【車両数が乗務員より圧倒的に多い!】選任運転者数の確保違反に該当しないか不安…

トラック運送事業を行うには【乗務員】が必要不可欠です。

そして、荷主から運賃をもらう以上、安心・安全な輸送を提供しなければいけません。…なので「トラックを運転する免許は持っている。」だけではなく、一定の条件に当てはまる人を乗務員として活用するよう法律では定められています。

この乗務員の条件については、過去の記事で「派遣社員や出向社員、アルバイトをトラック運転手として運転させてもいいの?」でも紹介しました。詳しくは、その記事を見てもらえばと思いますが、簡単にまとめると…

●運転者として常時選任不可の者

(1) 日々雇い入れられる者
(2) 2 ヶ月以内の期間を定めて使用される者
(3) 試用期間中の者(14 日を超えて引き続き使用される者を除く)

以上の条件に該当しない者を乗務員として活用できることになっていましたよね^^

その条件を踏まえたうえで、経営者は「選任運転者の数」について意識しなければなりません。では、この選任運転者数とは、どのようなものなのでしょうか?

今回は、「選任運転者数」について、解説していきます。

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1.法律上の解釈はどのようになっているのか?

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必要な選任運転者数を語るうえで、まずおさえておきたいのが、法律上、どのように書かれているか…です。

選任運転者数に係る法律は、次の3つになります。

①貨物自動車運送事業法 第17条第1項
②貨物自動車運送事業輸送安全規則 第3条第1項・第2項
③貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について

これらを見ると、国が選任運転者数について、どのように考えているのか、わかってきます。それでは、それぞれについて見ていきましょう。

①貨物自動車運送事業法 第17条第1項

貨物自動車運送事業法 第17条第1項
事業用自動車の数、荷役その他の事業用自動車の運転に附帯する作業の状況等に応じて必要となる員数の運転者及びその他の従業員の確保、事業用自動車の運転者がその休憩又は睡眠のために利用することができる施設の整備及び管理、事業用自動車の運転者の適切な勤務時間及び乗務時間の設定その他事業用自動車の運転者の過労運転を防止するために必要な事項

簡単にまとめると「営業して仕事を手に入れるのはいいけれど、仕事量に合った人員を揃えてね。」と書かれています。

特に、人員不足等の理由で、乗務員ひとりひとりに負担を強いて、過労運転させるようなことはダメ…となっています。

貨物自動車運送事業輸送安全規則 第3条第1項・第2項

貨物自動車運送事業輸送安全規則 第3条第1項
一般貨物自動車運送事業者等は、事業計画に従い業務を行うに必要な員数の事業用自動車の運転者(以下「運転者」という。)を常時選任しておかなければならない。

貨物自動車運送事業輸送安全規則 第3条第2項
前項の規定により選任する運転者は、日々雇い入れられる者、二月以内の期間を定めて使用される者又は試みの使用期間中の者(十四日を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)であってはならない。

冒頭でも紹介したように、輸送の安全のために、条件を満たした必要な運転者を揃えたうえで輸送する必要性が書かれています。

その条件を満たした選任運転者を見て「(法律に沿った)運転者数を満たしているか」をカウントしていくことになります。

③貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について

貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用の【第3条 過労防止】に、運送会社が選任すべき運転者数の目安について細かく明記されています。

主に書かれている内容が…

(1)営業所全体に公休日がある場合
(2)営業所全体が無休の場合

この2パターンが紹介されています。

それぞれ異なりますが「運転者数に問題ないのか?」について、その計算式が紹介されているので、非常にわかりやすくなっています。

いまから解説していきますが、貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用は、インターネット上でも公開されているので、気になる人は見てみてくださいね。

(1) 営業所全体に公休日がある場合

たとえば、荷主の休日にあわせて営業所も【休み】としている場合は、いまから紹介する計算方法が参考になります。

1人1 車を原則とすれば、

〔運転者数〕×(7 日-休日数)≧{車両数}×(7 日-休日数)

