知っているようで知らない!?1か月の拘束時間の計算方法
平成30年7月1日の行政処分の強化で「乗務時間等告示遵守違反」が厳しくなりました。
その内容は、次の通り。
いままでの乗務時間等告示遵守違反に加えて、1か月の拘束時間や休日労働の限度に関して違反が確認された場合は、別立てで処分日数が加算されるようになったんです。
だから、今後、1か月の拘束時間もきちんと意識して計算する必要があるのですが、そもそも1か月の拘束時間の合計を計算するためにはどのようにすればいいのでしょうか?
そこで今回は知っているようで意外と知らない、1か月の拘束時間の計算方法について紹介していきます。
1.1か月の拘束時間は?
1か月の拘束時間はどのように考えればいいのでしょうか?
いちばんわかりやすいのは、厚生労働省労働基準局が発行している「改善基準のポイント」になります。そこには、次のように書かれています。
ふむふむ。
1か月の拘束時間は原則293時間(例外は320時間)ということがこれを見てもわかると思います。
問題は、この合計を出すための計算方法です。
2.1か月の拘束時間の計算方法は?
続いて、1か月の拘束時間の計算方法です。
ここでも「改善基準のポイント」を見ていきましょう。
「改善基準のポイント」では、1か月の各勤務の拘束時間(始業時刻から就業時刻まで)をそのまま合計して計算するように書かれています。
1日の拘束時間を計算するときは、拘束時間がダブルカウントすることがありました。ですが、1カ月では、その必要はなく単純に合計するだけです。
これだけみるとすごく単純に見えますよね?
「ア.1か月の拘束時間」に書かれている計算例を見ても、ただの普通の足し算です。
けれど、業務をしていると、ただの足し算でも、ふと疑問に思うことが出てくるのです。
3.恒例の問題
さて、ここで恒例の意地悪な問題を用意しましたw
(11月) 28日 始業 8:00 ~ 終業 21:00 …30日 始業 20:00 ~ 終業(12月1日)8:00 |
このように、出発は11月30日PM20:00。
けれど、終業は翌日の12月1日AM8:00になってしまった場合、どこで区切ればいいのでしょうか?
考えてみてください^^
シンキングタイムです。
…
…
いかがだったでしょうか?
それでは、解説いたします。
4.どのように区切ればいいのか?
さまざまな答えが思い浮かんだはずです。
おそらく、いちばん多い回答は、0:00で区切るという方法ではないでしょうか。
でも、じつは違うんです。
それでは、解説していきますね。
1日は、始業時間の日付に合わせることになっています。
なので、【11月30日 始業20:00~終業翌12月1日8:00】すべて、11月の拘束時間として計算されます。
この考え方。労働基準法の暦日の考え方ではなく、改善基準告示に準じたトラック運送業界ならではの考え方です。
(※「日付をまたいだ勤務の場合は両日出勤扱いになるの?」に詳しく紹介してますので、根拠について気になる方はチェックしてみてください。)
トラック運送事業は不規則な勤務が多いので、1か月の拘束時間を計算をするとき、今回の例のように悩むことがあると思いますが、参考にしていただければと思います。
5.運行管理者試験にはどのように出題される?
では、最後に平成30年3月に実施された運行管理者試験問題(問20)を見て、思い出しましょう。
冒頭でお話したように平成30年7月に、1か月の拘束時間について行政処分の強化が行われます。乗務員の過労防止については、国もチカラを入れているので、運行管理者の試験問題として今後も出る可能性が高いかもしれません。
ちなみに、この問題の答えは、「A=1、B=8、C=5、D=3」でした!
まとめ!
いかがだったでしょうか?
久しぶりの問題でしたが、みなさまうまく答えられたでしょうか?
