遅刻した時間と残業時間を相殺できるの?

たとえば、あなたの会社に遅刻してきた従業員がいたとします。
その遅刻した従業員がその日、そのまま残業した場合、残業手当を支払わなくてはいけないのでしょうか?

じっさいに働いた時間が少ないから、遅刻した時間と残業時間を相殺して残業手当は支払わないということはできないのでしょうか?

今回、当ブログにこのような質問がありました。

そこで、今回は、遅刻した時間と残業時間を相殺できるか否かについて紹介していきたいと思います。

1.残業手当は、実労働8時間を超えたものが対象

時間外労働に対する割増賃金…いわゆる残業手当は、労働基準法第37条でその支払いについて義務付けされていますよね。

けれど、この残業手当は、あくまでも同法37条に定められた法定労働時間8時間を超えたものについての内容になっています。

さらに、こので言っている8時間は「実労働」を指しています。つまり、労働基準法の労働時間の規制は、実労働時間を対象にした、いわば「実労働時間主義」を取っているというわけなんですね。

ちなみに、この「実労働時間」はどういういことなのかと言うと、使用者の現実かつ具体的な支配下において「じっさいに勤務した時間」のことなので、休憩時間等の時間は除かれるということになります。

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2.遅刻時間と残業時間を相殺することは問題ない

労働者の遅刻、早退、私用外出、組合活動などにより、現実に就労しなかった時間がある場合、これらの時間を除いて通算し、その結果、1日の労働時間が8時間以内であれば「時間外労働にならない」ということになります。

この点については行政の解釈でも昭和29年、基収第6143号において

「法第32条または第40条(労働時間の特例)に定める労働時間は実労働時間をいうものであり、時間外労働について法第36条1項に基づく割増賃金の支払いを要するのは、右の実労働時間を超えて労働させる場合に限るものである」

このようにしています。

つまり、実労働時間が1に1日8時間を超えない限り、遅刻時間と残業時間を相殺することは問題ないと言えるのです。

3.終業時間の繰り下げ等も問題なし

また、相殺するだけでなく、遅刻時間分、終業時間を繰り下げ、残業代を支払わないという形にすることも問題ありません。

行政解釈においても具体的な事案として…

「例えば、労働者が遅刻した場合、その時間だけ通常の終業時刻を繰り下げて労働させる場合には、1日の実労働時間を通算すれば法第32条又は第40条の労働時間を超えないときは、法第36条第1項に基づく協定及び法大37条に基づく割増賃金支払いの必要はない」

としています。

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4.一般的なやり方は?

今回、説明した内容は、あくまでも労働基準法の解釈では可能であるというだけで、じっさい、会社では、遅刻時間と残業時間を相殺するようなやり方を取っていることはほとんどありません。

それよりも、

遅刻は遅刻として給料から差し引く。
残業は残業として所定の割増賃金を支払う。

といった方法を取ることがほとんどです。

5.補足・就業規則の内容によって変わることも

たとえば、就業規則で所定労働時間が7時間30分で、それを超えたら割増賃金を支払う設定にしていた場合は、7時間30分を超えた分から残業手当が必要になるので、↑の説明と異なる部分が出てきます。

まとめ!

今回は、あくまでも労働基準法に基づいたお話をしましたが、じっさいに遅刻時間と残業時間を相殺しているケースはほとんどありません。あくまでも参考までに書いてみました。
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