平成29年11月4日から【標準貨物自動車運送約款(以下「運送約款」)】が改正されますよね。
「(運行管理者一般講習などで)耳にしたことはあるけれど、どのような対応をすればいいのかわからない…。」という人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、みなさまが気になる「標準貨物自動車運送約款改正に伴う手続きの方法」について紹介していきたいと思います。
1.新運送約款を使用する場合
国が定める新しい運送約款では、「運賃」だけでなく、次の項目が変更になりました。
A.待機時間料・積込料・取降料などの【料金】を規定
(改正前)
〇運賃(範囲が不明確) 運賃には、運送・付帯業務・積込み・取卸し・荷待ち時間等すべて含まれていることもあり、曖昧でした。
(改正後) …運賃と料金の区別を明確化 ①運賃(運送の対価のみ) ②料金(運送以外の役務等の対価) ⇒ 付帯業務・積込み・積込み・取卸し・荷待ち時間 |
B.荷主要求による横持ち・縦持ち・棚入れ・ラベル貼り・はい作業は実費負担として収受
C.車両留置料の廃止
いままでトラック運送事業者に、運送以外の(もはや過剰サービスともいえる)業務に対して、まったくと言っていいほどその対価が支払われていなかったのですが、「運賃」と「料金」をきちんと区別することで、運送会社にその対価が支払われるように明確化しようという国の狙いがあるようです。
「運賃」と「料金」の区別が明確化になるため、事業所は運賃の変更届出を提出する必要あり!
運賃の記載方法が変わったので、運送事業者は、国が規定する新しい運送約款を用いる場合、運送約款に準ずる運賃料金の変更届出を支局に提出しなければいけません。
つまり、ふつうの事業所は、平成29年11月4日に新運送約款が始まったら…
① 運賃及び料金を設定して、運輸支局に届出をする(平成29年11月4日から30日以内)
② 国の定める新運送約款を営業所に掲示する |
の2つをしなければいけないということになるというわけなんですね。
2.新運送約款を適用した運賃料金の届出方法
「法改正に合わせた運送約款を利用する=新たな運賃料金届出を行う必要がある」ことは説明しましたが、届出するためにはどのようにしたらいいのでしょうか?
a.運賃料金の変更届出
運賃料金の変更届出の様式は全日本トラック協会のHPに掲載されてあります。 なので、それを利用しましょう。(⇒全日本トラック協会HP「標準貨物自動車運送約款」の一部改正等について」) |
b.運賃料金届出に合わせた変更届出を選択
ちなみに、運賃料金の届出は、平成2年、平成6年、平成9年、平成11年公示の運賃料金で届出をしているので、当時の運賃料金の届出がどの公示に合わせて届出したかで「変更届出」の様式が異なります。
なので、平成11年公示の運賃料金届出で運輸支局に提出していたのであれば、平成11年公示用の届出様式を利用する。というように、以前、届け出た運賃料金の設定に合わせて、変更届出の様式を選択し、国に提出しましょう。 |
※自社独自の運賃届出をしている場合は、自社独自の運賃料金の新旧表を添付して届出しましょう。
様式例(愛知県トラック協会)
平成2年公示と平成11年公示の運賃・料金表設定した事業所用に記入見本も含め、わかりやすく書かれています。
3.待機時間料・積込料・取降料などの設定は?
運賃料金の変更届出をするときに、迷うのが「待機時間料・積込料・取降料」の設定です。
なにしろ、いままで運賃料金の届出をするとき、公示の運賃で算出したり、参考にしたりしていたのですが、今回、基準そのものがありません。だから、「どのような料金設定をすればいいのかわからない…。」と言う人も多いです。
当ブログにも「待機時間料・積込料・取降料」について「何を基準に算出すればいいの?」といった質問をいただきました。
申し訳ありませんが、質問させていただけますでしょうか?
標準運送約款が新しくなり、料金体系も変更されるようですが、既存の運送会社さんはどの様に対応されるのでしょうか?また、許可申請中の場合、料金の設定は何を基準にすればよろしいのでしょうか?教えていただけますと助かります。(原文ママ)
残念ながら、これら3点の新料金の設定は、各社それぞれが考えなければいけないことになっています。…というのも、料金設定を当ブログで紹介してしまうと、公正取引委員会のカルテル等に抵触してしまい、指導される恐れがあるからです。
そのため、全ト協のQ&Aでも次のように書かれています。
あくまでベースとなる料金を設定し、そこから運送会社それぞれが、荷主企業と交渉と言うカタチになります。
疑問点!「運賃」と「料金」の区別が明確化になったら変わるのか?
私の知り合いは、「運賃」と「料金」が区別され、明確化されたことで、何かあったときに国が助けてくれる。または、荷主と交渉しやすくなると考えていたようです。
ですが、あくまでも運送会社が国に対して「この運賃料金をベースに仕事します。」と届出したモノにしか過ぎないので、いままでどおり、荷主に拘束力があるわけでもないし、国が助けてくれるわけではありません。
つまりは、運賃料金届出の内容が変わるだけで「荷主企業との運賃交渉は、いままでどおりそれぞれ運送会社で頑張ってね!」ということになるわけです。燃料サーチャージと一緒ですね^^;
4.以前の運送約款を使用する場合
国が定めた新しい基準(「運賃」と「料金」を区別)の運送約款ではなく、いままでどおり「運賃」・・・つまり、平成29年11月3日以前の運送約款を継続して使用することはできないのでしょうか?
じつは、できます。
なお、以前(平成29年11月3日以前)の運送約款を使う場合は、運賃料金の変更届出をする必要ありません。
ただし!
平成29年11月3日以前の運送約款は、「国の定めた運送約款扱いをされない=【独自の運送約款】扱い」にされてしまいます。そのため、旧運送約款を自社独自の運送約款として、国から認可を得なければいけません。
なお、届出をするときには、全ト協の改正に関するQ&A「改正前の約款の使用等」に、
(参照:標準貨物自動車運送約款の改正に関するQ&Aより)
と書かれていますので、添付する運送約款もその点に気を付けてくださいね^^
5.新旧の運送約款のダウンロード先
標準運送約款に従い、運賃変更届出を出すにしろ、旧運送約款の認可を受けるにしろ、新しい運送約款を営業所内に掲示しなくてはいけません。そこで、おすすめできるダウンロード先を紹介します。
広島県トラック協会(冊子タイプ)
まとめ!
(出典元:国土交通省資料より)
いままで紹介した内容をまとめますと、フローチャートのように…
① 新運送約款を利用する場合 ⇒ 【運賃料金】の変更届出
② 旧運送約款を利用する場合 ⇒ 【運送約款】の変更届出 ※①も②も支局に届出する部数は、計3部(正本1部・副本1部・控え1部) |
いずれかが必要になります。
つまり、法律の改正で、運賃料金の変更届出もしくは、運送約款の変更届出のいずれかを国に提出しなければいけないというわけなんですね^^;
これで運送業界が変わればいいのですが、おそらく何も変わらないでしょう。
そう考えると、はっきりいって面倒くさいです…。