運送業の巡回指導のポイントと対策!

一般貨物運送事業者には、2年に1回くらいのペースでトラック協会職員(適性化事業実施機関の指導員)が巡回指導に来ます。事業者の中には、適正化指導員の巡回指導を「監査」と思っている人もいますが、行政監査と適正化指導員の巡回指導は異なります。

その違いを挙げるとすれば・・・

わかりやすく違いをあげればこんな感じですね。

ちなみに巡回指導はあくまでも「指導」です。
行政監査と違って処分されることはありませんが甘くみてしまうと痛い目に合います。

そこで、今回は、わかっているようでわかっていない【巡回指導の裏側と対策】について、紹介していきます。

1.巡回指導とは?

そもそも巡回指導とはどのようなものでしょうか?

かんたんに言えば、巡回指導はトラック協会の職員である【適正化事業指導員】が2名1組となって、運送会社の事業所に訪問してくるのですが、2時間くらいで書類を見ていきます。

巡回指導はトラック協会の職員が行っているので「巡回指導の対象になるのはトラック協会に加入している事業所だけのはず!」と勘違いしている運送会社もありますが、適性化事業実施機関は、運輸支局の下請けのような機関なので、会員・非会員関係なく、支局の指示のもと、すべての事業所に訪問しています。

ちなみに、彼らは一般貨物運送事業法第39条第1号の規定に基づき、巡回指導を行っていますので、悪態をついたり、拒絶したりしてしまうと痛い目に合ってしまいますので気を付けてくださいね。

貨物自動車運送事業法(平成元年法律第83号) (抜粋)
(事業)
第39条 地方実施機関は、その区域において、次に掲げる事業(以下「地方適正化事業」という。)を行うものとする。
1 輸送の安全を阻害する行為の防止その他この法律又はこの法律に基づく命令の遵守に関し一般貨物自動車運送事業者、特定貨物自動車運送事業者及び貨物軽自動車運送事業者(以下「貨物自動車運送事業者」という。)に対する指導を行うこと。
(説明又は資料提出の請求)
第39条の3 地方実施機関は、前条の規定によるもののほか、地方適正化事業の実施に必要な限度において、貨物自動車運送事業者に対し、文書若しくは口頭による説明又は資料の提出を求めることができる。
2 貨物自動車運送事業者は、地方実施機関から前項の規定による求めがあったときは、正当な理由がないのに、これを拒んではならない。

2.速報制度の恐怖

(出典元:全日本トラック協会)

巡回指導で、まず重視しておきたいのは【特別ルール】があるということです。
その特別ルールとは、ある特定の項目において、もしも「違反している」と判断された場合、運輸支局に即報告され、行政監査になる可能性大という厳しい内容です。

だから、巡回指導の通知文書が来たときは、まずはこの【特別ルール】に自社が該当していないのか確認してほしいのです。そして、もしも今から紹介する【特別ルール】違反に該当してしまっていたときは、すぐに改善しなければいけません。

では、その特別ルールとは何か…いまから紹介しますね。

この制度は、平成25年10月1日より始まった「速報制度」というものになります。
全ト協が配布しているチラシには「速報制度」について次のように書いています。

国は、チラシに書いてある「①点呼を全く行っていない」「②運管・整管が全くいない」「③定期点検を全く行っていない」の3つの違反は、管理も疎かで重大事故を招くような悪質な法令違反と判断しています。そのため、これら3つの内、ひとつでも速報事案が確認された場合は、即運輸支局に連絡がいき、行政監査が行われる可能性が高いのです。

しかも、チラシには「厳しい行政処分が科せられることもあります。」という厳しい文言が…。

どれだけ重視しているのかわかりますね。

つまり、速報されたにもかかわらず「どうせ行政監査なんか来ない。」とタカをくくって、速報された内容をそのまま改善もせずに放置してしまっているとかなり危険です。

仮に運輸支局の行政監査が行われたとき、改善されていない場合は事業停止30日間という重い処分が下されます。事業停止30日間という数字は、ある意味、「運送会社を運営することをあきらめてください。」という数字です。