〔運転者数〕≧{車両数}

この計算方法が使われることになります。

つまり、車両数が10両あったら、運転手も10名以上そろえてね。
…ということになります。

(2) 営業所全体が無休の場合

続いて、車両は無休で稼動し、運転者に週1 回の公休を与えている運送会社は、次に紹介する計算方法を用いることになります。

1 人1 車を原則とすれば、

〔運転者数〕×(7 日-休日数)≧{車両数}×7 日

〔運転者数〕≧1.2(≒7/6)×{車両数}

になります。

例を挙げると、車両数が10両あった場合、運転者数は、1.2倍の12人以上、揃えなければいけない…という計算になります。

ふたつの計算方法を見た感想

どちらのケースでも、営業所が登録している車両数以上の運転者を選任する必要があることがわかります。

うーん…。

運送会社を経営している人から見れば、現実的ではない数字で、キビシイという感想を持った人が多いのではないでしょうか。

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2.運送会社の現実

営業所に登録した車両以上の数を運転者として選任しなければいけない…という解釈になっているようですが、運送会社としては、運賃が厳しいことはもちろんのこと、それ以外にもこの計算方法では対応できない理由があります。

とくに、

①運転者の高齢化に伴い、人員確保が困難
②荷主側の要望や業務等の都合により、さまざまな車両を揃える必要がある。

この2つ以外にも、さまざまな理由はあるかと思いますが、多くの運送会社は、①②が理由で、国が参考として出している計算方法である人員を確保するのは、不可能に近い状況にあります。

3.行政処分はどのようになっている?

国は、必要な「選任運転者数」の目安を出していますが、運送会社が気になるのは「行政処分のときどのように見られるか?」についてではないでしょうか?

まずは、行政処分の内容について見ていきましょう。

●過労運転の防止措置義務違反・必要な員数の運転者確保違反

・初違反…警告
・再違反…10日車
(参照:「貨物自動車運送事業者に対する行政処分等の基準について」平成25年9月25日改正分)

必要な員数の運転者確保違反の項目がありました。

この項目がある以上は、運輸支局が監査を行った場合は、チェックすることは間違いありません。

そうすると、行政が監査した場合、多くの事業所が選任運転者数の確保ができずに「処分されているのでは?」…と私は思っていました。しかし、実際は違います。

最近、監査を受けた事業所の知り合いから話を聞いたところ、参考になる結果が出ていましたので、それを今からお話します。

4.過労運転の有無から総合的に判断されている

知り合いの運送会社は、登録している車両数に対して「人員は足りていない。」状況でした。つまり、先ほど紹介した計算式から導き出した数字よりも運転者数は少なかったのです。

では、なぜ、知り合いの運送会社は「過労運転の防止措置義務違反・必要な員数の運転者確保違反」の項目で処分にならなかったのでしょうか?

どうやら、冒頭で紹介した次の2つの法律が影響しているようです。

貨物自動車運送事業法 第17条
一般貨物自動車運送事業者は…(中略)…事業用自動車の運転者の過労を防止するために必要な措置を講じなければならない。

貨物自動車運送事業輸送安全規則 第3条1
一般貨物自動車運送事業者等は、事業計画に従い業務を行うに必要な員数の事業用自動車運転者を常時選任しておかなければならない。

過労運転の有無が大きな影響を与えている

①運転者の高齢化に伴い、人員確保が困難
②荷主側の要望や業務等の都合により、さまざまな車両を揃える必要がある。

以上の理由で、計算式どおりの人員を必要としない(集めることができない)現実があるので、運輸支局も機械的に見るのではなく「運転者の過労を防止するために必要な措置を講じているか否か(貨物自動車運送事業法 第17条)」で判断しているようです。

つまり、過労運転がかなり見受けられる場合、『事業計画に従い、業務を行うに必要な運転者を確保しなさい。(運転者を雇用して業務負担を少なくしなさい。)』ということで処分されるというわけなんですね。

そのため、仮に選任運転者数が少なかったとしても過労運転がなければ、注意は受けるかもしれないけれど、処分までには至らないことが多いというわけなんですね。

まとめ!

荷主ニーズが多様化している現在、用途によって車両を使い分けている運送会社もあります。そのようなケースで車両数以上に運転者を選任することなんてできませんよね。

そのあたりについては、行政も運送会社の現状をきちんと考えてくれているようです。良かった、良かった^^

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コメント

    • 石田 智教
    • 2018年 2月 09日

    御教示下さい
    A営業所に所属する乗務員がB営業所所属のトラックに乗務することは可能ですか?
    又、可能な場合は点呼はABどちらの営業所で行いますか?

      • kokugo97
      • 2018年 2月 10日

      質問ありがとうございます。

      ココにご質問の回答をまとめてみました。
      参考にしていただければ幸いです。

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