【巡回指導の視点】36協定(時間外労働及び休日労働に関する協定書)はどこを見られているか?

巡回指導で確認される書類のひとつに36協定があります。

正式名称は【時間外労働及び休日労働に関する協定書】と言われるものですが、どうやら労働基準法第36条に基づく労使協定のため、一般的には「36協定」と言われているようです。

では、巡回指導では、どのようなところをチェックされるのでしょうか?
まとめましたので参考にしてくださいね。

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1.営業所単位で届出を行っているか?

36協定は、時間外労働(残業)や休日出勤がまったく発生しないのであれば必要ありません。しかし、よほどの業種でない限り、労働時間が8時間以内に収まることはないですよね。

しかも、事業者単位ではなく、営業所単位で届出しなくてはいけません。

そのため、本社営業所で届出をしたとしていても、広島営業所で届出をしていなければアウトということになります。

つまり、チェックポイント1として、巡回指導では【営業所単位労働基準監督署に届出しているか?】どうかを確認しているというわけなんですね。

小規模の事業所があるが含めて届出できるか?

通常の会社であれば、従業員が数名しかおらず、労務管理が存在しない場合は、同じ管轄の他営業所と含めて届出をしてもOKです。

しかしながら、運送会社の場合、たとえ少人数でも運行管理者を選任している以上、労務管理をしている者がかならず1名はいることになります。

そのため、各営業所で36協定の届出をすることが必要と考えていいでしょう。

届出の控えを提示

…なので、届出の事業の所在地欄が広島営業所なら広島営業所の住所でなければ営業所単位で出していないのでは?と判断され、ヒアリングが行われます。

また、労働基準監督署に届出をしたか否かも確認されるので、労働基準監督署の受付印が押印された届出控えを適正化指導員に提示することになります^^

2.協定期間が期限切れになっていないか?

36協定は、1度届出すれば終わり…というわけではありません。
締結期間というのが存在します。

期間は最大で1年間

たとえば、

「 令和2年4月1日~令和3年3月31日まで。」

といった感じです。

この期間は、暦上の1年(4月~翌3月)や年度(1月~12月)に合わさなければいけないといったルールはありません。※36協定の記載方法については、機会があればまたお話します。

…このように、届出に記載されているはずなので、期限切れになっていないか、巡回指導の通知が来たら確認しておいたほうがよさそうです。

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3.本社一括で届出されている場合は?

営業所がたくさんある大手の運送会社では、本社が所在する所轄労働基準監督署へ一括届出をしている可能性があります。

そのため「手元に控えがない。届出していないかも…。」と思っても、念のため、本社が届出していないか確認しましょう。

仮に、本社が一括届出をしていら、各営業所に備付することができる書類(控え)があるはずなので、それを本社からFAX等でもらっておいたほうがいいです。

巡回指導で「本社一括で行っています。」と説明しても、かならず、36協定の届出(控え)を求められ、提示できなければ「指導」されるのがオチです^^;

Q1.本社一括の届出要件は?

本社一括の届出要件は、次のとおりです。

(1)本社代表者と当該会社の労働組合本部の長が締結した協定であること
(2)当該労働組合が各事業場ごとにその事業場の労働者の過半数で組織されていること
(3)本社及び本社を除く各事業場の36協定の内容(協定当事者を含む)が同一であること
(4)本社以外の各事業場の名称・所在地・労働者数・事業場所轄監督署名を記した「届出事業場一覧表」を用意すること
(5)36協定の内容(協定当事者を含む)が同一であること及び当該労働組合が各事業場ごとに労働者の過半数で組織されていることを明らかにする書面を添付すること

※本社一括届出の協定当事者となれるのは、労働者の過半数で組織されている労働組合に限られています。つまり労働者の過半数で組織されている労働組合がない場合は、一括届出はできません。

条件が意外と厳しいですね。
通常の運送会社では難しそうです。

Q2.本社一括の届出方法は?

