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知っておきたい!一般貨物運送事業の運転者台帳の書き方!

一般貨物自動車運送事業を取得している運送会社は、運転者を雇い入れたら”運転者台帳”を作成する必要があります。

ですが、いざ作成しようとすると…

・インターネットで様式が公開されているが、どれを使っても大丈夫?
・市販の運転者台帳を購入しなければいけないの?
・Excelなどで自作しても大丈夫?

次から次へと疑問が湧いて不安になるのではないでしょうか?

そこで、今回は「一般貨物運送事業の運転者台帳の書き方」について紹介していきます。

1.運転者台帳は行政監査や巡回指導で指摘されやすい

以前、私が運行管理者の一般講習を受講したときのことです。

そのときの講師(運輸支局監査部門の専門官)は「もし行政監査が行われたとき、事業所が指摘されやすい項目のひとつが 【運転者台帳の記載不備】 だ」と説明していました。

以前と違い、”運転者台帳をまったく作成していなかった”という運送会社はほとんどありません。
ですが、些細なことで指導されてしまうのです。

たとえば、

【一部未作成】
運転者を新たに雇い入れたにもかかわらず、運転者台帳を作成していなかった

【記入漏れや記入ミス】
運転者の名前など記載したが、適性診断や健康診断など記載すべき内容を記入するのを忘れてしまっていた。

…といった理由が多いですね。

2.営業所毎に記録保存する必要あり

運転者台帳は、一般的な企業が作成している労働者名簿とは違います。

トラック運送会社は、法律(貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条の4)に記載してある項目を満たした「運転者台帳」を労働者名簿とは別に作成する必要があります。

そして、運転者全員分の運転者台帳を完成させたら、営業所ごとに保管しておかなければいけません。

なお、この運転者台帳は、運転者が在籍しているときだけ記録保存しておけばいいわけではありません。運転者が退職した後も3年間、事務所に保存する必要があります。

2. 運転者台帳に必要な項目は?

それでは、トラック協会で公開している運転者台帳を例に見ていきましょう。

(参照:福岡県トラック協会HPより)

A4用紙1枚にまとめられていますが、運転者台帳に必要な項目の9つ(↓参照)がすべて満たされています。

(貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条の4 運転者台帳)

① 作成番号及び作成年月日
② 事業者の氏名又は名称
③ 運転者の氏名、生年月日及び住所
④ 雇入れの年月日及び運転者に選任された年月日
⑤ 運転免許に関する次の事項
Ⅰ.運転免許証の番号及び有効期限
Ⅱ.運転免許の年月日及び種類
Ⅲ.条件が付されている場合は、その条件
⑥ 事故を引き起こした場合又は道路交通法108条の34(使用者に対する通知)の規定による通知を受けた場合はその概要

⑦ 運転者の健康状態
⑧ 輸送安全規則第10条第2項(従業員に対する指導及び監督)の規定に基づく指導の実施及び適性診断の受診状況
⑨ 運転者台帳の作成前6月以内に撮影した単独、上3分身、無帽、正面、無背景の写真

①~⑨すべての項目を満たす運転者台帳であれば、トラック協会の様式を使用していなくても、自社オリジナルの様式(自社PCでEXCELやwordで1から作成したもの)を運転者台帳として使用してもOKです。

トラック協会からダウンロードしている事業所が多い

自社でオリジナルの「運転者台帳」をわざわざ作成するのは面倒ですし、法律が求めている項目が不足してしまう可能性が高いことを考えると、1から作成するメリットはほとんどありません。

そのため、多くの運送会社はトラック協会が公開している運転者台帳を使用しています。

※私が愛用しているのは、福岡県トラック協会の運転者台帳(EXCEL・ダウンロード版)になります。

様式がExcelなどの様式を公開しているため、独自の項目を追加して使用したい場合でも、トラック協会でダウンロードした様式を加工している場合が多いです。

労働者台帳を兼ねた運転者台帳がお得!

