トラックの杜│一般貨物運送事業に役立つ情報をブログでお届け!

前職が旅客(タクシー・バス)の運転手の教育はどうしたらいい?

コロナ禍の影響で、観光客が激減。
旅客の運転手がトラック運送会社に転職した話を耳にします。

では、元旅客の運転手が入社してきたとき、どのような教育をすればいいのでしょうか?

今回は、旅客運転手がトラック運送会社に入社してきた場合の教育対応について紹介していきたいと思います。

1.適性診断の対応

通常、転職して新たに雇い入れられた場合、65歳以上であれば適齢診断。65歳未満であれば初任診断を受診しなければいけないですよね?

※例外として、前職で過去3年間に”初任診断”を受診していれば、その受診結果票の写しを転職先の運送会社に渡せば、改めて初任診断を受診しなくても問題なし(適齢診断は対象外)

適性診断を受診すると、トラック・タクシー・バスに就職した運転手が同じ機器を用いて診断しています。

今回のようなケースでは、例外が適用されるのでしょうか?

「運送会社に運転手として入社した場合は、まず初任診断を受診しなければいけないと聞いたが、新卒などの未経験者と経験者は同じ扱いでいいのだろうか?」運...
初任診断を受診して退職!再就職したら、また初任診断を受けろと言われた! - トラックの杜│一般貨物運送事業に役立つ情報をブログでお届け!

旅客の運転手が転職してきた場合

旅客で運転手として勤めていた者が過去3年間に初任診断を受診していた場合、転職先のトラック運送会社で通用するのか。

運輸支局に問い合わせてみました。

答えは…

「受診することが望ましい。」

になります。

初任診断を受診するとき、氏名・生年月日・適性診断の種類や免許の内容を打ち込むメニューがあるのですが、そこで「タクシー・バス・トラック」など選択したうえで診断を行います。

「貨物と旅客で適性診断の中身が異なるのか…?」と思うかもしれませんが、内容は、ほとんど変わりません。

”安全規則第10条”では次のように書かれています。

安全規則第10条

2 一般貨物自動車運送事業者等は、国土交通大臣が告示で定めるところにより、次に掲げる運転者に対して、事業用自動車の運行の安全を確保するために遵守すべき事項について特別な指導を行い、かつ、国土交通大臣が告示で定める適性診断であって第十二条の二及び第十二条の三の規定により国土交通大臣の認定を受けたものを受けさせなければならない。

一 死者又は負傷者(自動車損害賠償保障法施行令(昭和三十年政令第二百八十六号)第五条第二号、第三号又は第四号に掲げる傷害を受けた者をいう。)が生じた事故を引き起こした者

二 運転者として新たに雇い入れた者

三 高齢者(六十五才以上の者をいう。)

【国土交通大臣が告示で定める適性診断】と表記されている程度で、旅客・貨物の区別はありません。そのため、行政監査では、質問の件で処分することは難しいと考えられます。

 しかし、適性診断は、トラック・バス等を選択したうえで診断が行われ、それぞれ車両の特性が異なるので、行政としては、旅客からトラック運送会社に転職したのであれば、3年以内に初任診断を受診していたとしても、改めて受診した方が望ましいと考えているようです。

2.特別指導について

では、特別指導についてはどうでしょうか?

本来、運送会社に入社してきた運転手については、「未経験者・3年以上ブランクのある人」は、①安全運転の実技(20時間以上)、②特別な指導(座学及び実車、計15時間以上)の教育が必要になります。

では、最近まで旅客(バス・タクシー)に乗務していたものは、

a.初任運転者(未経験者・3年以上ブランクがあるもの)
b.その他雇い入れた運転者(3年以内の経験者)

どちらに該当するのでしょうか?

答えは、

「a.初任運転者 (未経験者・3年以上ブランクがあるもの) 」

に該当します。

その根拠は、指導監督指針に書かれています。

貨物自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針

⑵ 安全規則第3条第1項に基づき運転者として常時選任するために新たに雇い入れた者(当該貨物自動車運送事業者において初めて事業用自動車に乗務する前3年間に他の一般貨物自動車運送事業者等によって運転者として常時選任されたことがある者を除く。以下「初任運転者」という。)

このように、例外は、【他の一般貨物自動車運送事業者等によって運転者として…】と書かれているため、旅客(タクシー・バス)で働いていた運転手がトラック運送会社に転職したら、”特別指導を受けなければいけない”ということになります。

3.事故歴の把握について

5 新たに雇い入れた者の事故歴の把握
⑴ 一般貨物自動車運送事業者等は、安全規則第3条第1項に基づき運転者を常時選任するために新たに雇い入れた場合には、当該運転者について、自動車安全運転センター法(昭和50年法律第57号)に規定する自動車安全運転センターが交付する無事故・無違反証明書又は運転記録証明書等により、雇い入れる前の事故歴を把握し、事故惹起運転者に該当するか否かを確認すること。

”事故歴の把握”については、例外は設けられていません。

トラック運送会社からの転職でも、バス・タクシー会社からの転職でも…

「自動車安全運転センターが交付する無事故・無違反証明書又は運転記録証明書等により、 雇い入れる前の事故歴を把握する必要があります。」

運送会社は、新たに雇い入れた運転者がトラック運転手として選任される前に、過去の”事故・違反歴”を把握しておく必要があります。「運転者の事故・違反歴は...
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まとめ

今回は、旅客から貨物の会社に転職してきた場合の教育についてまとめてみました。

旅客から貨物に転職してきた運転手がいた場合、

①初任診断

旅客・貨物の区別なく過去3年間に受診しており、かつ、受診結果の写しを運送会社に提出した場合、改めて受診させる根拠はない。

しかし、輸送の安全を考えると”受診させていた方が望ましい”と言える

②特別指導

a.社内教育

直近まで、旅客の運転手の経験があっても、未経験・3年以上のブランクがある運転手と同様に教育を実施する。

b.事故歴の把握

経験の有無、関係なく、新たに雇い入れたら、すべて運転記録証明書を取得する。

このようになります。

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