もしも、上のQ1の要件を満たしているのであれば、次の方法を用いて本社一括することができます。

本社分36協定届(2部)及び「届出事業場一覧表」(2部)を本社を管轄する所轄労働基準監督署に提出してください。その内36協定の1部及び事業場一覧表の1部は控えとして返却されます。本社以外の各事業場分の複本については、「本社36協定届及び事業場一覧表の写し(コピー)」で代用し、各事業場に周知することになります。
※本社一括届出は、本社分とともに行う必要がありますので、本社を除く各事業場分のみの提出は受理されません。

4.【質問①】家族経営でも提示を求められるの?

従業員(労働者)や派遣運転者等が1人でもいて、残業や休日出勤が1回でもあれば、36協定の届出の義務は発生します。では、同居の親族のみで経営している場合や役員のみで経営している営業所は、どうなるのでしょうか?

この場合は、36協定の届出の義務が発生しませんので、巡回指導でも提示を求められることはありません。

【関連】
⇒「家族経営で給与をもらっている親族は36協定の対象になるの?

5.【質問②】従業員10名未満でも36協定は必要なの?

労働者が10名未満だと就業規則については、届出は免除されますよね?

そのため、36協定も同様に「労働者10名未満の場合、免除される」と思っている運送会社がいます。ですが、労働時間や賃金に関する規制まで免除されているわけではないので、届出が必要になります。

「パートタイマー・アルバイトがほとんどだから…。」とお話される運送会社もいますが、たとえ、パートタイマーやアルバイトが極端な話、1名しかいなくても、時間外労働をさせるためには、36協定を届出する必要があるので注意してください。

「未届出で残業手当を出していれば問題ない」と考えている人もたまにいますが、労働基準法第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)の違反は免れても、締結せずに時間外労働を行わせていた場合、労働基準法第32条違反扱いになります。

この場合、6カ月以内の懲役または、30万円以下の罰金になるので注意しましょう。

まとめ

同居の親族のみ、役員のみの経営、休日出勤、時間外労働がない場合は、36協定の届出の義務がないため、巡回指導で提示を求められることはありません。逆に言えば、ふつうに経営していたら36協定を確認されるということになります。

営業所ごとに36協定をきちんと締結しているのか?
あらためて確認しましょう。

なお、36協定の様式は、トラック協会のHPに公開されていますし、記載方法も決して難しいものではありません。すぐに完成させることができます。忘れないうちに作成しちゃいましょう^^

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3件のコメント

ハローワークにて、運転手の36協定は意味を成さない。と聞きました。
確かに、3516時間の拘束時間があり、法定の総枠が2085時間、年間労働日数を240日・・・
確かに・・・
事業所に、運転手以外の人がいるとその人には必要ですが、
よく理解できません。
地域によっては、一ヶ月の残業を104時間にしたら実態を教えてくれと監査が入ったと話も聞きましたが、
弊社は、労基にて104時間記入を勧められました。
そのあたりの詳しいことを教えてくださいませんか?
よろしくお願いします。

お世話になります。

本来、時間外労働の延長時間数には、時間外労働の限度時間(限度基準)というものがあるのですが、トラック運転手には限度基準が適用されません。そのため、改善基準告示違反をしない範囲内で、上限なく残業時間を設定することができます。

※今回、改善基準告示だけしか上限がないことを問題視したのが「働き方改革」で、もしも、改正されれば「年720時間」「複数月80時間」「1ヵ月あたり100時間」を意識することになるのでは…?と言われています。

話を元に戻します。

ただ、36協定を締結していなければ、トラック運転手であろうとも法定労働時間(1日の労働時間8時間)を超えて労働させることは違法になるので、時間外労働(残業)または休日労働をさせるためには、会社の実態に合わせた時間外労働時間の数字を36協定に記載し、労基に届出する必要があるんですね。

ちなみに、残業時間を過少評価して記載してしまうと、仮に、上限を超過した場合、労働者の同意を得てない残業として違法扱いになります。そのため、労基は御社の実態を踏まえて104時間記入を勧めたのではないでしょうか。

その一方で、労基は、36協定で1か月80時間以上と記載したところをターゲットに臨検を行っています。(参考元⇒「残業が月80時間で労働基準監督署が立ち入り調査になる!?」)

つまり、運送会社は、36協定に1か月80時間以上書いて届出することは法律上問題ないけれど、臨検でその業務内容に問題がないかどうかチェックされてしまうというわけなんですね。

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