運行指示書を作成するうえで気をつけておきたい5つのポイント
2泊3日以上の運行をすることになった運送会社の運行管理者
「2泊3日以上の長距離輸送の仕事をすることになったけれど、どうやら運行指示書が必要みたいだ。けれど、運行指示書はどのようにして作成すればいいのだろう?」
運行指示書の作成は、多くの運送会社を悩ませている帳票類のひとつですよね。
そこで、今回は「運行指示書を作成するうえで気を付けるべき5つのポイント」について解説していきます。
1.運行指示書はどのようなときに必要?
運行指示書は、すべての運行で必要というわけではありません。では、どのような運行をするときに運行指示書が必要になるのでしょうか?
じつは、運行指示書が必要な状況は…
「1日の中で運行管理者とまったく顔を合わせることがない日がある。」
ときになります。
つまり、2泊3日などの1運行の中に乗務前・乗務後点呼が”いずれも電話点呼”になってしまう日があると思いますが、そのような日が1日でもあれば「運行指示書」が必要になるのです。
長距離輸送を例に挙げると…
運行指示書が必要になる運行がどのようなものか知るうえで、イメージしやすいのは”長距離輸送”になります。
長距離輸送は、地場のようにその日のうちに認可車庫に戻ることはできないですよね?遠方にいるので車内泊をしなければいけない日が数日続くと思います。
「遠方地で宿泊する=認可車庫以外に駐車して宿泊する」
つまり、認可車庫ではない場所から1日がスタートするため、運行管理者と顔を合わせることができません。
さらに、その日の業務終了でも遠方の地だったら…業務開始も業務終了も運行管理者と対面ができません。
このような場合、「運行指示書」が必要になるのです。
それでは、いまの説明をサンプルを使って見てみましょう。
サンプル
たとえば、2泊3日以上の運行になるとき、
1日目の出庫=対面点呼
3日目の帰庫=対面点呼
このように、1日目と3日目は、運行管理者と顔を合わせることができます。ですが、2日目は、出発時も到着時も運行管理者と対面できません。
つまり…
1日目 乗務前【対面】ー乗務後【電話】
2日目 乗務前【電話】ー中間【電話】ー乗務後【電話】
3日目 乗務前【電話】ー乗務後【対面】
のような点呼執行を行っていることになります。
2日目を見ると、すべて電話でのやりとりになっていますよね。
つまり、運行管理者と直接、丸1日、顔を合わせることができていないのですが、このような状況では、業務上の指示が的確に伝えられるかどうか怪しいです。
なので、それをカバーするために「紙ベース(運行指示書)で乗務員に適切に指示」をしなければいけないルールになっています。
2.運行指示書に必要な項目
運行指示書を作成するとき、必ず記載しなければいけない項目が次の①~⑦になります。
①運行の開始及び終了の地点及び日時
②乗務員の氏名
③運行の経路並びに主な経過地における発車及び到着の日時
④運行に際して注意を要する箇所の位置
⑤乗務員の休憩地点及び休憩時間(休憩がある場合に限る )。
⑥乗務員の運転又は業務の交替の地点 運転又は業務の交替がある場合に限る
⑦その他運行の安全を確保するために必要な事項
この7つの項目を満たした運行指示書を必ず2部(正:運転者用)と(副:運行管理者用)作成する必要があるんですね。
それでは、いまから7つの項目について説明していきます。
① 運行の開始及び終了の地点及び日時
「①運行の開始及び終了の地点及び日時」は、1行でまとめられていますが、
・運行の開始の日時(運行の開始の日付と時間は?)
・運行の開始の地点(運行の開始はどこにいたか?)
・運行の終了の日時(運行の終了の日付と時間は?)
・運行の終了の地点(運行の終了はどこにいたか?)
この項目だけでも、たくさんのことを書かなければいけないことがわかります。
開始の日時と終了の日時は「線引き」で対応
手書きで開始の日時と終了の日時を書いても問題ありませんが、多くの事業所の運行指示書は「線引き」を利用しています。
「線引き」とは何かというと、↑の様式でいうと赤い横棒「-」になります。線を引くと、それだけで何時に出発する計画なのかわかりますよね?
