労働基準監督署の臨検が運送会社をターゲットにしていることもあって、どこの時間から労働時間がはじまり、どこで労働時間ではなくなるのか…ということが気になってしまいますよね。
つい先日、とある運送会社の役員の方から相談を受けました。
「最近、従業員から作業開始前後の着替えの時間は労働時間になるのではないか?…という話が出ているが、法的にはどのようになっているのか?」といった内容でした。
そこで、今回は【作業開始前後の着替えは労働時間に含まれるのかどうか】について、紹介していきたいと思います。
1.過去の判例が判断基準になる
じつは、着替え時間が労働基準法上の労働時間に含まれるかどうか…という問題は、以前からずっとあります。そして、いまも同じような問題を会社が抱えている…というわけです。
では、まず法律上のお話からしますね。
平成12年3月9日付に、最高高裁判所がひとつの判例を出しました。
「労務提供義務と不可分一体のものとしてそれ自体を義務付けられた作業服・安全保護具等の着装を事実上拘束された状態で従事するものであるから、右着装の開始により、労働者は使用者の指揮監督下に入ったものと認めることができる」(三菱重工長崎造船所事件)
この判例が判断基準になります。
つまり、どういうことかというと、着替え時間が労働時間に該当するのは…
1.作業等に必要不可欠な時間で
2.使用者の直接的支配下にある時間
このような場合は該当するということになります。
2.厚生労働省の見解
平成29年1月20日に厚生労働省も過労死対策のひとつとして「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の中で次のような見解を出しています。
「使用者の支持により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業所内において行った時間」
以上の時間については労働時間として扱う…としているんですね。
3.義務付けか否かで労働時間か決まるが…
作業着の着替えが労働時間に含まれるかどうかについては「義務付け」がひとつのキーワードになります。少なくとも、会社が着用を義務付けている制服等への着替えは労働時間となるというわけです。
逆に、そうではない労働者の自由裁量による任意の作業服への着替えについては、労働時間として考える必要はないということなんですね。
ただし、じっさいには、判断をすることが難しい微妙なケースが多いため、作業着の着替えが労働時間か否かについては、裁判で争われるケースも多いです。(例:東京高裁:平成25年11月21日判決「オリエンタルモーター事件」等)
4.厚生労働省のガイドラインでは…?
厚生労働省のガイドラインでも、客観的な評価にあたっては、
「使用者の指揮命令下に置かれていると評価されるかどうかについては、労働者の行為が使用者から義務付けられ、または、これを余儀なくされた等の状況の有無等から、個別具体的に判断されるものである。」
としています。
つまり、あくまでも【個別具体的な判断】になると強調しているんですね。
この点は、留意しておいたほうがいいです。
結局、個別具体的に…ということなので、最終的には、裁判所の判断を求めざるを得ないというわけには変わりがないというわけなんですね。
補足
なお、このガイドラインでは…
① 使用者の指示があった場合には、即時に業務に従事することを求められていて、労働から離れることを保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)
② 参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間
これらも、労働時間として扱わなければならないとされていますので、気を付けておきたいところです。
まとめ
過去の判例はいろいろあるものの、結局は、個別具体的な判断をするため、問題になった場合は、裁判所の判断にゆだねなければいけない状態のようです。参考になるような参考にならないような記事になってしまいましたが、気になる人はじっくり見てくださいね^^
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2年前に労基にて確認しました。
服を5分で着替える人。お話をしながら15分で着替える人。色んな方がいます。
日本人の奥ゆかしさというか、真面目さはどこに行ったのでしょう。
ひと握りの心無い経営者の行動によって、こんな事を真面目に議論しなければならない時代になり、中途半端な欧米文化に乗っかる世人。
人間はロボットじゃないのに。
悲しい時代です。