運送業の指導監督指針12項目の実施の仕方と記録方法!

事業用自動車の運転者は、トラックを運転することが仕事ですよね。

いつも同じ道路状況ならいいのですが、雪や豪雨などの気象の変化や住宅街・山道での運行、突然の歩行者・自転車の飛び出しなど、その時々によって運行の判断に高度な能力が必要になります。

そのため、交通事故を起こさないために、このトラック運転手に対する安全会議・安全教育が法律上、義務付けられているのですが、どのように実施すればいいのか、またどのように記録保存すればいいのか、知っているようで知らないこともあるかと思います。

そこで、今回は、トラックの指導監督指針12項目の安全会議についてまとめてみました。

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1.指導監督指針とは?

指導監督指針の正式名称は「貨物自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針」(平成13年8月20日に国土交通省告示第1366号)なのですが、適正化事業実施機関の巡回指導に立ち会ったことがある人は何度も耳にしている指針ですよね。

この指導監督指針の第一章は、簡単に言えば、緑ナンバーの営業トラックに乗務する運転者に対して、かならず1年間に実施すべき教育内容と記録保存方法が書かれています。

ちなみに、当時、教育しなければいけない項目は、全部で11種類ありました。

ところが、平成29年3月12日から免許制度改正(準中型免許創設)に伴い、新たに12番目として「安全性を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法」が加わりました。教育内容は、↓のとおりになります。

(1)事業用自動車を運転する場合の心構え
(2)事業用自動車の運行の安全を確保するために遵守すべき基本的事項
(3)事業用自動車の構造上の特性
(4)貨物の正しい積載方法
(5)過積載の危険性
(6)危険物を運搬する場合に留意すべき事項
(7)適切な運行の経路及び当該経路における道路及び交通の状況
(8)危険の予測及び回避並びに緊急時における対応方法
(9)運転者の運転適性に応じた安全運転
(10)交通事故に関わる運転者の生理的及び心理的要因並びにこれらへの対処方法
(11)健康管理の重要性
(12)安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法

12項目あるとかなりの量に感じますね。

2.12項目の内容とは?

