健康診断結果で再検査が出た!会社として指導しなければいけないの?

最近、大きな事故がニュースで流れると、会社が健康診断の受診させていなかった場合、それが報道されることがあります。国も健康診断の未受診については、敏感になっており、労働基準監督署と運輸支局が相互通報するなど、厳しくみているようです。

この前も、とある運送会社の担当者とお話をする機会があったのですが、あるお悩みをお持ちでした。

それは…「乗務員に健康診断を受診させたのはいいけれど、どうやら、その受診結果がおもわしくないようで、再検査が出てしまった。このような場合、会社として、どのように指導し、その結果はどうだったのか…など記録にとっていなければいけないのか?」といった内容でした。

その担当者が健康診断の再検査の指導記録などの対応について、気にしている理由のひとつとしては、「最近、再検査について指導し、記録に取っていない場合、処罰があると聞いた。」ことがキッカケだそうです。では、関係行政はどのような判断をしているのでしょうか?

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1.法定の健康診断は受診させなければいけないが…

労働基準監督署では、法定の健康診断については、労働安全衛生法に基づき、会社が乗務員に健康診断を受診させるように指導しています。仮に受診していないことが確認された場合は、行政指導または違反になることもあるます。

今回の相談のように、定期の健康診断を受診(第一次検診)させた結果、再検診や専門医で受診(第二検診)させたときの対応ですが、答えから言うと、会社は定期健康診断を受診させる義務があるものの、再検査や精密検査については受診させる義務はない―です。

しかし、トラック運送会社については、令和3年6月1日より、事業法で一部改正が行われました。(後述)

参考:
「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針の(5)ハ」で、再検査または精密検査の取り扱いに関して、「再検査又は精密検査は、診断の確定や症状の程度を明らかにするものであり、一般には事業者にその実施が義務付けられているものではない」となっています。

2.行政処分が新たに加わる

労働基準監督署の見解

労働基準監督署のアドバイスとしては、再受診(第2次検診)以降、会社として受診を絶対に受けさせなければいけないという義務はないのですが「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」では、積極的に取り組んでほしい…とのことでした。

ただ、義務ではないため、取り組まなかったからといって、何か罰則があるかと言えば何もありません。

【NEW】運輸支局の見解

健康起因事故を踏まえた行政処分強化に伴い「貨物自動車運送事業者に対し行政処分等を行うべき、違反行為及び日車数等について」の一部改正が令和3年6月1日に施行されました。

この改正に伴い、新たに加わった行政処分は、「未受診による健康起因事故が発生したもの」で「初違反40日車、再違反80日車」と厳しい内容になっています。この「未受診による健康起因事故が発生したもの」について、行政は、

事業者が、当該運転者の事故発生日から過去1年以内に法定の健康診断を受診させずに乗務させていた場合、または、健康診断受診結果に基づき、脳疾患、心臓疾患及び意識喪失に関する疾病を疑い、再検査や要精密検査、要治療の所見があるにもかかわらず、再検査を受診させずに乗務させていた場合のいずれかに該当した場合に適用する。

としています。

つまり、脳疾患や心疾患、意識喪失に係る健康起因事故に繋がる恐れのある診断項目(血圧測定、血中脂質検査、血糖検査、心電図検査等)に「要再検査」等が出た場合、運転者に再検査を行うよう運送会社は指導しなければいけないということなんですね。

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3.指導記録の残し方は?

労働基準監督署の担当官の話では、指針の中で2次受診後の指導については義務ではないため、指導記録のサンプルのようなモノはないようです。

そのため、「別紙や一次検診の余白などでも構わないので、①いつ、②どのような指導をしたのか(配置転換等)の記載をしてほしい」などのアドバイスをいただきました。

なお、指導記録を残さなかったから、裁判で訴えられたというケースは過去にはないようです。

ただ、労働安全衛生法ではなく民事的な話で、たとえば貨物自動車運送では運転手が「てんかん」などの持病を隠し、社会的に大きな事故になったケースがあったとします。このような場合、明確な指導記録を残しておけば、会社では常日ごろから、乗務員に対して「ここまで健康管理をしていた。」という証にもなります。

確実とは言い切れない部分はありますが、日ごろの会社の取り組みが、何かあった場合、会社側の責任が軽減されることも考えられるので、やはりリスク管理として取り組んでおきたいものです。

運送会社は、再検査をするよう必ず指導する

運送会社は、健康起因事故に関わる診断項目で「要再検査」が出た場合、乗務員に再検査させなければ、健康起因事故が起きた場合、厳しい行政処分を受けることになります。

費用負担は、会社側・労働者側、どちらが負担するかは決められていません。ただ、事業法上、運送会社側は、かならず、再検査を受診するよう指導しなければいけません。

また、再検査を指導させた証明として、検査結果や(今後の運転についての)医師の判断などをまとめておくといいでしょう。

まとめ!

労働基準監督署と運輸支局では見解は異なります。

運送会社の場合は、事業法を遵守する必要があるため、令和3年6月1日より、乗務員に対し、運輸支局の行政処分で新たに健康起因事故につながる診断項目については、再受診させていなければ、処分されるようになりました。

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