過労運転は取り締まっているの?

「過労運転ってどうやって取り締まるの?」
このような質問をいただきました。

規制緩和後、トラック業界は長時間、稼働しなければいけないほど低運賃に悩まされています。経営者も管理者もかなり頭を痛めています。だからといって、過労運転の強要するのはNG。過労運転は、乗務員そして事故に巻き込まれる地域の住民の尊い命を奪ってしまうからです。

今回は、過労運転はどのように取り締まられるのかについて紹介していきます。

1.巡回指導は期待できない

事業法において、定期的に適性化指導員が運送会社に巡回指導にまわることになっています。そこで、運転日報や点呼記録簿、運転記録計等の書類を見て、過労運転を指摘するのですが、適性化指導員の仕事は、あくまでも【指導】です。

行政機関(警察や支局・労基)のように、運送会社を罰する権限を持っているわけではありません。

だから、極端な話をしてしまえば、適性化事業実施機関は、運送会社に問題点を指導・アドバイスし、リスクをいまいちど再認識してもらうだけ…というわけなんですね。

一応、過労運転が確認された場合、「過労運転を改善して下さい。」といった改善文書が送付されてきます。ですが、罰則までは至らないので、適当に改善したと報告して終了。巡回指導が終わってしまえば、事業者はまた元に戻ってしまう「いたちごっこ」が続いてしまっているんです。

もちろん、適性化指導実施機関の存在に意味がないわけではありません。数年前と比べれば、荷主企業がうるさくなったこともあって、私のまわりの運送会社も帳票類をきちんと揃えています。もしも、彼らがいなくなれば、本当に秩序もクソもなくなるのは間違いありません。ただ、乗務員の視点からすると、過労運転を改善してくれる機関ではないということです。

2.警察は期待できない

(道路交通法第66条第一項)

「疲労、病気、薬物の影響などにより正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない」

道路交通法にて正常な運転ができないおそれがある状態で運転してはいけないと書かれています。ですが、これ。薬物や病気ならともかく、疲労だけでは余程のことがない限り、判断が付きません。

私も電車に乗った他の乗客を見て、誰が過労状態か見抜くことなんてできません。それと同じです。

だから、あなたが過労運転をしていても、決して警察は過労運転があると判断してくれないのです。過去の事例を見ても、居眠り運転などで大事故などが発生しない限り、企業を取り締まることはないんですね。(参考ニュース⇒http://www.sankei.com/west/news/151015/wst1510150073-n1.html

3.支局は期待できない

事業法 第17条1項 … 事業者は、運転者の過労運転を防止するために必要な措置を講じなければならない。

安全規則 第3条4項 … 事業所は、国土交通大臣が告示で定める基準に従って、運転者の勤務時間及び乗務時間を定めなければならない

事業法には、このように過労運転を防止する内容が記載されています。だから「運輸支局に連絡すれば支局が監査に入ってくれるのでは…!」と思うかもしれません。

甘いです。
大甘です。

行政は警察もそうですが、基本、証拠がなければ動いてくれません。点呼記録簿・運転日報・運転記録計などのコピーを提出できるくらいの証拠書類が必要です。しかも、証拠書類を揃えたからといって確実に動いてもらえるわけでもなく、電話での口頭注意で終わる可能性もあります。

私の知り合いの運送会社も、とある乗務員から運輸支局に内部告発されたけれど、「適性化指導員が来るだけで終わった。」と言っていました。私の体験談ではないので真偽はわかりません。ですが、乗務員からの内部告発から行政監査になった件数はかなり少ないのが実情のようです。

4.労働基準監督署が最後の砦?

いままで、さまざまな行政機関を紹介してきましたが、労働時間といえば「労働基準監督署」でしょう。じっさいに、臨検などで運送会社に調査に入っているケースを見かけます。

ハッキリ言って労働時間を専門に扱っているところなので、警察・支局よりも動いてくれます。ただし、ここでも証拠がなければ動いてくれません。

※ちなみに、労働基準監督署が違反を発見すると、相互通報制度により支局にも情報が流れます。

まとめ!

イイ加減なことを書けないのであえて抽象的に書きました。だから、カテゴリも「独り言」になっています。

ただ、基本は重大事故がなければ行政は動いてくれないんですね^^;

今回は乗務員の視点から記事を書きましたが、トラック運送業界は適正な運賃がもらえなさすぎです。そして、規制緩和により会社が乱立しすぎです。役人もこの事実に目を背けないで、真剣に向き合うときが来ていると私は思います。

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