運送会社によっては、たとえ運行管理者に選任されていたとしても、他の選任ドライバーと同じように営業ナンバーの車両を運転して現場に行き、仕事が終わったら帰ってくるというケースがあります。(参照⇒運行管理者と運転手の兼任について)
このように運行管理者が外出していたりすると、乗務員Aさんが乗務を終了した後、営業所に戻ったとしても運行管理者が誰もいない…ということもあるでしょう。
「運行管理者がいない=すぐに点呼をすることができない」になりますよね。だから、運行管理者が帰ってきてから点呼が執行するということもあるかもしれません。それ自体に問題はないけれど、点呼記録簿のうえでは、運行管理者とAさんの乗務後点呼の執行した時間が同じということに違和感を感じる人もいるかもしれませんね。
そこで、今回は運行管理者がドライバーを兼務している場合の点呼の問題点について紹介していきます。
点呼執行のタイミングは?
運行管理者が外部に出てすぐに点呼を取れないケースのひとつを紹介していきます。
まず、点呼記録簿では、
AM7:00 乗務前点呼(対面) - PM17:00 乗務後点呼(対面)
となっていたとします。
でも、じっさいはPM17:20に営業所に戻ってきていた場合、時間の間隔がかなり空いてしまうことになります。この場合でも点呼執行として問題がないのかといえば望ましくない。これが答えになります。
望ましくないーなぜこのような曖昧な回答になっているかというと…
貨物自動車運送事業輸送安全規則 第7条
1 貨物自動車運送事業者は、事業用自動車の乗務を開始しようとする運転者に対し、対面により点呼を行い…
このように、
乗務前点呼 ⇒ 休息期間後の乗務開始時に実施
乗務後点呼 ⇒ 休息期間前の乗務終了時に実施
に実施するように書かれていますが「乗務開始前○分までに点呼を取らなければいけない。」と記載されていません。ただ「乗務を開始しようとする運転者に対し~」と書かれているので時間が空きすぎるのもまた変ですよね。
なお、適性化指導員にこの件について話を聞いたところ、運行管理規程には「出発の10分前に行うこと」と記載していることから、点呼執行してから10分以内に乗務開始。乗務終了から10分以内に点呼執行が望ましいというアドバイスを受けました。
だから、乗務が終わって運行管理者が戻ってくるまで40分待つのは、点呼を執行するうえで望ましくないけれど、運行管理者(兼ドライバー)と同時刻で点呼執行することは問題ないというわけなんですね。
ちなみに行政監査では、なぜ乗務開始(終了)後、点呼執行に遅れが生じているのかヒアリングした後、適切なタイミングで点呼をしているか総合的に判断しているそうです。なのでケースバイケース。会社に戻ってきたときに運行管理者がたまたまいなかったからといってイコール即違反とはならないようです。
注意点① セルフ点呼になりやすい
運行管理者が乗務して営業所におらず戻ってきてから点呼執行される場合、懸念されることがあります。
それは運行管理者がすでに戻ったドライバーに点呼を執行することはできても、自分で自分を点呼(セルフ点呼)することができないので、運行管理者が戻ったとき、誰が運行管理者の点呼をするのかーということが問題になります。
そのことを考えるとやはり補助者を営業所に配属しておかなければ運営は厳しいといえるでしょう。
注意点② 点呼に矛盾が生じやすい
運行管理者が戻ってから点呼執行することを決めていても、誰しも早く帰りたいので点呼執行せずにドライバーに対して帰社することをOKしてしまうことがありがちです。
そして、点呼記録簿の記録では、点呼は執行されているかのように捏造する。
コレかなりやばいです。
まず点呼記録簿の捏造・改ざんは「初違反で30日車。再違反で60日車」とかなり厳しいからです。しかも行政は見破るのが本当にうまい。点呼記録簿と運転日報、その他書類と照らし合わせながら、時間などに矛盾点がないかチェックされるのです。
たとえば、点呼執行を記録上ではしていたとしても「運行管理者はチャート紙を見るとAM11:00に出発していますよね?AM11:20に対面点呼をするのは無理だと思うのですが…。」と矛盾点を突かれてしまうのです。下手な小細工はかえって処分される日車数を引き上げてしまうんですね。