トラック運送会社は、労働者名簿のほかに運転者台帳を作成しなければいけません。

ですが、労働者名簿と運転者台帳には共通点が多くあります。

そのため、トラック協会の中には、労働者台帳も兼ねた「運転者台帳兼労働者台帳」の様式も公開されています。

たった1つの様式で運転者台帳と労働者台帳を機能を備えているので、トラック運送会社としては管理がしやすく、とても便利な様式と言えるでしょう。

3. 運転者台帳の項目解説

それでは、運転者台帳に必要な項目と書き方について解説していきます。

① 作成番号及び作成年月日

作成番号は「社員番号」又は「通し番号(1・2・3…)」でもOKです。

通常の運送会社は、入社してきた順に、作成番号を1から割り振っていることが多いです。

ただし、Noの重複を避けるため、退職したトラック運転手のNoを新たに雇い入れた運転手に使用しないほうが無難でしょう。

作成年月日は、台帳を作成した日付を記載するので、たいていは、入社してきたときの日付になることが多いのですが、免許書や健康診断の記入欄がなくなったとき、運転者台帳を差し替えることもあるかと思います。

その場合は、作り直したときの「作成年月日」を記載するといいです。

② 事業者の氏名又は名称

トラック運転手は、法人ごとではなく、営業所ごとに配属しなければいけません。

運行管理者と整備管理者と同じですね。

そのため、運転者台帳には、運転者が所属している”事業者名””営業所名”を記入する必要があります。

多くの運送会社は本社営業所しかないと思いますが、それでも営業所名の記載は必要です。

③ 運転者の氏名、生年月日及び住所

運転者の氏名や生年月日、住所の記載をしましょう。

④ 雇入れの年月日及び運転者に選任された年月日

当ブログで質問が多かったのが、「雇用年月日」と「事業用自動車の運転者に選任された年月日」の違いについてでした。

「同じ年月日でも問題ないのでは?」

と疑問を持たれている人も多いと思います。

ですが、次の例を見ると理解いただけるのではないでしょうか?

【例①】
倉庫作業員も軽自動車運転手からトラック運転手に配置転換になった。
※宅配業で多い

【例②】
雇い入れた後、すぐに運転させるのではなく、荷主のルールや仕事のやり方を覚えてもらうために横乗りをしたり、添乗教育、初任教育を行った後、正式に運転者に選任する。

例②のように、運送会社は、雇い入れた後、すぐに運転させるわけではありませんよね。荷主のルールや仕事のやり方を覚えてもらうために横乗りをしたり、添乗教育、初任教育を行った後、正式に運転者に選任するはずです。

教育期間は、運転者に選任されていないので、雇い入れ年月日と運転者に選任された年月日に違いが生じるのです。

もし、すでに入社している運転手がいて「運転者に選任された年月日」の記入を忘れていた場合、いまから運転者に選任された年月日を思い出そうとしても、思い出せないことでしょう。

そのような場合、入社日に教育期間を加えた日付を記入するといいですよ。

【例】
雇い入れた年月日(入社日)が「2000年11月6日」の運転手がいたとします。

通常、運転者が入社してきた際、1週間で教育を終えている場合は、「事業用自動車の運転者に選任された年月日」は、「雇用年月日」の1週間後である「2000年11月13日」と記入すれば問題ないでしょう。

