運行管理者が3分の1以上の点呼をしなければいけないが…その解釈は?

選任された運行管理者だけでなく、補助者も活用しながら点呼執行をしている運送会社も多いと思います。

運行管理者試験の勉強をしているとき「運行管理者が3分の1以上の点呼執行をしなければいけない」ということを覚えましたが、じっさいに運行管理者が3分の1の点呼執行のカウントはどのようにすればいいのか、わからないという人も多いのではないでしょうか?

また、運送会社が「運行管理者が3分の1以上の点呼執行をしているか否か」判断するとき、どのくらいの期間を目安に判断するのか迷うこともあるかと思います。

そこで、今回は、運行管理者の点呼執行のカウントの数え方と期間についての解釈について紹介していきたいと思います。

[quads id=1]

1.運行管理者が3分の1以上行わなければいけない根拠

まず、法律上、どのように書かれているのかおさらいしてみましょう。

貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について」の第7条点呼(9)に点呼執行について記載されています。

(9) 第18条第3項の規定により補助者を選任し、点呼の一部を行わせる場合であっても、当該営業所において選任されている運行管理者が行う点呼は、点呼を行うべき総回数の少なくとも3分の1以上でなければならない。

このように、冒頭で紹介したように、法律上、、運行管理者は、総回数の3分の1以上の点呼執行をしなければならないと記載されています。逆にいえば、運行管理者補助者は、総回数の3分の2以下の点呼執行をすることができるというわけです。

しかし、この記載内容だけでは疑問点2つ出てきます。

① その期間とは?
② 総回数とは?(カウントの仕方は?)

ですよね。

つまり、総回数(分母)とカウント(分子)が曖昧なので、3分の1以上点呼執行しようとしても、いまの点呼執行が違反なのか?それとも法令を順守しているのか?わかりにくいです。

2.期間について

まず、「期間」について考えてみましょう。

「総回数の3分の1以上」と言われても、それは、点呼記録簿の保存期間である1年間、すべてがカウント対象になるのか?それとも1日単位なのか?分からないと思います。

その答えを知るうえで、参考になる記事を見つけましたので紹介します。
まずは↓の記事を見てください。

運管者と補助者がこなせる点呼の割合についても理解は十分に浸透しておらず、「(運管者が3分の1以上、補助者が3分の2までというのは)毎日の点呼の割合なのか、その辺りのことがわからない」との声も現場からは漏れ聞こえてくる。前出の専門官は「あくまで監査段階での話になってしまうが…」と前置きしながら、「要は監査対象となる期間であって、例えば1か月とかのスパンで判断することになる。1日単位で見ることはない」と話している。(物流ウィークリーの記事より)

物流ウィークリーの記事では、監査部門の専門官は「1か月単位で判断する」と明言しています。

では、何を根拠に運輸支局の監査部門の専門官は「1か月単位で判断する」と取材に答えているのでしょうか。それにはきちんとした根拠があるのです。

じつは、「運行管理者証返納命令基準の解釈及び運用通達」(平成19年5月1日付け国自貨第14号)において、

2(4)(エ)中「機会が少なく」とは、監査等において調査した結果、 病気等による特段の理由が無いにもかかわらず、1月の間において、点呼簿上点呼の実施回数が3分の1未満であることが確認できた場合又は一部の点呼簿が存在せず点呼の実施回数が3分の1以上であることが確認できない場合とする。

と記載されています。

≪「機会が少なく」とは、監査等において調査した結果、 病気等による特段の理由が無いにもかかわらず、1月の間において≫

つまり、点呼執行の総回数は「1カ月単位」でみるというわけです。

※支局確認済み

[quads id=2]

3.総回数及びカウントの数え方について

運行管理者と運行管理者補助者のカウントは1か月単位で区切り、カウントすることはわかりました。つまり、1か月の総回数の3分の1以上運行管理者が点呼執行しておけば、法的に問題ないということになります。

ですが、かんじんのカウントの数え方はどのようにしていけばいいのでしょうか?

  • 1人に対して点呼執行が1カウント?
  • 1回の点呼執行が1カウント?

イロイロな数え方や解釈があって迷うことだと思います。

答えは「1回の点呼執行で1カウント」が正解です。

では、例を出します。

Aさん(長距離) 乗務前点呼 - 中間点呼 - 乗務後点呼

Bさん(長距離) 乗務前点呼 - 中間点呼 - 乗務後点呼

Cさん(地場) 乗務前点呼 - 乗務後点呼

Dさん(地場・夜間) 乗務後点呼

※Dさん前日の夜、乗務前点呼して出発。昼前に1日終了

さて、この場合の点呼執行の総数は何回なのでしょうか?

正解は、

Aさん 3回

Bさん 3回

Cさん 2回

Dさん 1回

計 9回となります。

4.毎日、3分の1以上運行管理者が点呼執行しなければいけないのか?

さきほどの例では、1日に…

点呼回数 9カウント (3分の1⇒3カウント)

実施しています。

つまり、運行管理者が3回以上点呼執行すれば「条件:3分の1以上の点呼執行」をクリアすることになります。ということは、運行管理者が毎日、3分の1以上点呼執行をしなければいけないのか?という疑問が生まれてくるのではないでしょうか。

じつは、「1か月単位」なので、毎日、運行管理者が3分の1以上点呼執行をする必要はありません

つまり、運行管理者の点呼執行が3分の1未満の日があっても、月単位で運行管理者が3分の1以上点呼執行さえしていれば問題ないということになるんですね。これであなたも充実した点呼ライフ?(笑)ができるのではないでしょうか?

5.巡回指導や行政監査ではどのように見る?

補助者による点呼執行が3分の2を超える場合、行政監査はどのように見るのでしょうか?

じつは、現行の行政処分基準に係る処分量定に該当する事項は「ありません」

そのため、たとえ、違反があったとしても、それだけでは巡回指導では「違反」としてではなく「指導」扱いになるそうです。

ただ、行政監査においては、3分の2を超えた補助者の点呼執行は「不適切」として扱われ、点呼の実施違反に該当する可能性があります。

まとめ!

極端な話、乗務前(後)点呼、いずれかを運行管理者が点呼執行していれば、それだけで3分の1を上回ることになります。

そのため、運行管理者が点呼執行の業務を放棄しない限りは、点呼執行回数の3分の1を下回るケースはほとんどないかと思われます。

[hana-code-insert name=’ad3′ /]