だからこそ、まずは、速報制度に該当していないか確認して下さい。

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3.巡回指導を甘く見ると痛い目に合う理由

適正化事業実施機関の巡回指導は、ただ事業所に訪問して指導・アドバイスをして終了というわけではありません。速報制度のチラシの裏面にも記載しているように巡回指導の結果を「定期通報制度」「相談事案」として、頻繁に運輸支局に報告しているのです。

それでは「定期通報制度」と「相談事案」がどのようなものか見ていきましょう。

①.定期通報事案

まず、適性化指導員が巡回指導を行ったときに、項目ごとに「適」「否」の判断をしているのですが、その「否」の数によって巡回指導評価が決まってきます。ちなみに、巡回指導評価は、A~Eの5段階で評価しています。(2018年【平成30年】より、巡回指導後、評価結果を教えてもらえるようになりました。)

なお、どの評価A~Eの高低にかかわらず、法令違反(改善項目)があれば、後日、実施機関から改善報告を求められるのですが、低い評価になればなるほど行政監査のリスクが高まります。

(改善の流れ)

評価A~C ・・・ 改善は指導員任せ
評価D、E ・・・ 基本、改善は指導員任せ。
※最悪の場合、行政監査が実施されることも。

ちなみに、運行管理者一般講習を受講したときに、講師である運輸支局 監査官が講演の中で『じっさいに、巡回指導の結果及び改善状況が悪い事業所には行政監査を実施している』とハッキリ言っていました。(※適性化指導員に確認しても同様の回答でした)

とくに巡回指導のとき、改善文書などでたくさん改善するよう指導されたときは要注意。
運が悪いと「悪質な事業所」と運輸支局に認定され、行政監査が実施されます。

※指導員に悪態(巡回拒否など)をついたときや総合評価で「E」(評価項目37項目のうち60%を下回った場合)に該当した場合は要注意です。

②.相談事案

運輸支局と指導員は、1か月に1度くらいの頻度で会議を実施して、改善がスムーズに行われていない事業所をピックアップして話し合われるそうです。

行政監査がこの会議の話し合いで出てきた事業所を対象に行われるのかどうかについては、運行管理者講習の中で説明はなかったのですが、巡回指導が実施された後に送られる改善要請文書を無視し続けると行政監査が行われているようです。

4.巡回指導までの流れ

前置きが長くなりましたが、自社が「速報制度」の違反に該当していないと確認できたら、次は巡回指導の対策をしていきましょう。

まず、巡回指導はどのような流れで行われるのか、イメージしやすいように①~⑥にまとめてみました。

① 2~3週間前に巡回指導の通知が届く
(訪問日時の記載あり。)

② 通知文書に書かれた帳票類を準備する
③ 自主点検表、運転者・車両一覧表の作成
 (運転者・車両一覧表を事前に作成する必要がない県もあります。)
④ 巡回指導当日、適正化指導員2名が訪問してくる
⑤ 約2時間かけて指導が行われる
⑥ 法令違反があれば改善文書が送付されてくる

全体の流れはわかったのではないでしょうか?

それでは、巡回指導でみられる項目とその対策に触れていきたいと思います。

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5.巡回指導で主に確認される項目は?

(出典元:福岡県トラック協会)

巡回指導でチェックされる項目は全部で38項目になります。

●事業計画等
1.主たる事務所及び営業所の位置、名称に変更はありませんか?

2.営業所に配置する事業用自動車の数に変更はありせんか?

3.車庫の位置及び収容能力に変更はありませんか?

4.乗務員の休憩・睡眠施設の位置、収容能力に変更はありませんか?

5.乗務員の休憩・睡眠施設の保守管理は適正にされていますか?

6.届出事項(役員等)に変更はありませんか?

●台帳・報告書等

1.事故記録が適正に記録され、保存されていますか?

