前回に引き続き、巡回指導の調査項目の解説を行っていきます。
今回は、巡回指導の調査項目「1(2)営業所に配置する事業用自動車の数に変更はありせんか?」についてですが、この調査項目では、主に車両の増減等について確認されます。
ですが、頻繁に車両を移動する運送会社は、届出や書類管理が後回しになりがち。その結果、行政監査や巡回指導で指摘されることも少なくありません。
運送会社としては、「短期間だから…」「すぐに届出しようと思っていたのですが…」と思うかもしれませんが、法令違反として大きなリスクを招きます。
本記事では、車両配置管理の基本ルールや、よくあるトラブル事例、実務での具体的な対応策を詳しく解説します。
巡回指導・行政監査で確認されるのは?
この調査項目では、運送会社が支局に届け出している営業所の配置車両の内容について確かめられます。
主に確かめられるのは大きく分けて2つ。
①種別(普通車、小型車、トラクタ、トレーラなど)
②台数
ですね。
1. 事業用自動車の実態を確認
巡回指導では、支局と情報を共有している「事業者台帳」をもとに、運送会社が保有している「事業計画変更届出書」や「車両台帳」、「自動車検査証」を基に、営業所に配置されている車両に問題ないか確認されます。
もちろん、書類だけでなく書類の内容が正しいのか、若干ではありますが”ヒアリング”も行われます。
では、どのようなところを確認しているのでしょうか?
以下がその内容になります。
- 営業所ごとの配置車両が届出内容と一致しているか
事業計画で届け出た内容と、実際に稼働・配置している車両に差異がないかを確認します。後日、(別記事でも紹介しますが)配置車両が一致していても、稼働数と乖離があれば、他営業所や他法人への貸し出しを疑われます。 - 事業用以外の車両が含まれていないか
営業所に配置されている車両以外の車両を使用していないか、車両データをもとに確認されます。 - 種別に問題ないか?
支局への届出では、普通5小型1の計6両で届出しているにもかかわらず、実際に確認してみると普通4小型2の計6両だった。このように届出した種別の内容が異なる場合は違反に該当するので注意が必要です。
2. 営業所間での車両移動
営業所が複数ある運送会社の場合、自社の営業所間で車両を移動させることがあるかと思います。
同じ法人でも営業所の配置車両が変わる場合、事業計画変更届出書の提出が必要です。無届出での移動は、法令違反となるだけでなく、トラブルの原因にもなります。
確認すべきポイント
車両配置の正確さを維持するためには、定期的な確認作業が欠かせません。ここでは、確認すべき具体的なポイントを解説します。
a.変更があれば必ず届出を
事業計画の変更が発生した場合、以下のような手続きを行う必要があります。
それぞれの手続きと期限を明確に把握し、漏れがないようにしましょう。
変更内容 | 必要手続き | 管轄運輸支局への対応期限 |
---|---|---|
車両数の増減 | 事業計画変更届出書の提出 | 変更後速やかに |
営業所間での車両移動 | 事業計画変更届出書の提出 | 移動前に |
他社車両(トレーラ)の使用 | 協定書の締結 | 使用開始前 |
車両の種別変更(普通車→トラクタなど) | 事業計画変更認可申請書の提出 | 変更後速やかに |
b.変更手続きを怠った場合のリスク
手続きを怠ると、法令違反や行政処分のリスクが生じます。特に以下のケースでは、監査時に指摘を受けることが多いため、注意が必要です。
- 無届出での営業所間車両移動
営業所間で車両を移動させる場合、事業計画変更届出書の提出は必須です。たとえ1台であっても、届出がなければ違反とみなされる可能性があります。 - 他社車両の無許可利用
他社の車両を利用する際、協定書の締結をせずに使用する行為は「白トラ利用」や「名義貸し」とみなされます。このようなケースでは、厳しい処分が科されることがあるため、十分な注意が必要です。
