トラックの杜│一般貨物運送事業に役立つ情報をブログでお届け!

派遣社員や出向社員、アルバイトをトラック運転手として運転させてもいいの?

「当社の乗務員不足もかなり深刻だ。」
「…とはいえ、取引先からの依頼をなんとしてでもこなしたい。」

だったら…【派遣社員やアルバイトを使用すればいいのでは?】と思った人も多いと思います。

けれど、ふと冷静に考えると、派遣社員や契約社員をトラック運転手として利用するのは「法律に抵触するのでは?」と別の悩みが発生するのではないでしょうか?

そこで今回は、運送会社の要望にお応えして「派遣社員や出向社員・アルバイトをトラック運転手として使用してもいいのか?」について解説していきたいと思います。

1.いまの運送業界は40代でも若いドライバーに含まれる状態

いまトラック運送業界で深刻な問題になっているのが”トラック運転手の確保”ですよね。どこの業界も人手不足と言われていますが「運送会社は他の業界よりも深刻な状態」です。

私の知り合いの運送会社の社長もトラック運転手を募集しても応募がなく、以前から勤務している職員だけで凌いでいるので「ドライバーさんの平均年齢がかなり高い」と嘆いていました。

また、以前、知り合いのある運送会社の配車担当者とお話しする機会があったのですが「最近、若い新人が入って助かったよ」と話題に上がったので、詳しく話を聞いてみると、その新人ドライバーの年齢は、なんと40代。

当時の感覚ではベテランの年齢ですよね。
いいオッサンです(笑)

でも、いまや”若い運転手”は、40代も含まれるほど高齢社会になっているのですね。

私がお伺いしたことのある、とある運送会社の乗務員の平均年齢を見ると、社長の息子さん以外、なんと全員、60代以上。

再雇用制度でなんとか運転手をキープしているところもありました。

「数年後には、従業員がいなくなるのでは…?」と心配になりますが、将来よりも目先の人数を揃えることで精いっぱいの運送会社ばかりなんですよね。

…とはいえ、年配の乗務員にもメリットがあって、荷主企業の担当者からも厚い信頼がある乗務員なので、むしろ安心して仕事を任さられるのですが…。

それでも、将来を考えると楽観できない状況にあります。

1.派遣社員や出向社員、アルバイトでも運転できる

正社員の乗務員だけで仕事をこなすことができない場合、派遣社員や出向社員・契約社員をトラック運転手として働かせることはできるのでしょうか?

ひょっとしたら、法律に違反しているかどうかわからないけれど、利用しなければ、仕事ができないので、恐る恐る利用している運送会社もあるかもしれません。

だから、先に答えから発表しちゃいます。

じつは派遣社員や出向社員、アルバイトでも運転させることができます。

一般貨物自動車運送事業の営業車両に乗務できる条件とは?

ひょっとしたら、派遣社員や出向社員をトラック運転手として活用できることは、知っている人もいたかもしれません。

ですが「アルバイトや派遣社員でも乗務員として活用できること」についてはと驚かれた人も多いんじゃないでしょうか。

緑ナンバーのトラックに乗れる人は、じつは、そんなに条件は多くないんです。
法律の内容を見てみましょう。

運転者として常時選任できないもの
①日々雇入れられるもの
②2月以内の機関を定めて使用されるもの
③試みの試用期間中のもの(14日を超えて引き続き使用されるにいたったものを除く)

一般貨物自動車運送事業の法律では、このように書かれています。

つまり、この条件さえクリアすれば、トラック運転手として運転させてもいいというわけなんですね。

2.労働条件通知書の作成を忘れずに

私の知り合いの運送会社では「労働条件通知書で2ヶ月以上雇用します。」と記述をすることで、きちんと事業法の条件をクリアさせていました。

アルバイトや契約社員の場合、巡回指導や運輸支局の行政監査などで、雇用関係についてヒアリングをするかもしれませんが、労働条件通知書を見せれば、まったく問題ありません。

