運行管理者補助者とは?見落としがちな点も含めて徹底解説!
所有車両数に合わせて、運行管理者を選任していると思いますが、運行管理者の業務はたくさんあります。しかも、早朝深夜帯での運行や長距離輸送をしていると、24時間体制で管理しなければいけないので、少数での対応は現実的ではありません。
だからといって、法律で定められている選任人数以上の運行管理者を選任するのも大変ですよね。
そのため、営業所内で運行管理者の指揮監督のもと、一定の条件を満たせば、補助者として選任することができる制度が設けられています。
では、運行管理者の補助者はどのような業務をすることができるのでしょうか?
また、選任要件とはどのようなものでしょうか?
運送会社が見落としがちな過去の事例を含めて紹介していきたいと思います。
1.運行管理者補助者の条件
運行管理者の補助者を選任する場合、次のことに留意しておかなければいけません。
① 補助者の資格要件をクリアしている(aかbどちらかに該当すれば可)
a.運行管理者資格者証を取得している
b.運行管理者基礎講習を受講している② 補助者の地位と職務権限が運行管理規定等で明確にされている
③ 補助者の選任数は、運行管理の業務量を十分考慮した数である
補助者資格取得の有無の確認と規定への明記は忘れずにしておきましょう。
2.基礎講習を受講しているのに補助者に選任できない場合がある
運行管理者の補助者の選任が「運行管理者資格者証を所有している者」もしくは「基礎講習」を受講したものであることは、多くの運送会社は知っています。
第18条 運行管理者等の選任
(貨物自動車運送事業輸送安全規則)
3 一般貨物自動車運送事業者等は、運行管理者資格者証(以下「資格者証」という。)若しくは道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)第二十三条の二第一項に規定する運行管理者資格者証を有する者又は国土交通大臣が告示で定める運行の管理に関する講習(以下単に「講習」という。)であって次項において準用する第十二条の二及び第十二条の三の規定により国土交通大臣の認定を受けたものを修了した者のうちから、運行管理者の業務を補助させるための者(以下「補助者」という。)を選任することができる。
実際に、運行管理者の補助者になっている者の多くは、運行管理者の資格は所有しておらず、「基礎講習」を受講した者を選任していることが多いです。
運送会社が気が付かない落とし穴
しかし、ここで落とし穴があります。
私も、ときどき監査対策として運送会社に訪問したときに見かけることがあるのですが「基礎講習」を受講していても、”補助者に選任できない者”に点呼執行させているケースがあるのです。
基礎講習を受講しているのに補助者に選任できない?
どういうこと?
多くの方はそう思ったかもしれません。
当然、運送会社の担当者は違反だと気づいていません。
次の安全規則の解釈を見て下さい。
第18条 運行管理者等の選任
(貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について)
2.第3項の「講習」には、平成7年4月1日以降平成19年3月31日以前に独立行政法人自動車事故対策機構が行っていた基礎講習も含むものとする。
平成19年4月1日以前は、運行管理者の補助者といったものはなく「代務者」と言われていました。
当時、「運行管理者の代務者」は、補助者の条件(運行管理者資格者証や基礎講習など受講歴のある者)、業務に詳しく信頼できるものであれば、選任できていたんですね。
ところが、平成19年4月1日に「補助者」制度ができました。
ここで問題なのは、「平成7年4月1日以降平成19年3月31日以前に独立行政法人自動車事故対策機構が行っていた基礎講習も含むものとする。」という表現です。
つまり、平成7年3月31日以前に受講した基礎講習は「運行管理者の補助者選任の対象外」の扱いになるわけです。(運輸支局確認済み)
この見落としが意外と多いので、運送会社のみなさま、ベテランの補助者を選任しているとき(資格がなく基礎講習で選任している)は、いつ基礎講習を受講しているのか、念のため、確認しておきましょう。
ポイント!
平成7年3月31日以前に基礎講習を受講した場合、運行管理者補助者に選任することはできない。
3.運行管理者補助者は兼務しても大丈夫?
運行管理者の補助者は選任されている営業所の補助業務に支障を生じない場合に限り、同一事業者の他営業所補助者を兼務できます。
ただし、各営業所において運行管理業務が適切にできるように運行管理規程に規定しておくことが必要になってきます。
例)
① A営業所 補助者 B営業所 補助者 ・・・兼務○
② A営業所 補助者 B営業所 運行管理者 ・・・兼務×
※運行管理者に選任されると他の営業所の補助者にはなれない。
4.運行管理者補助者の業務
運行管理者の補助者ができる業務は次の通りです。
第18条 運行管理者等の選任
(貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について)
4.補助者は、運行管理者の履行補助を行う者であって、代理業務を行える者ではない。ただし、第7条の点呼に関する業務については、その一部を補助者が行うことができるものとする。
このように、運行管理者の主な業務は「点呼執行の履行補助」と書かれています。
① 点呼の一部
選任運行管理者が行う点呼は、点呼を行うべき総回数の少なくとも3分の1以上でなければならない。つまり、総回数の3分の2を補助者が点呼執行しても可能になります。② 運行指示書にかかわる資料作成および運転者への伝達行為
点呼は特に回数に注意しなくてはいけません。
簡単にいえば「運行管理者が業務を放棄してはダメ。忙しいのはわかるけれど、最低でも全体の3分の1以上は点呼執行してね。」という意味になります。
5.運行管理者に報告すべき内容
補助者が行う業務は、あくまでも運行管理者の指導及び監督のもとおこなわれるもの。だから、運行管理者に報告しなければいけない事案も当然発生してくるというわけなんです。
その際は、
運行の可否の決定等について指示を受ける ⇒ その結果に基づき各運転者に指示をする
この流れをすることが大事になってきます。
<運行管理者の指示を受けなければいけないもの>
① 運転者が酒気帯び状態である
② 疾病、疲労、その他の理由により安全運転できない
③ 無免許運転、大型自動車等無資格運転
④ 過積載運行
⑤ 最高速度違反行為
6.補助者に選任したら組織体制図の作成を!