指導監督指針の12項目(1)~(12)を見ると、堅苦しい表現もあって、どのような教育をすればいいのかわかりにくいですよね。

国土交通省のHPに「運転者に対する指導監督の概要」が公開されていますので、↓の転記しておきますね。

(1) 事業用自動車を運転する場合の心構え
貨物自動車運送事業は公共的な輸送事業であり、貨物を安全、確実に輸送することが社会的使命であることを認識させるとともに、事業用自動車による交通事故の統計を説明すること等により、事業用自動車による交通事故が社会に与える影響の大きさ及び事業用自動車の運転者の運転が他の運転者の運転に与える影響の大きさ等を理解させ、事業用自動車の運行の安全を確保するとともに他の運転者の模範となることが事業用自動車の運転者の使命であることを理解させる。
(2) 事業用自動車の運行の安全を確保するために遵守すべき基本的事項
貨物自動車運送事業法、道路交通法(昭和35年法律第105号)及び道路運送車両法(昭和26年法律第185号)に基づき運転者が遵守すべき事項を理解させる。 また、当該事項から逸脱した方法や姿勢による運転をしたこと及び日常点検を怠ったことに起因する交通事故の事例、当該交通事故を引き起こした貨物自動車運送事業者及び運転者に対する処分並びに当該交通事故が加害者、被害者その他の関係者に与える心理的影響を説明すること等により 当該事項を遵守することの重要性を理解させる。
(3) 事業用自動車の構造上の特性
自らの運転する事業用自動車の車高、視野、死角、内輪差(右左折する場合又はカーブを通行する場合に後輪が前輪より内側を通ることをいう。以下同じ。)、制動距離等を確認させるとともに、これらが車両により異なること及び運搬中の貨物が事業用自動車の運転に与える影響を理解させる。この場合において、牽引自動車及び被牽引自動車を運行する場合においては、当該牽引自動車を運転するに当たって留意すべき事項を、当該被牽引自動車によりコンテナを運搬する場合においては、当該コンテナを下部隅金具等により確実に緊締しなければならないことを併せて理解させる。また、これらを把握していなかったことに起因する交通事故の事例を説明すること等により、事業用自動車の構造上の特性を把握することの必要性を理解させる。
(4) 貨物の正しい積載方法
道路法(昭和27年法律第180号)その他の軸重の規制に関する法令に基づき運転者が遵守すべき事項を理解させるとともに、偏荷重が生じないような貨物の積載方法及び運搬中に荷崩れが生じないような貨物の固縛方法を指導する。また、偏荷重が生じている場合、制動装置を操作したときに安定した姿勢で停止できないおそれがあること及びカーブを通行したときに遠心力により事業用自動車の傾きが大きくなるおそれがあることを交通事故の事例を挙げるなどして理解、習得させる。
(5) 過積載の危険性
過積載に起因する交通事故の事例を説明すること等により、過積載が事業用自動車の制動距離、安定性等に与える影響を理解させるとともに、過積載による運行を行った場合における貨物自動車運送事業者、事業用自動車の運転者及び荷主に対する処分について理解させる。
(6) 危険物を運搬する場合に留意すべき事項
危険物(自動車事故報告規則(昭和26年運輸省令第104号)第2条第5号に規定するものをいう。 以下同じ。)を運搬する場合においては、危険物に該当する貨物の種類及び運搬する危険物の性状を理解させるとともに、危険物を運搬する前に確認すべき事項並びに危険物の取扱い方法積載方法及び運搬方法について留意すべき事項を理解させる。また、運搬中に危険物が飛散又は漏えいした場合に安全を確保するためにとるべき方法を指導し、習得させる。この場合において、タンクローリにより危険物を運搬する場合にあっては、これを安全に運搬するために留意すべき事項を理解させる。
(7) 適切な運行の経路及び当該経路における道路及び交通の状況
① 当該貨物自動車運送事業に係る主な道路及び交通の状況をあらかじめ把握させるよう指導するとともに、これらの状況を踏まえ、事業用自動車を安全に運転するために留意すべき事項を指導する。この場合、交通事故の事例又は自社の事業用自動車の運転者が運転中に他の自動車又は歩行者等と衝突又は接触するおそれがあったと認識した事例 (いわゆる 「ヒヤリ ・ハット体験」)を説明すること等により運転者に理解させる。
② 道路運送車両の保安基準(昭和26年運輸省令第67号)第2条、第4条又は第4条の2について同令第55条の認定を受けた事業用自動車を運転させる場合及び道路法第47条の2第1項に規定する許可又は道路交通法第 57 条第3項に規定する許可を受けて事業用自動車を運転させる場合は、安全に通行できる経路としてあらかじめ設定した経路を通行するよう指導するとともに、当該経路における道路及び交通の状況を踏まえ、当該事業用自動車を安全に運転するために留意すべき事項を指導し、理解させる。
(8) 危険の予測及び回避並びに緊急時における対応方法
強風、豪雪等の悪天候が運転に与える影響、右左折時における内輪差、直前、後方及び左側方の視界の制約並びにジャックナイフ現象(制動装置を操作したときに牽引自動車と被牽引自動車が連結部分で折れ曲がり、安定性を失う現象をいう。)等の事業用自動車の運転に関して生ずる様々な危険について、危険予知訓練の手法等を用いて理解させるとともに、危険を予測し、回避するための自らへの注意喚起の手法として、指差呼称及び安全呼称を行う習慣を体得させる。また、事故発生時、災害発生時その他の緊急時における対応方法について事例を説明すること等により理解させる。
(9) 運転者の運転適性に応じた安全運転
適性診断その他の方法により運転者の運転適性を把握し、個々の運転者に自らの運転行動の特性を自覚させる。また、運転者のストレス等の心身の状態に配慮した適切な指導を行う。
(10) 交通事故に関わる運転者の生理的及び心理的要因並びにこれらへの対処方法
長時間連続運転等による過労、睡眠不足、医薬品等の服用に伴い誘発される眠気飲酒が身体に与える影響等の生理的要因及び慣れ、自らの運転技能への過信による集中力の欠如等の心理的要因が交通事故を引き起こすおそれがあることを事例を説明することにより理解させるとともに、貨物自動車運送事業輸送安全規則第三条第四項の規定に基づき事業用自動車の運転者の勤務時間及び乗務時間に係る基準を定める告示(平成13年国土交通省告示第1365号)に基づく事業用自動車の運転者の勤務時間及び乗務時間を理解させる。 また、運転中に疲労や眠気を感じたときは運転を中止し、休憩するか、又は睡眠をとるよう指導するとともに、飲酒運転、酒気帯び運転及び覚せい剤等の使用の禁止を徹底する。
(11) 健康管理の重要性
疾病が交通事故の要因となるおそれがあることを事例を説明すること等により理解させるとともに、定期的な健康診断の結果、心理的な負担の程度を把握するための検査の結果等に基づいて生活習慣の改善を図るなど適切な心身の健康管理を行うことの重要性を理解させる。
(12) 安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法
安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車を運行する場合においては、 当該装置の機能への過信及び誤った使用方法が交通事故の要因となるおそれがあることについて説明すること等により、当該事業用自動車の適切な運転方法を理解させる。

※個人的に特に重要だと感じたところは、で表示させています。

該当していなければ、除外してもOKな項目

なお、事業内容によっては、除外してもOkな項目があります。

その項目とは「(6)危険物を運搬する場合に留意すべき事項」「(12)安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法」になります。

「(6)危険物を運搬する場合に留意すべき事項」危険物を運搬していない運送会社は関係ない話ですし、「(12)安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法」は、安全性の向上を図るための装置(被害軽減ブレーキやクルーズコントロール等)が車両についてなければ、乗務員に指導しても意味がないからです。

