出勤簿の記載方法に迷ったことはないでしょうか?
「…?出勤したら印鑑押すだけじゃないか。迷うことはないだろ?」と思った方もいるかもしれませんが、仮に深夜勤務があるときにはどうしていいかわからなくなります。
次の例を見て下さい。
12月1日PM10時に出発 12月2日朝AM6:00まで勤務 |
深夜10時に出発して、翌日朝6時に勤務が終了する。トラック運送会社ではよくある勤務体制ですよね?
けれど、この場合だと、12月1日と12月2日のどちらが出勤扱いになるのか、わからなくなりますよね。
私の知り合いの運送会社の出勤簿を見たとき、両方に印鑑を押していました。
でも、待ってください。本当にそれでいいのでしょうか?
近年、労務管理の徹底が言われている中、適当に対応していたら大変なことになってしまいかねません。
日をまたぐようなケースは一般貨物運送事業においてかなり多いので、今回は労働基準監督署や運輸局が見た場合、どのような判断をするのか…この点について触れていきたいとおもいます。
1.日付をまたいだ場合の勤務の取り扱いは?
じつは、この日付をまたいだ勤務をした場合、現在の改善基準告示の前進となる昭和42年の通達「自動車運転者の労働時間等の改善基準」が大きなカギを握っています。
この「自動車運転者の労働時間等の改善基準」に…
『自動車運転者の1日(勤務が二歴日)にまたがる者については、始業時刻からの継続24時間またはこれに引き続く各継続24時間とする』
このように明記されています。
また、労働基準法を見てみれば、昭和63年1月1日付基発第1号においては…
「1日とは、午前0時から午後12時までのいわゆる歴日をいうものであり、継続勤務が二暦日にわたる場合には、たとえ暦日を異にする場合でも一勤務として取り扱い、当該勤務は始業時刻の属する日の労働として、当該「1日」の労働とすること」
とされているのです。
2.改善基準告示と労働基準法どちらを優先させるの?
改善基準告示…始業時間から24時間で考える 労働基準法…午前0時から午後12時まで(歴日) |
となっています。
では、一般貨物運送事業ではどちらを優先するのでしょうか?
もともと自動車運転者の労働時間等の規制は、昭和41年までは他の産業と同様に主として労働基準法の規制のみによってました。
けれど、だんだん自動車運転者の労働条件を改善して、交通事故の激増に対処しなければいけないという動きが出始め、昭和42年には労働基準法に加える規制として、実作業時間規制を中心とする内容の通達「自動車運転者の労働時間の労働時間等の改善基準について」が策定されました。
さらに昭和54年に拘束時間規制を中心とする内容の通達「自動車運転者の労働時間等の改善基準について」が策定され、平成元年には、こう通達のうち、拘束時間、最大拘束時間、休息期間及び運転時間に関する部分が告示とされました。
つまりは、これらの経過を踏まえて、改善基準告示上の用語は特段の定めがない限り、労働基準法上の用語と同様という扱いになったんですね。
3.一般貨物運送事業では改善基準告示を優先する
つまり、一般貨物運送事業では改善基準告示を優先するという結論になりました。
なので、日付をまたぐ場合の出勤簿の取り扱いは、改善基準に合わせて始業時間の属する日に印鑑を押すと間違いありません。
下手に両方の日付に印鑑を押してしまうと巡回指導や行政監査で誤解を招くことにもなりかねません。
ただ、彼らの場合、ヒアリングを行ったうえで指導を行っているので「まだ大丈夫だ!」と危機感を感じていない人もいますが、最近は、残業代未払いの訴えをする運転手も増えています。
この印鑑の部分まで、「運転業務以外の作業をさせられていた…。」なんて主張されたら、そのようなことはないと主張し、証明するのはなかなか厄介なことになりますので注意したほうがいいですよ^^
まとめ!
私たち一般貨物自動車運送事業として運営しているトラック運送会社は「改善基準告示」を優先することになっています。
そのため、日付をまたぐときの出勤簿の取り扱いは、両日押印するのではなく、この改善基準に沿って【始業時間】の属る日のみ押印する…というルールに従って、出勤簿を作成しましょう。