労働契約時の明示義務
労働基準法は、労働者の雇入れに際し、使用者は労働条件を書面により明示すべきことを義務づけています。
(労働基準法第15条)

労働条件通知書の様式は、トラック協会のHPで公開されているのでダウンロードすればいいと思います。

私が探したところ、「佐賀県トラック協会」で発見しましたので、まだ、様式がないという人は手に入れておきましょう。

>労働条件通知書をダウンロード(佐賀県トラック協会)

3.教育記録や健康診断、適性診断など忘れずに行う

事業法の条件にあった乗務員(契約社員・派遣社員・出向社員など)でも、トラック運転手になれますが、教育記録簿や適性診断の受診を欠かすことはできません。

乗務する前には、適性診断、運転記録証明書などを取得することはもちろんのこと、乗務員に対する年間教育なども実施しなければいけません。

正社員以外に適性診断等の教育を実施していない運送会社も多いので、この点は、特に注意しなければいけません。

4.請負や名義貸しはダメ

それでは請負や名義貸しはどうでしょうか?

4-1.名義貸し

まず、名義貸しですが、一般貨物自動車運送事業では、”名義貸しが禁止”なのは、なんとなくわかると思います。貨物自動車運送事業輸送安全規則でも次のように書かれています。

(名義の利用等の禁止)

第二七条 一般貨物自動車運送事業者は、その名義を他人に一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車事業のため利用させてはならない。

2 一般貨物自動車運送事業者は、事業の貸渡しその他いかなる方法を持ってするかを問わず、一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業を他人にその名において経営させてはならない。

このようになっています。

4-2.請負

では、請負はどのようになっているのでしょうか?

さきほど、ドライバーの条件として、

運転者として常時選任できないもの
①日々雇入れられるもの
②2月以内の機関を定めて使用されるもの
③試みの試用期間中のもの(14日を超えて引き続き使用されるにいたったものを除く)

以上が条件となっていると紹介しましたが、①~③いずれも、事業所が直接雇用をしていることが原則です。(正社員・契約社員など)

ただし、例外があって「会社⇒労働者」と同じように、会社から労働者に対して、指揮命令権がある場合(出向・派遣など)は乗務してもいいというわけなんですね。

労働者派遣法第2条第1号

労働者派遣とは、「事故の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないもの」をいう。

請負は、請け負った業者や個人が契約を結び、作業の完成についてすべて責任を負うことになります。つまり、直接指揮命令関係、雇用関係にないため、「他人」ということになります。

他人には、緑ナンバーを乗務させることはできないため、「請負」はできないというわけなんですね。

4.日雇い労働者に乗務させたときの処分が重くなった

平成25年に自動車運送事業者に対する監査方針・行政処分等が改正され【点呼簿がない・運行管理者・整備管理者がいない・定期点検をしていない】場合、事業停止30日になるということは知っている方も多いのではないでしょうか?

北海道の事業者が処分されたのは、記憶に新しいですよね。

でも、それだけではありません。じつは、国土交通省は、ちゃっかりと「日雇い運転者の選任禁止違反」の処分量定を引き上げています。

人材不足の中、運転手の確保は頭を悩ませるところですが、だからこそ、選任運転者には気をつけたいところですね。

5.巡回指導では、次の書類が確認される

それでは、出向社員・派遣社員・契約社員の場合、巡回指導などでは、どのような書類が提示されるのでしょうか?

などになります。

運転者として選任しても問題ありませんが、正社員以外の運転者は、これら契約書で「日々雇い入れの者」「2か月以内の期間の臨時の者」「14日以内の使用期間の者」に該当しないか確認されるというわけなんですね。

また、社会保険等の保険関係でも、出向・派遣などは重要になってきますので、かならず提示を求められると思います。

まとめ!

出向社員・派遣社員・契約社員を使用できることについては、適正化事業実施機関・運輸支局等の機関に確認したうえで掲載しています。

…なので、恐る恐る利用する必要はありません。

彼らをトラック運転手として利用したい場合は、運転者としての条件を満たしたうえで、堂々と使用しましょう。

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