なお、今回の解答については、念のため、労働基準監督署にて確認してますのでご安心ください。7月に行政処分の強化対策としてぜひ参考にしてくださいね^^
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コメント
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お世話になります。
毎度、貴重な情報をご提示いただきありがとうございます。
あくまでルール上の話として、1ヶ月の拘束時間の算出方法で質問がございます。
例えば、5月分の1ヶ月の拘束時間を算出するとして、
10日の始業時刻が0:00 終業時刻が17:00
11日の始業時刻が1:00 終業時辱が13:00
12日 休日
だとします。
この時、10日の始業時刻から24時間以内に8時間以上の休息をとることができていないので、休息として認められず、1日の拘束時間が改善基準告示を満たしていないと判断されると思います。このような場合でも、せめて1週間における15時間超過の回数や、1ヶ月の拘束時間の合計時間は守りたいと思い、1ヶ月の拘束時間を計算しようとした場合、1ヶ月の拘束時間に加算する10日の拘束時間は24時間を加算するのでしょうか。
それとも始業時刻から終業時刻までの17時間を加算するのでしょうか。
既に1日の拘束時間が16時間を超過しているので、改善基準告示を満たしてはおらず、明確な回答が存在しないかもしれませんが、よろしくお願いいたします。
お世話になります。
質問ありがとうございます。
拘束時間と休息時間については、巡回指導や行政監査で見た場合、
10日 拘束時間17時間(×)、休息時間8時間(○)
11日 拘束時間12時間(○)、休息時間8時間以上(○)
と見られます。
※厚生労働省「改善基準告示のポイント」のP3参照
仮に、
20日 始業時刻0:00 就業時刻18:00
21日 始業時刻1:00 就業時刻13:00
このように、20日の18:00~翌日1:00が休息時間8時間未満であった場合、
どのように見られるのかというと…
たとえ、休息が8時間以上なくても、
1日を終業し、睡眠など自由な時間が与えられれば「休息」扱いになります。
※休息時間不足として改善基準告示違反扱いになります。
結果、月の拘束時間を計算するときには、
20日 拘束時間(×)18時間 休息時間(×)7時間
21日 拘束時間 12時間 休息時間(○)8時間以上
という考え方になります。
※※厚生労働省「改善基準告示のポイント」のP3
(3)①1か月間の各勤務の拘束時間(始業時刻から終業時刻まで)をそのまま合計して…を参照
説明下手ですみませんが
以上になります。
お世話になります。
返信ありがとうございます。
休息時間の扱いがわかり納得しました。
ということは、やはり分割休息やフェリー乗船等の特別な理由がない限り、終業時刻から始業時刻を引いた時間を拘束時間として加算すればよいということですね。
具体例を交えてご説明いただき、ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いいたします。
記事を拝読させていただきました。解説ありがとうございます。
少し主旨とずれてしまいますが、拘束時間の取り決めにおける1ヶ月の期間について教えてください。
おおむね、暦通り1日から末日までを1ヶ月として拘束時間の計算を行うものと考えていますが、
会社の締め日などの取り決めにより、15日から翌月16日などの期間を1ヶ月として計算しても良いのでしょうか?
また同様に、1週間や1年の期間についてはどうでしょうか?
任意の曜日、および、任意の月(4月など)を起点に計算しても良いのでしょうか?
すみません。記載した質問の答えとなる記述が、厚生労働省のホームページの「トラック運転者の労働時間などの改善のための基準 応用編」にありました。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000088143_00001.html
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000510277.pdf
2ページ目に次の記述があります。
“`
改善基準告示では、1日当たりや 1か月当たりの拘束時間や、休息期間などについて定めていますが、この「1か月」を数えるときの開始日を「起算日」と言います。
例えば、起算日を月初の 1日で設定した場合、1か月はその月の月末までとなりますが、起算日を8日で設定した場合は翌月の7日までを「1か月」として計算します。
このように、1か月の総労働時間や休息期間の計算は、特定の日を起算日とし、1か月ごとに区切って行うことになります。
なお、起算日に関しては営業所ごとに「時間外労働・休日労働に関する協定書(いわゆる36協定書)」を作成し、このなかで起算日をいつに定めるかを決めておく必要があります。
“`
これによると、36協定で取り決めた起算日を起点として計算するようです。
(このため、1日以外も起点日とすることができます)
改めて、質問なのですが、このルールに従うと、毎年同じ日を起算日とすると、1週間の起点とする曜日がずれるのでしょうか?