一般貨物自動車運送事業の場合、運行管理者の補助者に選任しても、運行管理者や整備管理者のように国への届出義務はありません。
ただし、組織体制図を運行管理規程への記載もしくは社内に掲示するなど、しておかなければいけません。
これを意外と忘れている事業所が多いので、しっかりと記載しておきましょう。
7.補助者は運行管理者一般講習の受講義務はない
質問の中に「運行管理者の補助者は一般講習などを定期的に受講しなければいけないの?」と質問されることがあります。
答えを言うと「No」です。
一般講習は、あくまで運行管理者として選任した者が対象です。
ただし、義務ではないものの、一般貨物の法律はよく変わるので、運送会社の中には運行管理者と同じように一般講習を受講させているところもあります。
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コメント
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お尋ねしたいことがあります。運行管理補助者は、
運行管理者が不在時でも点呼が可能なのでしょうか?
一日中不在の場合でも月単位の点呼にて、回数はカバーするのでしょうか?
運行管理者は運転者として登録し、運行はできないのでしょうか?
以上をお聞きしたいのですが…コメントでなくても申し訳ありません。
よろしくお願いします。
質問ありがとうございます。
回答が長くなってしまいそうでしたので、
http://blog-t.com/1087-2にまとめました。
参考にしていただけると嬉しいです。
質問いたします。
運行管理補助者は国への選任届(貨物)は必要ないと確認していますが、
業務を行う上で事務所内で書面で何か残さないとダメなんでしょうか?
今井さん、
ご質問ありがとうございます。
おっしゃるように運行管理者補助者は、
国(運輸支局)に選任届出をする必要はありません。
ただ、組織体制図(運行管理規程に記載。もしくは営業所内に貼付)で、
補助者は誰なのか?また、どのような指揮命令系統になっているのか?
を記載しなくてはいけないことになっています。
(根拠「一般貨物自動車運送事業及び特定貨物自動車運送事業の許可及び事業計画変更認可申請等の処理について」)
組織体制図については、↓に記載してますので参考にしてくださいね?
・運行管理規程・整備管理規程のチェックポイント!
・組織体制図の書き方
運行管理補助者を受けるのに、普通運転免許は必要ですか?
まめさん、はじめまして!
運行管理者基礎講習でよかったでしょうか?
基礎講習の受講に「普通運転免許証」の提示を
求められることはありません。
実際に私が基礎講習を受講したときも
求められませんでした。
質問です。
車いすの障害者で
手は使えないので書いたりはできませんが
PCは使えます。
言葉も普通に話せますが
運行管理者補助は講習うけてとれますか?
ご質問ありがとうございます。
運行管理者の基礎講習を
受講することについてですが
問題ないと思います。
私の知り合いは、
車いすの状態で運行管理者試験を受験しました。
でも、頑張って受講し合格しましたよ。
運転できるできないは問われていないんですね^^
ただ、念のため、運行管理者基礎講習を開催している
自動車事故対策機構等に事前に確認したほうがよろしいかと思います。
ご丁寧な返信ありがとうございます!
質問ですが、
警察に捕まったんですが、
点呼補佐の講習を受けることが出来ますか?
まゆゆ様、
ご質問ありがとうございます。
警察に捕まったというのがどのような内容かよくわかりませんが、
(極端な話、前科があったとしても)点呼の補助者になるための運行管理者基礎講習を
受講することができます。
初めまして、基礎講習を受けたと思っていますが、実務経験は関係ありますか?
牧野様、はじめまして!
基礎講習を受講する条件は特に設けられていません。
そのため、学生が運行管理者試験を受験するために、
受講するケースもあります^^
はじめまして
お世話になります。
運行管理者資格証(貨物)についてなのですが、5年以上の実務経験を有し、かつ、運行管理に関する講習を~云々とあるのですが、この『実務経験』というのは「運行管理補助者」としての経験が5年以上ということでしょうか?