⑤ 運転免許に関する事項

Ⅰ.運転免許証の番号及び有効期限
Ⅱ.運転免許の年月日及び種類
Ⅲ.条件が付されている場合は、その条件

以上3点について記載する必要があります。

ちなみに免許証の内容を記載しなくても、免許証コピーを運転者台帳に貼るだけでも問題ありません。

ただし、運転免許証には有効期間がありますので免許を更新したら、貼りかえるか、直ちに新しい情報を記載する必要があります。

⑥ 事故を引き起こした場合又は道路交通法108条の34(使用者に対する通知)の規定による通知を受けた場合はその概要

(事故歴)
事故は、第一当事者である場合のみ記載が必要になります。

運転者台帳には、事故の発生日時、発生場所、事故の概要(損害の程度を含む)を記載する欄があるので書いておきましょう。

ちなみに、⑥の事故は 「道路交通法第67条第2項に規定する交通事故」 と 「自動車事故報告規則第2条に規定する事故」 の2種類があります。

まず1つ目の「道路交通法第67条第2項に規定する交通事故」ですが、これは車両等の交通による人の死傷または物の損壊(以下「交通事故」)があったときが該当します。

続いて2つ目の「自動車事故報告規則第2条に規定する事故」は国に届出しなければいけないような重大事故を起こしたときに作成するものです。

この2点のいずれかの事故が起きてしまった場合は、運転者台帳にも合わせて記載しておきましょう。

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(違反歴)
違反については、通知がなくても、事業用自動車の運行中に道路交通法違反があった場合、違反の種別、違反を起こした年月日及び場所を記載する必要があります。

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⑦ 運転者の健康状態

健康診断個人票または第51条4に基づく健康診断結果の写しを添付することでOK。
※受診日を記載して「健康診断結果は別紙参照」と記載すれば、別に保存可。

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⑧ 輸送安全規則第10条第2項(従業員に対する指導及び監督)の規定に基づく指導の実施及び適性診断の受診状況

適性診断は義務診断である特定診断、適齢診断、初認診断を受診したときには、診断を受診した年月日所見を書く必要があります。

また、特別指導(個別の社内教育)については、初任運転者、適齢運転者、事故惹起者に対して義務になっていますので、実施した場合は、実施した年月日と内容を記載する必要があります。

 

⑨ 運転者台帳の作成前6月以内に撮影した単独、上3分身、無帽、正面、無背景の写真

運転免許証のコピーを運転者台帳で張り付けたものであれば、写真貼付とみなされます。

(ただし、最新の運転免許証のみ有効)光沢がなくてもいいので、スマホか何かで写真を撮り、運転者台帳(Excel)に貼り付けるといいですよ。

3.運転者台帳の対象は?

運転者台帳を書かなければいけない対象は、乗務員(正社員)だけではありません。

正社員以外…つまり、

① 短時間の運転者(パート・アルバイト)
② 出向運転者
③ 派遣運転者
④ 季節的に使用される運転者(季節等、一定期間雇用される運転者)

すべて該当してきます。

「短い期間だから、運転者台帳を作成しなくてもいいよね。」と油断していると、他の帳票類(賃金台帳や点呼記録簿、運転日報、運行記録計等)から簡単に足がついてしまいます。

いまは、行政監査が厳しくなっているので、運転者台帳のような簡易な帳票類で、処分を受けるのは勿体ないです。

4.運転者台帳の保存方法?

運転者台帳は、トラック協会の様式を用いてファイルに綴じて保存するのが一般的です。

10名の乗務員がいたら「運転者台帳」のファイルを作って10名分すべてそのファイルに綴じるパターンがほとんど。なかには、1名1名のファイルをつくり、運転者台帳・運転記録証明書・適性診断等の書類をまとめている会社もありましたが、明らかに前者のほうが多いです。

けれど、いまはペーパレスの時代。
電子データとしてPCで管理していてもOKです。
書き換えもしやすいのでオススメですよ。

なお、退職等で当該事業所の運転者でなくなった場合には、3年間保存が必要になるので、その点も気を付けてくださいね。

5.営業所を移動したときはどうするの?

複数の営業所がある場合、運転者台帳の記録保存について気になる方もいると思いますが、全日本トラック協会のHPで公開している「運行管理業務と安全」マニュアルのP90に「運転者台帳」のことが記載されています。

そのイラストにも書かれているように、たとえ「転任」であったとしても、退職者と同じく【運転者台帳については元々いた営業所に3年間、記録保存しておかなくてはいけない】となっています。

そのため、転任して新しい営業所に配属した場合、コピーして持っていくか、改めて運転者台帳を作成することをおすすめします。

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