例えば、毎年1月1日を起算日とすると、2022年は土曜日、2023年は日曜日が週の始まりとなるということでしょうか?
ogawa様
お世話になります。
返事遅くなってすみません。
起算日について、記載していただきまして
ありがとうございます。
なお、新たに質問していただきましたが、
起算日は、曜日ではなく
暦日で考えることになっています。
そのため、例えのような状況になる
…ことになります。
お世話になります。
ご回答いただきありがとうございます。
曜日ではなく、暦日で考えるのですね。かしこまりました。勉強になりました。
何度も申し訳ありませんが、運転時間の制限で2週間ごとの平均で44時間までというものについて、質問があります。
起算日を起点に1週間に分けていった場合に、当年の最終週が7日に満たない場合はどのようにしますか?
翌年の最初の週を含めて7日にして計算するのでしょうか?
それとも年内で日割り計算(44時間/7日*残日数)とするのでしょうか?
お世話になります。
1日の運転時間及び、1週間の運転時間の起算日の考え方については、
今までの質問の起算日とは関係ないと考えてください。
あくまで「特定の日を起算日にする」という考え方です。
たとえば、1カ月、日々の運転時間をEXCELに打ち込んだとします。
1日運転時間8時間
2日運転時間10時間
3日運転時間11時間
4日運転時間10時間
…
ともに9時間を超えるときに”×”が出る表を作成したとき、
3日が”×”が出るはずです。
行政や指導員は、
「運転時間を見ましたが…3日を特定日にしたとき、2日平均の運転時間違反ですね。」
という回答になります。
※2週間平均の運転時間の考え方も同じです。
つまり、”どこでも特定日になりうる”というわけなんですね。
過去の記事に運転時間に関する特定日について解説しているので、そちらの方が分かりやすいと思います。
>特定日に関する記事
よろしくお願いします。
お世話になります。
回答ありがとうございます。
こちらもまた大変勉強になりました。
どの特定日でも規定を満たすように注意します。
すみません。リンクを付けていただいた「特定日に関する記事」なのですが、ワードプレスのログイン画面が表示されて見れません。
拝読させていただきたいのですが、どのようにしたら良いですか?
何度もすみません。
混乱してきたので、事例を交えて教えてください。
「トラック運転者の労働時間等の改善のための基準」によると、
下記の例とすると、1-2週目平均44時間、3-4週目平均44時間なので、OKということですが、
—
運転時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 計 |
1週目 | 9 | 9 | 9 | 9 | 9 | 45 |
2週目 | 9 | 9 | 9 | 8 | 8 | 43 |
3週目 | 8 | 8 | 8 | 8 | 8 | 40 |
4週目 | 10 | 9 | 9 | 9 | 11 | 48 |
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000510277.pdfより抜粋(p14)
—
1ヶ月の運転時間は同じにも関わらず、下記のようにしてしまうと、
1-2週目平均44時間、3-4週目平均44時間ですが、
2-3週目の平均が47時間になるため、違反になる
という理解でよろしいでしょうか?
—
運転時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 計 |
1週目 | 9 | 9 | 8 | 8 | 8 | 42 |
2週目 | 9 | 9 | 9 | 9 | 10 | 46 |
3週目 | 10 | 9 | 9 | 9 | 11 | 48 |
4週目 | 8 | 8 | 8 | 8 | 8 | 40 |
—
ご質問ありがとうございます。
おっしゃるとおり、1カ月の運転時間が同じでも
2~3週目の平均が44時間を超過しているので
違反扱いになります。
すみません!
訂正しました。
ご迷惑おかけしまして申し訳ありません。
リンクを修正いただきありがとうございました。とても助かります。
よく読んで理解します。