実務上のトラブル
届出内容と現状が一致しない場合、監査や調査の対象となることがあります。
この際、必要書類が不備であれば、指導や罰則の対象となる可能性が高まります。特に、車両台帳や自動車検査証の不備は頻繁に問題視されるため、日常的な管理が重要です。
実例から学ぶ車両配置トラブルとその問題点
営業所に配置される事業用自動車の管理が不十分だと、様々なトラブルが発生し、業務運営に大きな影響を与える可能性があります。
ここでは、実際に業界で起きたトラブル事例を取り上げ、それぞれの発生状況と問題点を掘り下げて解説します。
トラブル事例1:無届出で営業所間の車両移動を実施
発生状況
ある中堅運送会社では、繁忙期にA営業所の車両を無届出でB営業所に移動させました。
当初、短期間の対応と考えたため、届出が不要と判断しましたが、運輸局の定期監査で(支局が管理する)台帳と実際の車両配置が一致していないことが判明しました。
これにより、無届出の車両移動が明るみに出ました。
問題点
- 車両移動の際に必要な事業計画変更届出書を提出していなかった。
- 移動が短期間であったとしても、届出が法令で義務付けられていることを理解していなかった。
- 車両台帳の更新が適切に行われておらず、監査に備えた準備が不十分だった。
トラブル事例2:他社車両の利用で法令違反
発生状況
運送業務が急増したある会社は、他の会社と車両(トレーラ)相互使用協定書を結ばず、他社のトレーラを使用していました。
問題点
- 他社車両を使用する際の法定手続きを怠ったことが原因。
- 協定書の締結や届出をしないまま運行したことで、法令違反とみなされた。
トラブル事例3:増車後の届出漏れ
発生状況
ある運送会社では、営業所に新しい車両を追加しましたが、事業計画変更届出書を提出せずに業務を開始しました。これが原因で監査時に指摘を受け、行政指導の対象となりました。
なかには、ディーラーの担当者に届出を任せていたものの、担当者が「忘れていた」というケースが過去にありましたので、支局への届出の控えをもらわない限り、届出が終了していないと認識したほうがいいです。
問題点
- 事業計画変更届出書の提出を忘れるという基本的なミスが発生。
- 自動車検査証の情報が事業計画と一致しておらず、管理体制の不備が露呈。
- 書類の準備が遅れ、指導対象となったことで監査対応に大きな時間が割かれる結果に。
トラブル事例4:車両台帳の情報が不一致
発生状況
点呼記録簿や運転日報を見てみると、適正化事業実施機関や行政が持っている車両の内訳と異なる結果に…。ヒアリングが行われた結果、他社や他営業所の車両を使用していることが発覚してしまいました。
担当者の入れ替わりが激しい事業所では「前任者が行っていたと思っていた…。」というケースが多いです。特に運送会社では、担当者が突然退職した後、業務を引き継ぐことが多いので、注意が必要です。
問題点
- 他営業所や他社の車両番号を記載した点呼記録簿や運転日報を見て不正使用が発覚。
- 管理体制が不明確で、車両担当者が各営業所の車両情報を正確に把握していなかった。
- 不一致が指摘されたことで、監査対応に追われ、本来の業務に支障が生じた。
トラブル事例5:短期間の移動でも違反認定
発生状況
ある会社では、A営業所からB営業所に車両を1週間だけ移動させましたが、この短期間の対応に対しても事前届出を行わず、監査で指摘を受けました。
「短期間だからバレないだろう」
「届出が面倒くさい」
「臨機応変に事業を行わなければ対応できない。」
現場にいる人なら誰しも感じることでしょう。ですが、行政監査で同様のことを話しても理解してもらえないのが現実です。
問題点
- 短期間であれば届出が不要という誤解が原因で手続きを怠った。
- 管轄地域での特例や届出義務についての知識が不足していた。
- 運行管理者が移動手続きの必要性を十分に認識していなかった。
コメントを残す