いままでの改善基準告示は、代表取締役などの役員については”対象外”として扱われていました。
以前、全日本トラック協会が発行していた【これでわかる「改善基準」Q&A】でも「役員がトラックに乗務した場合、改善基準告示に該当しない」と記載されています。
しかし、いまでは、法律は変わってしまい、たとえ、役員でもトラックに乗務している場合、改善基準告示に該当するようになったのです。
1.役員も運転するのであれば「改善基準告示」の対象になる
規模の小さい運送会社のなかには、役員が改善基準告示に該当しないことを理由に、代表取締役が長時間、トラックに乗務していたケースがありました。また、この法律を逆手にとって、役員に選任されていた乗務員もいたようです。
改善基準告示は、過労防止だけでなく、交通事故を減らすことを目的に制定されたので、国は、この抜け道を好ましく思っていなかったようです。
平成30年30日に改正された「貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について」では、たとえ役員でも「運転者」として乗務している場合、いままで対象外であった「改善基準告示」が該当することになったのです。
さらに代表取締役でも「健康診断」が対象になりました。
では、どのように変わったのか、詳細を書いていきたいと思います。
2.役員も運転するのであれば「改善基準告示」の対象になる
過去の【これでわかる「改善基準」Q&A】を見てみましょう。
平成13年3月に発行された冊子ですが、その当時の記載では、改善基準告示に該当するのは「給料をもらっている人=労働者」であり「社長は該当しない」と書かれています。
つまり、社長は労働者とは異なり、改善基準告示に該当しない。つまり、当時の法律では「役員はいくら運転してもOK」という解釈であったわけです。ところが、今回の法改正に伴い、次のように変わりました。
第3条 過労運転の防止 1.~2.(略)
3. 第4項関係 (1) 事業者が運転者(個人事業主、同居の親族及び法人の業務を執行する役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。以下「事業主等」という。)が運転する場合には、当該者も含む。)の勤務時間及び乗務時間を定める時の具体的基準は、「貨物自動車運送事業の事業用自動車の運転者の勤務時間及び乗務時間に係る基準」(平成13年国土交通省告示第1365号。以下「勤務時間等基準告示」という。)のほか、「一般乗用旅客自動車運送事業以外の事業に従事する自動車運転者の特例について」 (平成元年3月1日付け基発第92号。以下「特例通達」という。)及び「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準について」(平成元年3月1日付け基発第93号)とする。なお、事業主等が運転者として選任される場合の拘束時間は、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号。以下「改善基準告示」という。)で定める労使協定の締結を行っている場合にあっては、当該労使協定により延長することができる範囲を超えないものとすることとする。
この改正に記載してあるように、たとえ個人事業主、同居の親族、法人の業務を執行する役員であったとしても、運転者として選任される場合の拘束時間は「改善基準告示」に該当するということになりました。
つまり、巡回指導や行政監査が行われたとき、改善基準告示違反の数が重要になってきますが、社長もとうぜん違反カウントの対象になるというわけなんですね。
[quads id=2]2.事業主であっても乗務するなら「健康診断」の対象に!
さらに健康診断も事業主等がトラックに乗務する場合、「健康診断」の対象になると書かれています。
第3条 過労運転の防止
5.第6項関係 (1) 「健康状態の把握」とは、乗務員(事業主等が乗務する場合には、当該者を含む。)が受診する労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第66条第1項に定める健康診断及び同条第4項の指示を受けて行うべき健康診断を行うこと並びに同条第5項ただし書きの場合において乗務員が受診する健康診断の受診結果を提出させることをいう。
健康起因事故が増えている中、過労気味に運転する事業主であろうとも乗務員である限り、健康管理はしっかりしてもらわなければいけないというわけなんですね。
まとめ!
運送会社の人員不足は深刻で、代表取締役であったとしても運転している人は多いです。だからこそ、今回の改正は中小零細の運送会社にとって影響がある内容だったと思います。
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