会社の従業員が、出勤するとき、自宅の玄関を出たあたりで転んでしまい、足首をねんざしてしまった…。このような話を耳にしたことありませんか?
私の会社でもありました。
通勤しようとして、玄関から出てすぐ近くのマンホールの蓋だったと思うのですが、滑って転んでしまい骨折してしまったのです^^;
このようなとき、会社にはまだ到着していません。このようなとき、通勤災害として労災保険から保険給付は行われるのでしょうか?ちょっとした豆知識について、今回も紹介していきたいと思います。
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1. どこからどこまでが通勤?
労働者災害補償保険法(労災保険法)は、労働者の業務災害だけではなく、通勤途中の負傷や疾病、傷害、死亡などの通勤災害についても保険給付を行う…としています。(第1条)
ちなみに、通勤については、労災保険法第7条第2項において、次のように書かれています。
「労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除く」
このように定め、第1号に「住居と就業の場所との間の往復」を掲げています。ちなみにここでいう「住居」とは、労働者が居住して日常生活の用を供している場所と思っていただいてOKです。
その居住から行動に出た時点から通勤が始まる…というわけなんですね。
玄関で滑って負傷した場合ではどうなるか?
私の会社で起こった「玄関を出てすぐのマンホールで滑り、骨折した事件」は、本人は会社に向かっているので”通勤中”という扱いになるのはわかります。
ただ、もしも「自分の玄関で滑って捻挫した」という場合はどのような取り扱いになるのでしょうか?
なにしろ、自分の玄関ということは私有地で公道に出ていません。公道でもない場所でのケガが「通勤中」扱いになるかといえば迷うのは当然かもしれません。
2.1戸建ての場合、自宅の敷地から出た事故かどうかで判断
玄関先での事故が通勤災害になるかどうか判断するとき、どのような状況だったか詳細に把握していく必要があります。
玄関先といっても、玄関を出たところがすぐに公道がある場合があります。公道に出て、何かの拍子に転んでしまったのか、あるいは玄関を出たとしても、その先にさらに門扉があるなど、あくまでもまだ敷地内で起きた事故なのか、さまざまなパターンがあります。
その状況で判断が分かれるのです。
まず、これについて行政解釈における「帰宅時」ですが、とある判例が参考になると思います。
その判例は、1戸建ての屋敷構えの住居の玄関先における転倒事故の内容です。(S49.基収第2110号)。
被災労働者は帰宅のとき、自宅の玄関先の階段をあがろうとしたが、石段が凍っていたために足を滑らせてしまい転倒してしまった。この場合「住居内で発生した災害である」ということで【通勤災害】とは認められませんでした。
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3.1戸建ての住居と通勤の境目は?
このような事例の行政解釈では、1戸建ての住居と通勤の経路の境界は…
「公道から被災労働者の所有する敷地に入る地点である」としていますので、ここが判断の分かれ目とも言えます。
つまり、玄関を出たところが公道か、敷地内なのか…ということです。
今回の質問は、詳細をお伺いしないと「こうだ!」というように断定はできないのですが、いまお話したことを参考にしていただければと思います。
4.アパートやマンションの場合はどうなるの?
ちなみに、同じ玄関先の転倒事故といっても、アパートやマンションの場合はどのようになるのかというと、じつは、この件についても、アパートの階段における転倒のケースが行政解釈で示されています。(S49年、基収314号)
この内容によると、被災労働者は、出社のためにアパートの2回の自室を出て階段を降りるときに、下から2段目のところで靴のかかとが階段に引っ掛かり、前のめりになって転倒してしまい、負傷したものです。
5.アパートやマンションは自室を出たすぐの廊下から通勤
ちなみに1戸建てと違い、アパートやマンションの場合、通勤が自室を出たすぐの廊下から始まるのか、それとも建物の玄関を出たところから始まるのか迷うことだと思います。
このようなケースでは「当該アパートの階段は、通勤の経路として認められる。」として、通勤災害に認定しました。行政解釈では、その理由を「労働者が居住するアパートの外戸が住居と通勤経路との境界である」としているようです。
まとめ!
いかがだったでしょうか?
アパートと一戸建てでは、イメージ的に解釈が異なりますが、それぞれ行政解釈としてはっきり出ていますので、何かあったときは参考にしてもらえれば…と思います。
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お尋ねします。
自宅敷地内で、玄関を出て車庫へ向かう途中、凍結した坂道で転倒しけがをした場合、通勤とみなされますか?
ご意見をお聞かせください。宜しくお願い致します。
中岡様、
ご質問ありがとうございます。
自宅敷地内では、労災は認定されないものと思われます。
「自宅を出て、月極駐車場に行くため歩いている時に転倒した」(参照:https://hitorioyakata.or.jp/blog/111)
のであれば、通勤災害に該当する可能性は高くなります。