2.自動車事故報告書を提出していますか?

3.運転者台帳が適正に記入等され、保存されていますか?

4.車両台帳が整備され、適正に記入等されていますか?

5.事業実績報告書・事業報告書を提出していますか?

●運行管理等

1.必要な員数の乗務員を確保していますか?

2.運行管理者が選任され、選任(変更)届出書を届出していますか?

3.運行管理者に研修を受けさせていますか?

4.過積載による運送をしていないですか?

5.運行管理規程が定められていますか?

6.過労防止を配慮した勤務時間、乗務時間を定め、休憩時間、休息時間を適正に管理していますか?

7.点呼の実施及び記録保存は適正ですか?

8.乗務等の記録(運転日報)の作成・保存は適正ですか?

9.運行記録計による記録及びその保存・活用は適正ですか?

10.運行指示書の作成・携行及び記録保存は適正ですか?

11.乗務員に安全教育を実施して記録保存していますか?

12.特定の乗務員に対して義務付け適性診断を受けさせていますか?

13.特定の乗務員に対して特別な指導を実施していますか?

●整備管理等

1.整備管理者が選任され届出されていますか?

2.整備管理者に所定の研修を受講させていますか?

3.整備管理規程が定められていますか?

4.日常点検基準を作成し、これに基づき点検を適正に行っていますか?

5.定期的な点検・整備を行い、点検整備記録簿等が保存されていますか?

●労務関係等

1.就業規則が制定され、届出されていますか?

2.36協定が締結され、届出されていますか?

3.所要の健康診断を実施し、健康状態を把握していますか?

4.労災保険・雇用保険に加入していますか?

5.健康保険・厚生年金保険に加入していますか?

●運輸安全マネジメント

1.運輸安全マネジメントの取り組みについて

このようにして見ると本当にたくさんの書類を見られます。

なお、巡回指導では、どのような流れで進められるかというと、適正化指導員から「運転者台帳はありますか?」など帳票類の提示を求められます。…なので、事業所側としては、彼らの求める帳票類を渡していけばいいだけです。

また、適正化指導員が帳票類を見て、疑問に感じるところがあればヒアリング等が行われますので、日頃の取り組みについて説明していくことになります。

仮に法令違反が見つかれば、アドバイスや改善するよう求められ、その後、法令違反している項目については、改善するよう文書指導が行われるのです。

5.巡回指導後の文書指導の取り扱いには要注意!

適正化事業実施機関の指導員は、柔らかい口調で指導・アドバイスしてくれるので、事業所側は油断してしまうことがあります。

なかには、この文書指導が事業所に届いても「運輸支局の監査ではなく、巡回指導だから無視しても大丈夫だよね。」と勝手な判断をしてしまい、「(当事業所は)改善報告をしていない」と公言する運送会社の社長がいましたが、いまもこのような考え方をしていると危険です。

…というのも、改善文書を無視してしまうと、その情報は運輸支局に届いてしまうからです。

そして、無視状態が続いてしまうと、運輸支局から「改善意識がない事業所」「改善させなければいけない」と判断されてしまうんですね。そうすると【行政監査対象】になってしまいます。

いわゆるブラックリスト入りですね^^;
なので、確実に返送したほうがいいです。

できれば、巡回指導で指摘されてしまう前に自社で改善できるところは改善しておいたほうがいいですよ。

6.巡回指導は視点を変えれば役に立つ

巡回指導は悪いことばかりではありません。

適正化事業実施機関の指導員が、トラック運送業界の厳しい現状を無視して法令違反している項目について、指導してくるのは本音からすると面白くないのは当然です。

ですが、あえてここは視点を変えてみましょう。巡回指導では悪質な態度などしなければ、指導・アドバイスをしてくれる機関です。いわば、事前に行政監査で処分されそうなことを教えてくれる「人間ドック」のようなものだと思ってください。

するとどうでしょう?
これ以上ない診断だと思いませんか?