3.議事録の作成法

乗務員全員に対して安全教育をしたときは、その詳細を「議事録」として記録保存しなければいけないことになっています。

●貨物自動車運送事業輸送安全規則第10条第1項
貨物自動車運送事業者は、国土交通大臣が告示で定めるところにより、当該貨物自動車運送事業に係る主な道路の状況その他の事業用自動車の運行に関する状況、その状況の下において事業用自動車の運行の安全を確保するために必要な運転の技術及び法令に基づき自動車の運転に関して遵守すべき事項について、運転者に対する適切な指導及び監督をしなければならない。この場合においては、その日時、場所及び内容並びに指導及び監督を行った者及び受けた者を記録し、かつ、その記録を営業所において三年間保存しなければならない。

かんたんにまとめると、指導監督指針12項目を1年間ですべて行い、議事録などで、開催日時・場所・内容・監督した人の名前・受講した者の名前を記載したうえで、3年間保存しておくこと…という内容になっています。

では、議事録はどのようにまとめるといいのでしょうか?

議事録の記載例(参考:徳島県トラック協会)

安全会議の議事録については、所属しているトラック協会のHPからダウンロードするのがベストですが、今回は、記載例を公開していた徳島県トラック協会の帳票類を参考に紹介していきたいと思います。(>徳島県トラック協会HP

議事録で必要なのは「いつ・どこで・だれが・だれに・どのような内容」を行ったのか、必ず記載しなければいけません。また、参加者には、直筆のサインもしくは押印をしてもらう必要があります。

  • いつ…日時
  • どこで…会議を開催した場所(例:●●運送(株)□▲営業所 会議室)
  • 誰が…教育実施者(例:運行管理者 山田、●×保険 田中)
  • どのような内容…会議の内容(指導監督指針12項目)

なお、運送会社では、全乗務員が同じ日に集まることは難しいですよね。

でも大丈夫。乗務員全員に対して安全研修を実施する必要はありますが、この記載例を見てもわかるとおり、日にちを分けて実施しても問題ありません。

そのかわり、欠席者などについては、いつフォローしたのか…について、かならず記載しなければいけないことになっています。そのフォローした人も加えて、全員が安全教育に参加していれば”問題なし”と判断されるというわけです。

4.教育に使える資料とは?

(出典:全ト協「指導・監督指針~改正のポイント~」)

①国交省マニュアル

指導監督指針を行ううえで、運送会社がよく利用しているのは、国土交通省が発行している「自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う一般的な指導及び監督の実施マニュアル」(概要編・本編)ですね。(>ダウンロード先

②全ト協マニュアル

続いて、全ト協が企画・制作した「事業用トラックドライバー研修テキスト」は、トラック協会の会員であった場合、全ト協のホームページでダウンロードすることができます。この研修テキストのほうがイラストが多いので、乗務員にもうけいれられやすいメリットがあります。

③その他

また、毎年、同じ教育資料を使用することで、マンネリ化を危惧している運送会社のなかには、トラック協会がレンタルしているDVDの活用(※所属しているトラック協会によって異なる。要確認)や全ト協のHPで配布している刊行物を利用しているケースもあります。(>全ト協の刊行物のHP

5.行政監査ではどのように見られる?

それでは、仮に行政監査が行われたとき、この指導監督指針の第1章にある乗務員全員に対する安全教育はどのように見られるのでしょうか?

これは、全ト協が発行している「指導・監督指針~改正のポイント~」に詳しく記載されています。

この行政処分の内容を見ると、全く行っていない場合、初違反で10日車の処分が下されることになっています。

この項目で違反と認定されると総合日車数でかなりの量になってしまいますので、自社努力で改善できるところは改善しておきたいところです。

6.Q&A

この指導監督指針による乗務員の安全教育でよくある質問についてまとめてみました。今後も意見があれば追加していきたいと思います。

Q1.派遣社員にも安全教育する必要はあるの?

A1.派遣社員にも教育を行う必要があります。

Q2.指導監督指針では全部で12項目あるけれど、安全教育を毎月、実施しなければいけないということなの?

A2.毎月、実施する必要はありません。1度の安全教育で複数の項目を実施しても問題ありません。

Q3.安全教育で使用した資料は記録保存する必要はあるの?

A3.安全研修の議事録だけでなく、資料も保存しておいたほうがいいです。

「貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について」
3.第1項に基づく指導及び監督の内容の記録は、具体的に記録するとともに、指導及び監督に使用した資料の写し等を添付するよう指導すること。

まとめ!

「年間12項目も教育を受けていない。」
「数項目実施されていない。」
「巡回指導で12項目すべて実施していなくても指摘を受けなかった」

という問い合わせを受けたことがあります。

知恵袋等にも運転者が同様の質問をしていたのを見かけたことがありますが、それは、記事でも書いたとおり、「(6)危険物を運搬する場合に留意すべき事項」「(12)安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法」は該当しなければ、実施しなくても問題ない項目になります。

そのため、多くの会社では、年間10~11項目を実施していることが多いです。

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