ご質問ありがとうございます。
運行管理者の実務経験については、平成19年4月1日がポイントになります。
平成19年4月1日以降は、
運行管理者補助者としての経験が5年以上必要になっています。
運行管理者補助者は基礎講習の受講が条件なので、
最低でも基礎講習を受講してから5年は運行管理者資格者証を取得できないことになります。
ちなみに、資格取得のための実務経験証明書は、
「経験期間を書いて会社の印鑑を押す」だけです。
そのため、ほとんどの会社は、
補助者として選任していないにもかかわらず、
印鑑を押しているのが実態です^^;
支局も点呼記録簿などで補助者としての実績を
確認をすることはありません。(届出制のため)
※点呼記録簿の保存期間が1年ですし…^^;
だから、個人的には「5年講習をして資格を取得できる方法」は、
もうそろそろ改正があるのではないかな?…と思っています。
お尋ねします。
運行管理者資格を取得し、現在、補助者をしております。
この場合、講習を受ける義務はありますか?
お手数ですが、よろしくお願いします。
黒田さん、はじめまして!
運行管理者補助者は、
講習の義務はないです。
運行管理の補助員(貨物)をしています。
基礎講習修了。一般講習3回受講。
実務経験3年半です。
あと一般講習を2回、実務経験を1年半
出来た場合、試験を受けずに運行管理者の資格はもらえますか?
補助員としての届け出を国にしてないのですが大丈夫ですか?
幸さま、はじめまして!
資格を得る講習の数え方については、こちら
になります。
なお、補助員は、国に届出する必要はないのですが、
組織体制図などを作成し、営業所に掲示もしくは、運行管理者規程に記載する必要があります。
こんにちは。
運行管理資格者証あり。
現在『補助者(未講習)』として選任されています。
今後、受講済として補助者に選任されたいので基礎講習を受けたいのですが、例えば人数的な問題とかで選任されないとしても受講自体はしてもいいのでしょうか。
基礎講習を受けてから何年以内に選任されないと、もう一度受講しなくてはならない、などの制限はあるでしょうか。
よろしくお願い致します。
聖さん、こんにちは。
基礎講習を受講してから何年以内に選任されないと、もう一度受講しなくてはいけない等、制限はありませんが、基礎講習修了証(もしくは基礎講習を受講した手帳)は大事に保管しておくことをオススメします。
お世話になります。前職がバスの運転手で運行管理者の「旅客」の資格を持っているのですが、現在転職し、貨物自動車運送事業法の職種なのですが、「旅客」の資格で「貨物」の補助者にはなれるのでしょうか?
お世話になります。一度質問さして頂いたのですが、消えてしまっているので再度質問致します。
以前に「旅客」の会社に勤めていて、運行管理者資格も「旅客」で取りましたが、この度転職をし、
「貨物」の方になりましたが、「旅客」の資格で「貨物」の方で運行管理者の補助者になれるのでしょうか?
社内で大丈夫派とダメ派で分かれているのですが、ご教示願います。
返事遅くなって申し訳ありません。
別ページに回答しています。
今回の質問の内容については、2番目に書いていますので
参考にしていただければ幸いです。
回答はこちら
今、運行管理補助者として働いています。去年、今年と運行管理者試験を受け落ちてしまいました。
会社から補助者は売り上げを上げていないのでアルバイトに降格すると言われました。
仕事は、全ての点呼、運行指示書の作成、乗務記録の作成、出勤簿の作成をしています。
点呼をしないだけでも違法なのに。
こういう場合陸運局に通報できるのでしょうか?
お願いします。
元運転手さん
質問ありがとうございます。
すべての点呼等を補助者が行うのは違法ですが、
それだけでは、運輸支局に通報しても国は行政監査を行いません。
ただ通報があった以上は、国も何かしらのアクション(処分ではなく注意程度)をするとは思いますが、
違反について指摘された運送会社は、誰が告発したのかピンッと来ることが多く、
(告発の)匿名性を守れるかといえば難しいのが現状だと思います。
回答ありがとうございます。
Gマーク取得の監査の時も、今まで何もしていなかったので急遽点呼簿、運行指示書、乗務表等々半年分をごまかしで作成させられました。しかもお盆休み返上して1りで。。。
それなのにアルバイトに降格って頭に来ました。
補助者で売り上げあげてないからって降格処分出来るのでしょうか?
宜しくお願い致します。
元運転手さん
質問ありがとうございます。
正社員からアルバイトへ降格という話を前提にお話しすると…
労働契約法第8条
「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる」
と記されています。
つまり、正社員である元運転手さん本人の合意がなければ、
本来、正社員からパートに変更することはできません。
※ここで気を付けなければいけないのは、
いちど同意してしまうと正社員に戻れませんので注意してください。
基礎講習を受けた後、現在の会社に入社し、運行管理補助者として選任されました。
その場合は、選任をされてから5年以上のカウントがスタートすると考えていいのでしょうか。
毎年、運行管理者とともに一般講習を受けているのですが、それは大丈夫ですか?
まる様、はじめまして
質問ありがとうございます
まる様の認識で間違いないです。
まとめますと…
①基礎講習の受講からスタート
②原則、選任されてから最低5年以上の経験が必要
③基礎講習の受講の翌年度から、毎年1回、一般講習(もしくは基礎講習)の受講が必要
以上になります。