たとえば、計画書のいちばん上の線引きを見ると…8時から運転して9時積み込みということがわかります。
このように、わざわざ時間を数字で書くよりも、線を引いた方が「楽!」という事業所が多いため、このタイプの様式が広く使用されているというわけなんですね。
運行の開始と運行の終了の地点の書き方は?
↑の記入例を見てみましょう。
緑の〇で囲んだ部分で、1日目AM8:00「〇〇支店」と書かれていますが、これが「①運行の開始の地点」になります。
そして、1日目の到着はPM20:00「□□TS」と書かれています。これが「②運行の終了の地点」になります。
他の日程も同じように、いつ(時間)出発・終了したのか。その場所はどこなのか記載していきましょう。
② 乗務員氏名
どの乗務員に対して運行の指示を行ったかわかるようにする必要があります。そのため、「運転者欄」には、運行指示書を渡した乗務員の名前を書きましょう。
③ 運行の経路並びに主な経過地における発車及び到着の日時
↑のサンプルの様式は線引きタイプです。
線を引くことで、いつ運転が始まったのか、いつ到着したのか時間も含めてわかります。(例:緑の矢印の区間 出発10時~到着13時)
このように、運転の出発・到着の時刻予定を書くことになっています。
※ちなみに「D=運転」の下に「○○IC」や「国道○号線」など【どこの道路を走ったのか】記載されている例が多いのですが、【運行の経路を書かなければいけない】と法律上、決まっているわけではありません。(トラック協会・支局確認済み)
⑤乗務員の休憩地点及び休憩時間(休憩がある場合に限る )
乗務員に休憩を取ってもらうことも大事な仕事です。
何時から何時まで「休憩時間」なのか、また「どこ」で休憩を取るのか【地点】も併せて記載しておく必要がありますので忘れずに書いておきましょう。(サンプルでは♦♦SA(サービスエリア))
なお「休息」は書かなくても問題ありません。
※その他の項目は、何か安全運行するうえで伝えなければいけないときに記載したり、ツーマン運行があるときに記載する内容なので、必要に応じて書いてくださいね。
3.運行指示書作成から回収までの流れ(フローチャート)
それでは、運行指示書の作成から回収までの流れについて、まとめです。フローチャートを見ていきましょう。
Step1 作成~渡す
(運行管理者)
・運行指示書を2部(正・副)作成
・乗務員に運行指示書(正)を渡す
・「運行指示書(副)」を営業所に据え置く
(乗務員)
・運行管理者から「運行指示書(正)」を受け取る。
Step2 運行指示書の内容に変更が生じたとき
(運行管理者)
・「運行指示書(副)」に変更内容を記載。
・変更内容を乗務員に電話等で指示を実施する
(乗務員)
・運行管理者から連絡が合ったら、携行している「運行指示書(正)」に変更内容を記載する。
Step3 回収~記録保存
(運行管理者)
・「運行指示書(正)」を乗務員から回収する
・「運行指示書(正)」を確認・押印
・「運行指示書(正・副)」2部を運行終了から1年間保存
(乗務員)
・運行終了後に運行管理者に「運行指示書(正)」を渡す
もしも運行途中で運行指示書が必要になったときの対応は?
予定では、地場もしくは1泊2日運行の予定だったけれど、急遽、2泊3日以上になってしまったことってありませんか?
(通常)
出発前に運行指示書を渡す
(想定外)
2泊3日以上にならない予定が、急遽、必要になった
たとえば、荷主の都合で1泊2日予定が2泊3日以上に変更になった場合、手元に運行指示書がないですよね。
けれど、運行指示書を手に入れようとしても、すでに営業所から離れた遠方である場合、わざわざ運行指示書を手に入れるために戻るわけにはいきませんよね?
これでは「運行指示書」を手に入れることはできません。
でも大丈夫。
対応できます。
運転日報に記載する
想定外で2泊3日以上になったから「運行指示書」は作成しなくてもいい…ということはありません。
このような場合でも、運行管理者は乗務員に電話などで適切な指示を与え、記録保存しなければいけないのです。
では、運転手が運行指示書の様式を持っていない中、どのように記録させたらいいのでしょうか?