また、今までわからないまま放置していた帳票類の書き方などについても、疑問があれば、適正化指導員に話を聞けばわかりやすく回答してくれます。前向きな事業所には、少しでも力になろうと協力してくれるんですね。

せっかく仕事の時間を割いてまで巡回指導に立ち会うのです。
どうせなら有効的に活用したいものです。

巡回指導は事前に通知してくるけれど行政監査は無通告

巡回指導は事前に通知文書で開始日時を教えてくれます。

そのため、事業所のなかには、巡回指導の通知文書が届いてから、日ごろ記載していない帳票類に記載して、指導されないように工作しているところがあります。ひょっとしたら、いまドキッとした事業所も多いかもしれませんねw

ですが、このような一時しのぎは、あくまで巡回指導でしか通用しません。

もしも、行政監査が行われた場合は、とつぜん来るので対応のしようがありません。
だから、巡回指導では優等生だった事業所が行政監査になるとダメ事業所になるということもあるのです。

確かに人員不足などの理由でどうしようもない現状もあるでしょう。
ですが、本当はできるところを「面倒くさい」という理由で行っていないところもあるはずです。

最近では、世論や荷主が厳しくなったこともあり、巡回指導をきっかけに一歩ずつ法令遵守をしていっている事業所もたくさんあります。また、運行管理者が変わっただけで法令遵守ができている事業所に変わることもあると聞いたことがあります。

「改善基準告示違反ばかりに注目してしまいがちだが、じつは違反項目は帳票類の不備などが多い。改善できるところから行うことが成功の道だ」と運輸支局の監査官も一般講習で言っていました。できるところから改善していきましょう^^

7.日頃の安全意識が会社の明暗を分ける

なお、平成25年11月1日施行の行政処分等の基準が改正になったことで、悪質で重大な違反をしている事業所には、トラック運送業界から退場してもらうために、厳しい行政処分を、またコンプライアンス意識が高く、帳票類を整えている事業所には、たとえ重大事故を起こしたとしても文書警告で…という方針に変わりました。

つまり、日頃からの安全意識やその取り組みの有無で、いざというとき(重大事故等を起こしたとき)会社の運命が大きく変わるというわけなんですね。

そのため、同じ内容がきっかけで行政監査が行われたとしても”警告”で終わる事業所と車両を止められてしまう事業所に分かれてしまうのです。

国は法律を守る会社を存続させ、悪質な会社は退場させるという考えにシフトしてきています。だからこそ、巡回指導をチャンスととらえて取り組むことが今後の会社運営に必要なことだと私は思います。

まとめ!

いかがだったでしょうか?
平成30年7月1日の行政処分の強化において、次のことがちゃっかり追加されています。

以前から運送会社を運営している事業所は巡回指導を甘く見る傾向があるようですが、厳しい世論を反映して巡回指導の立ち位置そのものが昔とは大きく変わりました。いまでは運輸支局と情報を密にして、連携もスムーズになっているため、巡回指導の評価結果をもとに行政監査が行われることも多くなってきているのです。

巡回指導では、適正化事業実施機関の指導員は笑顔で対応してくれるかもしれません。…ですが、その裏では、運輸支局などから指定された基準どおりの内容で評価していることを忘れてはいけません。巡回指導の通知が届いたときは警戒したほうがよさそうです。

【運輸業専門の行政書士・一覧】
>九州地区(福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)



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コメント

    • コザル
    • 2019年 2月 28日

    私の会社には、いくつかの営業所があり、定期的に巡回指導を受けています。そこで質問をさせていただきますが、貨物利用運送事業のみの営業所もあるわけですが、こちらについても巡回指導はあり得るのでしょうか? もちろん一般貨物の営業所は巡回指導を受けています。

      • トラックの杜
      • 2019年 2月 28日

      コザルさま、はじめまして!
      ご質問ありがとうございます。

      貨物利用運送事業のみの場合は、巡回指導の対象外になっているようです。

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