合評価はA~Eの5種類ある
多くの企業では「S・A・B・C・D」の5段階で人事の評価を行っていますが、巡回指導の総合評価は、企業版の評価と思っていただければわかりやすいと思います。
巡回指導ではA~Eの5段階評価になっていて、Aが最高評価、Eが最低評価となっています。
↓の一覧を参考にするとイメージしやすいのではないでしょうか?
A⇒大変良い
B⇒良い
C⇒ふつう
D⇒悪い
E⇒大変悪い
つまり、巡回指導において、総合評価A~Cはふつう以上という扱いなので、A~Cだった場合、運輸支局から目を付けられることはありません。
3.各項目の評価は「適」「否」「該当なし」で決まる
巡回指導は「運送業の巡回指導のポイントと対策!」でも紹介したとおり全部で38項目あります。この38項目それぞれ調査されるのですが、そこで適性化指導員は…
「適」=問題なし
「否」=改善の必要あり
「該当せず」=該当しない項目と判断
の3つの評価をつけています。
ちなみに「該当せず」の意味は”調査対象外”という意味になります。
たとえば、事業報告書・事業実績報告書は、本社営業所のみ提出義務がありますよね。このような帳票類は、本社以外の営業所で確認されることはありません。そのため「該当なし」が存在しているというわけです。
4.重要な指導項目が評価のカギを握る
巡回指導の指導項目38項目に適・否の評価を付け、その結果、総合評価が決まっていくのですが、38項目の中には「重要な指導項目」が存在しています。
その「重要な指導項目」は全部で9項目で、↓のとおりです。
① 運行管理者の届出関係
② 過労関係
③ 点呼関係
④ 乗務員全員に対する指導監督
⑤ 特定の運転者に対する特別指導
⑥ 特定の運転者に対する適性診断
⑦ 整備管理者の届出関係
⑧ 定期点検
⑨ 健康診断
どの項目も法令違反していれば輸送の安全を脅かすものですが、その中でも特に重要な項目は大きな力を持っていて、ココの項目の取り組みで総合評価が大きく変わります。
その内容は…
なんと重要項目に1つでも否が付いてしまうと、総合評価が1段階下がるという厳しい評価が下されます。
つまり、「適・否」の割合だけなら
・総合評価BのところがCに
・総合評価CのところがDに
・総合評価DのところがEに
このように評価が1ランクダウンしてしまうというのですね。
後ほど紹介しますが、総合評価D・Eに該当してしまうと大きなリスクを抱えることになります。
2段階のランクダウンはない
1ランクダウンのルールを説明すると、たいてい「もしも重要な調査項目が2つ以上「否」と評価されたら「B⇒D」「C⇒E」のように2ランクダウンするのだろうか?」と考えますよね。
答えを先に書くと重要な指導項目に2つ以上「否」がついたとしても、1ランクダウンしかしません。
そこは安心して大丈夫です。
つまり、②過労関係と③の点呼関係に「否」が付いたとしても、CがD、DがEのように1ランクダウンするだけ…というわけなんですね。
ちなみに総合評価が元々Eだった場合は、Fになることはありません。E以上に評価が下がることはないのですね。
5. 巡回指導での総合評価の付け方とは?
調査項目が「適・否・該当なし」で判断されるのは分かったと思います。それでは、総合評価はどのように決められるのでしょうか?
この総合評価について、じつはトラック協会のHPなどで公開しているところもあります。今回は、北海道トラック協会で公開されている資料を見てみましょう。
↑の資料には「A~Eまでの総合評価は調査指導項目38項目のうち「適」判定の項目の割合で決まる」と書かれていますよね。
つまり、全項目38調査した場合、9割以上…つまり34項目「適」判定だったら、A評価になるというわけです。(=否は4つまでOK)
分母は変動するので注意が必要
巡回指導で調査される項目は38項目あるので、分母を「38」に設定してしまいそうですが、じつは分母の数は変動します。
そもそも評価の付け方として「適・否」以外に「該当なし」があるのですが、仮にこの「該当なし」と判断された場合、調査件数の分母に含まれません。
わかりやすいように1つ例をあげましょう。
本社以外に巡回指導を行った場合、 事業実績報告書と事業報告書は調査対象外として扱われます。なので、分母が「1」減ることになります。分母が1減ることで全調査項目は37項目と判断され、評価Aになるためには”否は3つまで”という計算になってしまうのです。
さらに、先ほど紹介したとおり、重要な指導項目が「否」の場合、1段階総合評価が引き下げられます。
そのため、たとえ9割以上の適があったとしても、重要な指導項目にひとつでも「否」があれば「A」ではなく「B」評価になるので注意しましょう。
6.総合評価を知るためには?
いまは、巡回指導が終えた後、事業所に総合評価が知らせれます。
ただし、周知方法は、都道府県によって異なるようで、私の知る限りでは改善文書と一緒に「総合評価」のお知らせが来るようです。
総合評価DやEになると、行政監査の危険がありますし、また車両の増車や事業規模拡大にも影響が出てきます。
改善しなければいけない項目がたくさんある場合は、総合評価はどのくらいか知っておいたほうがいいですね。
7.総合評価Eにならないためのワンポイントアドバイス
早朝・深夜での輸送や長距離輸送をしていると総合評価が悪くなりがちです。けれど、100%改善することは難しいですよね。
だから、まずは運転者台帳や教育記録簿などの帳票類をきちんと整備しておくこと。そうすれば、たとえ過労等について指導されたとしても総合評価が「E」になることは稀です。
監査に入られたくない=帳票類から整備する
これを忘れなければ、巡回指導の結果がキッカケで監査が行われる確率がかなり下がりますし、もしも行政監査が行われたとしても、何もしない事業所よりも処分内容はかなり低くなります。
いちど作成してしまえば、しばらく作成(加筆)しなくてもいい帳票類もありますし、作成のコツがわかってしまえば継続も楽になります。
とくに気を付けて欲しいのが、1年以内に新入社員が入ってきた場合や65歳以上の高齢運転者がいる場合。このとき、教育や適性診断を忘れずにしておきましょう。
Sponsored link
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。