【宅配事業者】10分以上の停車時間がなく4時間以上の集配業務を行っているけど違反じゃないの?
「宅配事業者では、運転時間(4時間連続)を意識したことがなかった。」
「少なくとも1回につき10分以上(合計30分)休憩等を確保した記憶がない。」
宅配事業者に勤めていた労働者から意見をいただきました。
他の運送会社に勤務して、あらためて連続運転のことを知ったとき、「宅配事業者の連続運転はコンプライアンス上、本当に問題なかったの?」という疑問を知り合いの運転手さんからいただきました。
そこで、今回は「宅配事業者の連続運転4時間限度のルール」について紹介していきたいと思います。
1.連続運転時間の限度のルール
運転時間のルールを思い出してみましょう。
厚生労働省が出している「改善基準のポイント」(令和6年3月31日まで)では、
運輸開始後、4時間以内or4時間経過した後に運転を中断して30分以上の休憩を確保する必要がある
と書かれていましたよね?
一般貨物自動車運送事業を取得しているトラック運送会社には、運転時間に限度があって、トラック運転手の間では”430規制”と言っていたりします。
この規制については、トラック運転手の間ではあまり評判が良くないみたいですが、どうやら、今回の質問した方は、過去、宅配事業者に勤めているとき、10分未満(計30分以上)の休憩等がなく、4時間以上の集配業務を行っていたようです。
そのため「大手宅配事業者は違反しているのでは?」と疑問に感じたようですが、実際に、行政はどのような判断をしているのでしょうか?
2.過去の通達では宅配事業者は”違反にならない”だった
過去に宅配事業者に勤務していた運転者は、なぜ「宅配事業者は連続運転違反になっていないのはなぜ?」と疑問に感じることにつながったのでしょうか?
その回答のヒントになるのは、次に紹介する通達「自動車運転者の労働時間等の改善基準に関する疑義について」(昭和55年7月26日付・基監発第18号)になります。
通達では、次のように書かれています。
「駅構内、岸壁内等での運搬作業又は宅配等小口集配業務に従事する自動車運転者については、断続的に運転を中断して荷の積卸しを繰り返す実態にあるが、このような自動車運転者についても連続運転時間の規制を受けることになるのか。」
この質問に対して、
「連続運転時間を規制する趣旨は、長距離運行にありがちな長時間連続運転による過労の防止にあり、設問のような勤務態様にある自動車運転者については、連続運転時間の規制の対象となるものではない。」
この解釈になるのは、宅配事業者は、一般消費者や企業に荷物をお届けするのですが、次のお届け先までの距離は短く、少し運転しては宅配をお届けするの繰り返しのため、長時間の運転になることがありません。
ただし、430の休憩については、本来、分割するにしてもまとまった時間(10分以上)が必要です。
宅配事業者は、運転時間はそこまでないのですが、そのまとまった時間を確保するのが非常に難しいと判断され、いままで宅配事業者は”例外”に該当し、連続運転の規制については「違反にならない」という解釈になっていました。
結果、巡回指導や行政監査が実施されたとき、連続運転に該当したとしても、宅配であればとくに指摘されることはなかったのです。
3.令和5年3月31日付けで例外はなくなった
当ブログもいままで”宅配”は、連続運転の対象外だと紹介していました。
ところがです。
令和5年3月31日付でその基準がガラリと変わりました。
通達の一番下を見てください。
「なお、昭和55年7月26日付け基監発第18号、平成9年3月11日付け基賃発第24号は本日をもって廃止する」
と書かれていますよね?
つまり、令和5年4月1日以降は、宅配であったとしても”連続運転”の違反があれば指摘されることになったのです。
4.影響を受けるのは宅配事業者だけではない
宅配事業者だけではありません。
一般廃棄物収集運搬者や一部ダンプなども該当していたのですが、当然、今後の巡回指導では調査対象になります。
連続運転は「過労運転」に該当します。
拘束時間や休息時間を遵守しているにもかかわらず、かつ前回の巡回指導で「過労運転」を指摘されていなかったのに、今回の巡回指導で指摘された場合は、間違いなく、令和5年3月31日付けで廃止されたことが影響しているといえます。
まとめ
年々、トラック運送会社を悩ませる法律ができています。
今回の改正に該当するのは、一部の運送会社だけかもしれませんが、覚えておいて損はないと思います。
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