初任診断と他の義務診断が重複したときはどうなる?

営業ナンバーのトラックを乗務する運転者が、かならず受診しなければいけない「義務」の適性診断は、初任診断・適齢診断・特定診断の3つあります。

その内容は…

初任診断・・・新入社員
適齢診断・・・65歳以上の年配者
特定診断・・・大きな事故を起こした乗務員

になるのですが、ふつうはどの義務診断を受診させるか迷うことはありません。ですが、ときに想定外のことが起きてしまうこともあるのです。

昔では、想像できなかった義務診断の重複について紹介していきたいと思います。

1.高齢社会だからこそ起こり得る

新たに乗務員を雇用する場合、通常であれば【初任診断】を受診させれば問題ありません。ですが、いまは深刻なドライバー不足に陥っていますよね?

そのため、運転者を募集しても若いドライバーから応募の連絡すらない場合があります。その一方で、すでに定年退職で退社した高齢運転者(65歳以上のドライバー)から応募があることも。

…とはいえ、喉から手が出るほど欲しいドライバーなので、たとえ65歳以上の運転者でも雇い入れる運送会社も増えてきました。

ただ雇い入れるときにひとつの疑問が生じます。

初任診断・適齢診断…どちらを受診させる?

65歳以上の高齢運転者が新たに入社してきたとき「初任診断」「適齢診断」どちらを受診させればいいのでしょうか?

さらに、その65歳以上の乗務員が事故惹起者であったとしたら「特定診断」の該当者にもなってしまいます。

このような場合、すべての義務診断を受診しなければいけないのでしょうか?

雇い入れ時に義務診断(初任診断・適齢診断・特定診断)が重複したとき、適性診断の受診はどのようにしたらいいのか、いまから、いくつかサンプルを用いて説明していきます。

この法則はぜったいに知っておいた方がいいですよ。

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ケース①.新たに雇い入れた運転者が事故惹起者だった場合

★新入社員★
乗務員名 : 中村さん
年齢 : 40才
事故歴 : 特定診断に該当(前の会社で受診していない)

運転記録証明書を取得した結果、新入社員の中村さんは65歳未満でしたが、事故惹起者に該当者していました。義務診断の条件を見ると、該当するのは「特定診断」「初任診断」になります。

そのため、特定診断と初任診断の両方を受診しなければいけないように見えます。

ですが、両方受診しなくてもいいんです。
どちらを優先すべきかというと…「特定診断」になります。

特定診断を優先させる理由は?

では、なぜ初任診断ではなく、特定診断のほうを優先的に受診することになるのでしょうか?

その根拠は「貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について」に記載されています。

第10条 従業員に対する指導及び監督

6.運転者として新たに雇い入れた者が第2項1号の「事故を引き起こした者」に該当する場合には、同号の運転者のための適性診断として国土交通省が認定したものを受診させたことをもって、同項第2号の運転者のための適性診断として国土交通大臣が認定したものを受診させたものとみなして差し支えない。

同項第2項は「初任診断」を指します。

つまり、特定診断を受けたら、初任診断は受診したものとしてみなすと記載されているんですね。

ケース②.新たに雇い入れた運転者が65歳以上だった場合

★新入社員★
乗務員名 : 鈴木さん
年齢 : 66才
事故歴 : 該当なし

次に新たに入社してきた66歳の鈴木さんを例に紹介していきます。

鈴木さんは、66歳の新入社員なので「適齢診断」と「初任診断」の両方が受診条件と一致しています。そのため「適齢診断と初任診断の2つを受診しなければいけないのでは?」と思ってしまいますよね。

本当に両方受診する必要があるのでしょうか?

結果から先に言うと「適齢診断」の受診だけでOKです。

適齢診断を優先させる理由は?

考え方は、先ほどのケース①と同じです。
優先順位が定められているんです。


根拠は「貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について」に記載されています。

第10条 従業員に対する指導及び監督

7.運転者として新たに雇い入れた者が65才以上である場合には、第2項第3号の運転者のための適性診断として国土交通大臣が認定したものを受診させたことをもって、同項第2号の運転者のための適性診断として国土交通省が認定させたものとみなして差し支えない

ちなみに、同項第2号とは、初任診断のことを指しています。

つまり、「適齢診断を受診したら、初任診断も受診したことにするよ。」という意味なんですね。

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ケース③.新たに雇い入れた運転者が事故惹起者だった場合

★新入社員★
乗務員名 : 田中さん
年齢 : 66才
事故歴 : 特定診断に該当(前の会社で受診していない)

次に66歳の田中さんが入社してきました。

田中さんは、高齢者でかつ特定診断の条件に該当していました。この場合、初任診断・適齢診断・特定診断にすべての条件に一致します。この場合は、3つとも受診させなければいけないのでしょうか?

ここまでくれば、すべて受診する必要がないということはわかりますよね。

その根拠は、「貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について」に次のように記載されています。

第10条 従業員に対する指導及び監督

8.運転者として新たに雇い入れた者が第2項第1号の「事故を引き起こした者」に該当し、かつ、65才以上である場合には、同号の運転者のための適性診断として国土交通省が認定したものを受診させたことをもって、同項第2号及び第3号の運転者のための適性診断として国土交通大臣が認定したものを受診させたとみなして差し支えない。

ちなみに、同項第2号及び第3号とは…貨物自動車運送事業安全規則第10条第2項に記載されています。

第2号 ⇒ 運転者として新たに雇い入れた者(初任運転者)
第3号 ⇒ 高齢者(65歳以上) 

つまり、特定診断を受診させたら「その受診をもって、初任診断と適齢診断を受診したものとしますよ。」という解釈になるのです。2重・3重に受けなくてもいいんですね。

まとめ

今回は、さまざまなパターンをサンプルを用いながら、説明していきました。
簡単にまとめてしまえば…

特定診断 > 適齢診断 > 初任診断

優先順位はこのようになっています。つまり、対象が重複しても、優先順位の高い診断を1つ受診すれば、対象の診断を省くことができるというわけなんですね。

次回は、「特定運転者に対する教育」で、特定運転者かつ高齢者で、さらには初任運転者だった場合、どのような社内教育を実施すればいいのか…について紹介していきたいと思います。お楽しみに!

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