遠隔点呼とIT点呼の違いとメリット・デメリットについてまとめてみた!

「遠隔点呼」が令和4年4月1日から申請スタートになりました。
国土交通省のリーフレットや物流関係のニュースでご存知の方も多いと思いますが、パッと見た感じ、「いままでのIT点呼とどこが違うのか?」と疑問に感じた人もいるのではないでしょうか?
そこで、今回は、遠隔点呼とIT点呼の違いをわかりやすくするために、遠隔点呼のメリット・デメリットを紹介していきたいと思います。
1.遠隔点呼とIT点呼の範囲は類似
遠隔点呼の特徴については、国土交通省が発行しているリーフレット「遠隔点呼が実施できるようになります」にまとめられています。
遠隔点呼ができる範囲がいままでの「IT点呼」と、どのように違うのかわからない…と感じた人もいるかもしれませんが、じつは、IT点呼とほとんど変わりません。
営業所ー車庫間

営業所(車庫)ー車庫間のIT点呼については、以前から、たとえGマークを取得していなくても、①過去3年間、重大事故・点呼に係る行政処分を受けていない、②巡回指導の評価がD・E以外であることなど、一定の要件を満たしていれば行えていました。
遠隔点呼でも「営業所(車庫)ー車庫間」は行うことができます。
営業所ー他の営業所・車庫間及びグループ企業
「営業所(車庫)ー他の営業所(車庫)間」については、IT点呼も遠隔点呼も、その範囲はあまり変わりません。
ただ、若干、異なる点があります。
「遠隔点呼」では、新たに、グループ間(100%株式保有による支配関係にある親会社と子会社又は、100%子会社同士)が加わりました。(IT点呼ではできません。)
※逆に、IT点呼には遠隔点呼にはない「遠隔地IT点呼」(長距離輸送に特化した点呼方法)があります。
2.遠隔点呼のメリット
「遠隔点呼」は、次の点についてメリットを持っています。
- Gマークが必要ない
- 連続する16時間を意識しなくても良くなった
- 更新手続きをしなくても問題ない
- 情報を共有しやすい
「遠隔点呼」は、IT点呼でデメリットだと感じていた点をカバーしているので、運送会社によっては「遠隔点呼の方がいい」と感じるケースもあるかと思います。
①Gマークが必要ない
従来、IT点呼は「営業所ー他の営業所」で行う場合、必ずGマークの取得が必要でした。
ところが、この条件が厄介で「Gマークの審査に落ちた(更新を忘れた)」「第一当事者による重大事故を起こした」場合は、Gマークの資格を失ってしまいます。
つまり、
Gマークの資格を失う = 即IT点呼の機器が使用不可
なので、とくに保有車両の多い大手運送会社は、車両数が多くなればなるほど事故の発生確率が高まるので、この「第一当事者による重大事故」には頭を悩ませていたと思います。
なにしろ、IT点呼の機器を投資したにもかかわらず、重大事故が起きてしまえば、Gマークを失うだけでなく、IT点呼機器が使用できなくなってしまうからです。
その点、遠隔点呼は、いきなり投資が無駄になることはありません。
②連続する16時間の条件がなくなった
IT点呼では「連続する16時間」の条件がありました。
例えば、IT点呼を実施するとき、支局に届出する必要があるのですが、IT点呼を行う時間帯の欄に「16時から翌8時(計16時間)」など期間を設ける必要があります。
ところが、遠隔点呼では、この連続する16時間の条件がなくなりました。これは凄い変化です。
なぜ、これがすごい変化なのか…というと「丸1日、IT点呼で対応してもOK」という解釈になるからです。
出庫 | 帰庫 | |
運転者A | 6:00 | 15:00 |
運転者B | 9:00 | 17:00 |
運転者C | 10:00 | 22:00 |
運転者D | 3:00 | 14:00 |
従来のIT点呼では、連続する16時間を、例えば、16時から翌8時に設定していた場合、赤の太文字の時間帯は、連続する16時間の範囲外なので、運転者が所属する営業所の運行管理者等が対応せざるを得ませんでした。
ところが、連続する16時間が「遠隔点呼」で撤廃されたことによって、運行管理者に1日休みを与え、IT点呼のみで対応するということが可能になったわけなんですね。
もちろん、限度はあります。
「遠隔点呼」も「IT点呼」も運転者が所属する営業所の運行管理者等(運行管理者又は補助者)との対面点呼が行われたものとして扱う
このルールが適用されますが、遠隔点呼及びIT点呼は、運転者が所属する営業所の運行管理者等が点呼を行われたものとして実施したものとは見なされません。
つまり、運転者が所属する営業所の運行管理者は、月単位で1/3以上は実施しなければいけない(遠隔点呼・IT点呼・補助者による点呼が月単位で2/3を超えてはならない)ので、すべて、遠隔点呼で点呼執行することはできない…という解釈になります。
注意してください。
③更新手続きをしなくても問題ない
形骸化されているかもしれませんが、本来、Gマークを更新するたびに、Gマークの認定番号も変わります。
なので、そのたびに「IT点呼に係る変更届出」をしなければいけません。
ですが、「遠隔点呼」はGマークの有無は関係ないので、頻繁に変更届出をする必要はありません。
④情報を共有しやすい
「遠隔点呼」は、機器・システムの条件が厳しいです。
逆に言えば、「遠隔点呼」では、情報はデーターベース化される・共有フォルダ等に保存されていますので、PCを見れば、すぐに情報を閲覧できる・共有しやすいメリットがあります。
ところが、IT点呼の場合、
点呼実施後、速やかに(原則、翌営業日以内とする。)、その記録した内容を被IT点呼実施営業所の運行管理者等に通知し、通知を受けた当該運行管理者等は、IT点呼実施営業所の名称、IT点呼実施者の名前及び通知の内容を点呼簿へ記録し、保存すること。
このようなルールのため、IT点呼を実施した営業所から、後日、点呼記録簿がFAX送付され、営業所間で情報を共有している運送会社もありました。
「遠隔点呼」では、紙による共有、点呼前にメール等での共有は認められていません。システムで共有されているので、運行管理者が情報を確認しやすくなると思われます。
2.遠隔点呼のデメリット
遠隔点呼のデメリットを上げるとすれば、
①長距離輸送では使いにくい
②機器が高額
になります。
①遠距離輸送では使いにくい
IT点呼には「遠隔地IT点呼」というものがあります。
長距離輸送など、営業所(車庫)から離れた遠方の地(運行上やむを得ない場合)での乗務開始・中間及び終了点呼は、本来、電話で実施しなければいけないのですが、国に届出をすれば、IT点呼できるシステムです。【遠隔地IT点呼】
しかし「遠隔点呼」では実施できません。
※Gマークを取得していれば「遠隔地IT点呼」の届出はできます。
つまり、遠隔点呼は、早朝・深夜帯に運行している地場向けのシステムだと言えます。
②機器が高額
「遠隔点呼」のもうひとつの欠点は…使用する機器・システムが高額だという事です。
IT点呼の機器・システムだけでも高額だったのですが、遠隔点呼では、さらに「運転者の前進等を撮影するための監視カメラの設置」「生体認証機能」などが必要です。
当然、IT点呼よりも環境を整えるには高額な投資が必要になります。
残念ながら、しばらくは大手運送会社しか導入できないものと思われます。
まとめ!
IT点呼と遠隔点呼は、似ているようで異なります。
全体的なイメージとしては、遠隔点呼は、営業所を複数持った、早朝・深夜帯のある地場の運送会社に大きなメリットがあるように感じました。
新しくできた制度なので、今後、IT点呼のように対象拡大していくかもしれません。
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