答えは―
「運転日報」に運行指示の内容を書くことです。
つまり、応急処置として運転日報兼運行指示書になるというわけなんですね。そして、運行管理者から運行内容の変更指示を受けた乗務員は、指示内容を運転日報に記載することになっています。
ちなみに、このときも運行指示書に必要な項目はすべて必要になります。
頻繁にあるなら運行指示書の携帯を
運行指示書の内容を運転日報に記載するときは、想定外のことが起きた場合です。
もしも、荷主から新たな依頼が舞い込み、1泊2日⇒2泊3日に変わるようなケースが頻発するのであれば、乗務員に運行指示書の様式を携帯させておいたほうがいいです。
やはり、運転日報に書くなると、運行指示書法律に必要な項目の書き漏れが起きてしまいますので。
4.運行指示書の行政処分からわかること
もしも、運行指示書の作成などを怠った場合、どのような処分が下るのでしょうか?
「貨物自動車運行事業者に対し行政処分等を行うべき違反行為及び日車数等について 別表」によると運行指示書の違反の事項については次のとおり、記載されています。
運行指示書
1.作成、指示又は携行の義務違反(運行指示書の作成等が必要な30運行に対して)
① 5件以下 初違反…警告 再違反…10日車
② 6件以上15件以下 初違反…10日車 再違反…20日車
③ 16件以上 初違反…20日車 再違反…40日車2.記載事項の不備 初違反…警告 再違反…10日車
運行指示書及び写しの保存義務違反 初違反…警告 再違反…10日車
さて、ココから何がわかるかというと、監査のときには次の3点について見られるということです。
1.作成、指示又は携行の義務違反はないか?
2.記載事項の不備はないか?
3.運行指示書(正)(副)の2部保存しているか?
運行指示書を作成しておきながら、 運行指示書を作成している事業所でも運転者から、運行指示書の回収を忘れてしまっている事業所がすごく多いです。
正副2部保管していないばかりに行政処分を受けてしまうのは本当にもったいないので、確実に2部保存するようにしておきましょう。
5.運行指示書で注意すべきこと
もうひとつ注意すべきことがあります。
それは改善基準告示に添った【運行指示書】を作成していることです。
もしも、運行指示書を作成したとしても改善基準告示違反だと、下命容認していると見られます。
運輸支局の監査部は、昨今の過労問題を鑑み、運行指示書に改善基準告示違反がないか注目しているようです。計画を作成される際には、注意してくださいね。
※運転日報が「結果」だとすると運行指示書は「計画」です。なかには、運行指示書に「結果」を書く人がいますが、それは間違いです。 つまり、運行指示書(計画)=運転日報(結果)になることはあり得ないのです。だから、運行指示書と運転日報の内容に多少のズレがあってもなんら問題ありません。 |
運行指示書のエクセルをダウンロードしたいなら…
運行指示書を自作するよりも、トラック協会で公開している様式を活用したほうが数倍楽です。とくにおススメを紹介しておきますね。
(記入例)
徳島県トラック協会HP
(様式)
PDF ⇒ 徳島県トラック協会HP
エクセル ⇒ 長崎県トラック協会HP
まとめ
長距離輸送のなかには出発直前でなければ行き先が分からない。帰り便が決まっていない。荷主先に行って、荷主の指示を受けるため、指示書が作成できないといったケースがあると思います。
その場合でも、「出庫と帰庫しか書かれていないもの」「過去の運行データから作成したサンプル」をとりあえず渡して、変更欄に書き込むなどすると行政処分はある程度、軽減できます。とくに平成28年1月におきたバスツアー事故で運行指示書がクローズアップされているので気をつけておきたいところですね。
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コメント
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先日、地場のツーマン運行で運転者が追突事故を起こしました。
運転日報には乗務員2名が明記されているだけで運転者は口頭で
指示があるだけでした。
この場合、身代わりの可能性もあるのですが、法的に運行指示書を
携行させなければなりませんか?
尚、運転者の交代はありません。
又、業務の交代という文言があるのですが意味がわかりません。
回答宜しくお願い致します。